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痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 作者:ユーキャン
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防御特化と渓谷探索。

「さてと、まずは卵かな?」
岩壁の裂け目の中で座りこんで卵をインベントリから出しつつサリーが言う。

「これって、しまっておかないと消えちゃったりしない?」
メイプルがサリーに聞いてみる。
装備やポーションなどのアイテムはインベントリから出して二時間放置しておくと消えてしまうのだ。

「どうだろう?…念のために、二時間経つ前に一回しまうことにしようか」
もう一度手に入れることなど出来ないだろうこの卵を失うわけにはいかないのだ。

「うん、そうしよう」

「これ、どうやって暖めるの?」

「んー…やっぱり人肌?」
メイプルが鎧と大盾を外して、深緑の卵を優しく持ち上げて抱く。

「どんな子が生まれてくるんだろうね?」
誕生の時が待ち遠しくて仕方ないという風に笑顔で卵の表面を撫でる。
サリーもメイプルと同様にして卵を暖める。

「大事なのは愛情だよ!愛情!」

「まぁ、確かに」
二人はそれぞれ卵を撫でながらこれからの探索の予定を立てる。

「まずはあの川に沿って探索しよう。それなら拠点にも戻ってこれるしね」
酷い濃霧で前もまともに見えない中で目印になるものが無ければすぐに迷ってしまうだろう。
ただでさえ奇襲の多いフィールドなのだから休息を取ることの出来る場所を失えば、いずれ集中力が切れて攻撃をまともに受けてしまうだろう。

メイプルにとってはどうということはない攻撃ではあるが、サリーにとってはそうではないのだ。
HPの少ないサリーは一撃でやられてしまうかもしれない。
回避にはかなりの集中力を使うのだ。
その疲労は計り知れない。

「おっけー!川沿いだね」
それから一時間程卵を暖めたものの、結局今回は孵化することは無かった。
二人は卵をインベントリにしまって、探索に出かけることにした。



「よーし!メダルを探しに行こう!」

「おー!」
意気揚々と探索を開始した二人は川の上流を目指して歩いていく。
サリー曰く。

「こういうのは流れ始めてる場所に何かがあることが多いと思うんだ」
メイプルも確かにそうかもしれないと納得する。自分が何かを設置するなら何か意味のある場所にすると思ったからだ。
何かの始点や終点はそれにちょうどいい。

「何があるか楽しみだなぁ」

「絶対に何かある訳じゃないからそこだけ注意ね?」

「うん!分かった」
上流を目指しているため、次第にごつごつとした岩が増え始めて歩くことが困難な地形になっていく。

「メイプルー【カバームーブ】で登ってきてー!」

「了解!【カバームーブ】!」
メイプルが登りにくいような起伏はサリーが先行し、メイプルが【カバームーブ】をすることによって乗り越える。

そうやって進むこと一時間。
拠点の位置が元々上流寄りだったためか、二人の想定よりも早く辿り着くことが出来た。
そこにあったのは直径三メートル程の澄んだ泉だった。
綺麗な円形のそれは二人に神秘的な泉という第一印象を与えた。
濃霧も神秘的な雰囲気を作り出す一つの要素となっている。

「結構…深そう」
サリーが泉を覗き込んで呟く。
泉は大きさはそれほどでも無かったが深さはそこそこありそうに見える。

「潜ってみる?」

「やってみる価値はあると思う。【潜水】と【水泳】を持ってるプレイヤーは少ないと思うから…ここに来ても見逃してるかも」
残念ながらメイプルは潜ることが出来ないため、ここでサリーの帰りを待つことにした。

「いってらっしゃい!」

「うん、いってくる!」
サリーが泉に入り、一気に潜水していく。
光の届かない静かな水中を真下へ真下へ突き進んでいく。

そして泳ぐこと十分。泉の底にボロボロの宝箱が沈んでいるのを発見した。
罠を警戒しつつ、サリーが慎重に宝箱を開ける。
中に入っていたのは銀色の杖だった。先端には赤と青の宝石が嵌め込まれている。
メダルなどが無いかどうかの最終確認を終えるとサリーは水面に向かい浮上していった。


「はぁっ!よっ、と!」
バシャバシャと水音を立てつつサリーが泉から上がってくる。

「どうだった?」

「ハズレ。中にあったのは杖だけ」

「うー…そっかぁ……性能は?」

「ちょっと待ってね………【水魔法強化】と【火魔法強化】がついてるくらいかな」

「取り敢えずはいらないね」

「まあ、そうだね。どうする?まだどこか探索する?」

「うーん…じゃあ拠点に戻りながら近場を確認する感じで」

「じゃあそれでいこう。これだけ大きい渓谷なんだし、もう一つくらい何かがあってもおかしくないね」
二人は注意深く拠点までの道程を行く。
途中、川を見失わない程度に川の両側を探索したものの、結局何かを見つけることは出来なかった。

そして、そうこうしている内に拠点としていた裂け目の場所まで戻ってきてしまった。

「どうする?下流へ向かってみるのもアリだと思うけど…ちょっと大変かな」

「そうだなぁ……なら今日は卵の孵化に専念するっていうのはどう?」
サリーは濃霧の中で常に警戒を最大にしておくことと、【潜水】での探索をしたことで少なからず疲労していたようで、メイプルの提案を受け入れた。


「卵、卵っと…あったあった」

「よっ、と」
二人ともインベントリから卵を出して、それを抱きつつ撫でる。

「あー…つるつるで触り心地がいいー…」
サリーが岩肌にもたれかかりながら呟く。
出来のいい陶器のような手触りにメイプルもいつまでも撫でていたいと思った。

「中々孵化しないねー」

「まあ、そんなすぐに孵化するようなものでもないでしょ」
たまにインベントリにしまっては、出して暖めるのを繰り返すこと三時間。
二人は雑談しつつそれぞれ卵を撫でる。

「何が生まれてくると思う?」

「私のは紫でメイプルのは緑でしょー…んー……メイプルのは草食動物でも生まれるんじゃない?鹿とか」

「卵から…鹿?」

「モンスターならありえそうじゃない?何が生まれてくるか全く分からないなぁ」
サリーの言う通り、ゲームの世界なら設定さえすれば何だって卵から生まれることが出来るだろう。

「可愛い子だったらいいなぁ…」
メイプルは色々な動物を思い浮かべる、可愛い生き物は沢山思い浮かぶ。可愛くない生き物も同じくらい思いついたが。
特に、一部の昆虫は遠慮したいところだ。

「私のは何が生まれるかな?」
サリーの卵は紫色だった。
メイプルはその卵から生まれてきそうな生き物を想像する。

「紫、紫……んー?………毒竜?」

「あー…それは、ちょっと遠慮したいなぁ」
毒竜が生まれてきた場合、一緒に戦うようになったとして、サリーの周りが毒の海に沈むことは確定である。
そうなるとサリー自身が身動きの取れない状況になってしまう。

「毒竜…毒竜かぁ…出来ればもうちょっと穏便なのがいいなぁ」
二人は卵の中身に想いを馳せる。
これがいい、これは嫌だと、わいわい話しつつ卵を愛情を込めて暖める。
なんだかんだ言っても、二人は生まれてきたならばどんなモンスターでも優しくしてあげようと思っていた。




その想いが届いたのか。


二人の卵にピシッとヒビが入る。


「「うわっ!?」」

「ど、どどどどうする!?」

「と、ととと取り敢えず地面に置いて!」
二人は安定した地面に卵を置くと寝そべるようにして卵を見つめる。

そしてついに卵が割れて。

中から二匹のモンスターが姿を現した。





卵は結構大きいです。
イメージとしては縦三十センチくらい?
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