挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 作者:夕蜜柑
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

35/202

防御特化と偽者戦。

「【毒竜ヒドラ】!」
新月から毒竜が放たれる。
しかしそれは偽サリーを狙ったものでは無かった。
地面に向けられた剣先から飛び出した毒竜はビチャビチャと音を立てて弾け、メイプルの周りに撒き散らされる。
その内の一つでも踏めば本来のサリーなら一撃死だ。
毒の海の中心に立つメイプルに近づくためには今までよりも大きな隙を晒す必要が出てくるだろう。

毒竜を躱すために距離をとっていた偽サリーが駆けてくる。
メイプルはその姿をじっと観察した。
そして気付いたのだ。
毒を避けながら近づいてきているという事実に。

「【毒無効】は持ってないんだね」
偽サリーが【跳躍】で飛びかかってくるのに合わせて大盾を叩き込む。
それは、確かに体に当たったが、手応えは無かった。

「【蜃気楼】っ!?」

「【ディフェンスブレイク】」
偽サリーは隙だらけのメイプルの胴体をザクリと切り裂いて、メイプルの体を【跳躍】で蹴飛ばすとそのまま毒の海の範囲外に出ていってしまう。

「【ヴェノムカッター】!」
メイプルの攻撃を偽サリーは楽々回避する。しかし、その回避にメイプルは違和感を覚えた。

「そっか…流石にサリーそのままって訳にはいかないよね」
恐らく偽サリーはサリーよりも速い。
回避能力も同様に高い。
しかし、それはただ速いだけだ。
そこにサリーのような紙一重での回避からのカウンターは存在しない。
サリーならば全ての攻撃を回避しつつ接近までこなすだろう。

偽サリーは、ただ速度に頼って避けているだけで攻防一体の回避には至っていなかった。

「それでも、結局当たらないしなぁ……【瞑想】」
呟くメイプルなど関係ないと言うようにメイプルの周りの地面が隆起する。
土の柱が何本も伸びて視界が悪くなる。
そしてそれは偽サリーの貴重な足場になるのだ。

「うーん、魔法はサリーより上か」

「【ディフェンスブレイク】」
声のした方に大盾を向ける。
たとえ【蜃気楼】でも構わないのだ。
HPならまだある。
案の定それは【蜃気楼】で作られた幻だった。メイプルが背中を切り裂かれる。
振り向きざまに大盾を振るうがそれは空を切るだけだった。

「仕方ない……持久戦にしよう」
新月から魔法陣が展開される。
偽サリーがそれを見て避難する。
距離を取られてはどの攻撃も当たらないだろう。

「いいよ。根比べしよう」
メイプルが小さく呟く。

「【ヴェノムカプセル】」
直径二メートル程の紫色の球体。メイプルはその中にズブズブと沈んでいく。

「【瞑想】」
偽サリーが削っていたHPバーが回復していく。
しかし偽サリーの武器はダガーである。
あの毒々しい球体を切り裂き中のメイプルを攻撃しようとすれば毒を浴びてしまうだろう。
しかも、地面には毒の海が広がっているのだ。
メイプルの周りは最上級の危険地帯。
近づくもの全て毒に沈めていく地獄のエリア。

偽サリーには【毒耐性大】はあっても【毒無効】は無かったのだ。
【毒竜】の毒は完全には無効化出来ないのだ。

「【サイクロンカッター】」
サリーが持っているのよりもレベルの高い【風魔法】。
渦を巻く風がメイプルの周りに現れてその毒の障壁を切り崩そうとする。
しかし、【風魔法】と【毒竜】ではスキルの格が違い過ぎた。
表面がビチャビチャという音とともに多少削り落とされたが、メイプルまでは届かない。

「【ヴェノムカプセル】」
その声に応じて、メイプルを包むカプセルはその直径をさらに四メートルまで大きくする。
当然毒壁の厚さも増す。
手数が多く威力の低い偽サリーにとって、絶望的な毒の障壁。

「私は偽物さんのMPが切れてしまうまでじっくり待つよ」
偽サリーのMPが切れれば、その自慢の手数も落ちる。
それは、毒の障壁を突破することをより困難にするだろう。
【ヴェノムカプセル】の消費MPは一回あたり20だ。
【悪食】は残っているもののMPに変換出来るものがない。
そのためMPのストックは既に無い。
一日五回のMPゼロ発動も残っていない。

メイプルはMPの自動回復を静かに待つ。
偽サリーは毒の障壁に魔法を撃ち込む。
そんな光景が長く続く。

「【ヴェノムカプセル】」
メイプルの無慈悲な障壁強化。
カプセルはその直径を六メートルに変えて厚さを増す。

メイプルが狙っているのはただ一つ。



「普通に攻めて当たらないなら……この部屋全部カプセルに沈めて、倒す」
まさに持久戦。
メイプルは勝利を掴むために偽サリーを端へ端へと追い込むつもりなのだ。
逃げ場の無い場所では偽サリー自慢の速度も意味をなさない。






一方サリーも攻めあぐねていた。
何と言っても圧倒的な防御力。
それに加えて迂闊な行動が死につながる攻撃能力だ。

「唯一の救いは本物のメイプルよりも馬鹿なことか……」
偽メイプルの攻撃はまさに【毒竜】一辺倒なのである。
その上、メイプルのように弱攻撃の場合には大盾を使わないということをしないのだ。
そのため、既に偽メイプルの【悪食】はなくなっている。
問題はその【毒竜】なのだ。
偽メイプルはメイプルの持っていないスキルを持っていた。
そのスキルが発動すると【毒竜】を撃ち出した後の名残の毒が全てメイプルの元に集まっていき、即座に【毒竜】が撃ち直されるのだ。
ノータイムでの強攻撃の連続である。
サリーは偽メイプルに勝つのに必要なのは、全ての回数制限付きスキルを使い切らせることだと考えていたため、【毒竜】が使えなくならないことは予想外だったのだ。

「まあ、【パラライズシャウト】とかしてこないし良かったかな」
サリーは今も三つ首の毒竜を回避しつつ偽メイプルへの対抗策を考えているのである。

「あー……どうしよ。有効打が無い…」
サリーにとって【毒竜】の回避自体は簡単なため考えながらでも問題無かった。
サリーは【ディフェンスブレイク】で攻撃してみたものの【瞑想】と思われるスキルによって回復されていた。

「厄介なスキルが残ってるなぁ…」
そうしている内にも毒竜が襲いかかってくる。
ひょいひょいと躱してメイプルのことを考える。

「メイプルも偽者の私と戦ってるのかな?もう勝ってるかな?」
サリーはメイプルならば何とかしているだろうと思った。
今のサリー自身に偽メイプルに対する有効打がほぼ無いのだから、偽者に本物のメイプルを倒せるはずがない。
メイプルの能力には何度も助けられているサリーだからこそ、強くそう思った。

「さて…色々と試してみよう。突破方法の一つくらい見つかるかも」
サリーは覚悟を決めて自分のスキル群を思い出して戦略を立てる。

今のサリーでは勝てない。
だが、成長すればどうだろう。
新たなスキルを手に入れられたならばどうだろう。
サリーが偽メイプルのHPを削れないため偽メイプルのパターンには変化は無い。
愚直なまでに【毒竜】を連打するだけの簡単な敵だ。

変化の無い偽メイプルと。
変化の可能性を残しているサリー。

サリーはその可能性に賭けてみることにしたのである。

「偽メイプルに負けるのは、悔しいから嫌だし!まずはこのスキルからいこう」

サリーが輝くエフェクトを纏いながらメイプルに攻撃を仕掛けにいく。
こちらもまた、先の長い持久戦に突入することとなった。





+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ