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痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 作者:夕蜜柑
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防御特化と決着。

数秒後、白銀の光が薄れて消えていく。
地面はレーザーによってボロボロに削られており先程のレーザーの威力を物語っていた。


そのボロボロになった地面に楓は大盾を構えて立っていた。
理沙もその強固な守りによって致死のレーザーから逃れることが出来た。
理沙が楓のHPを【ヒール】で回復する。
楓の陰に隠れたままMPポーションを飲んでMPを回復する。

「【悪食】は後一回だよ」

「うん、分かってる」
流石にあのレーザーを受け止めるには【悪食】を切るしかなかったのだ。
生き延びられたとはいえ、貴重なダメージソースと引き換えとなってしまった。
戦況は悪くなっていく。

「またレーザーが来そうなら全力で【カバームーブ】して。あまり離れないで」
理沙が早口で言うと怪鳥に向かって駆け出していく。
楓も理沙の後を追って怪鳥に近づく。
怪鳥が理沙に気を取られていた時には【毒竜ヒドラ】を撃ち込むつもりなのだ。


怪鳥が地面から乱暴に爪を抜くとふわりと飛び上がって氷の礫を射出する。
標的は理沙だ。
理沙は分かっている。
楓が簡単に受け止めていたこの氷の礫が体を掠めただけで自分は終わりだと。

巨大魚と戦った時のように、集中力を極限まで高めていく。
次第に礫が遅くなっていく感覚、僅かな隙間が見えるようになってくる。
理沙が体を捻って避ける。
時に屈んで、時に跳躍し、時にその礫を武器で撃ち落として怪鳥の懐へと迫る。

「【ダブルスラッシュ】!」
理沙は礫と爪を回避しつつ、スキルを織り交ぜ斬り刻むその手を緩めない。
怪鳥の爪が理沙の命を刈り取ろうと迫るが、全て紙一重の所で理沙に躱される。
怪鳥が攻撃すればする程その突き出した足を切り裂かれていく。

「【スラッシュ】!」
与え続けた小さな傷。
注ぎ続けた麻痺毒は積もり積もってついに怪鳥の体を縛った。

「【毒竜ヒドラ】!」
理沙が命懸けで作り出したその隙を楓が見逃すことなどありえなかった。
麻痺した怪鳥の緩慢な動きでは毒竜を躱すことが出来ない。
楓の大技を確実に当てるために、理沙が全力のサポートをする。
そして、楓はきっちりとそれに応えた。
怪鳥のHPバーが残り四割と少しになる。

「【ヴェノムカッター】!」
楓が続けて攻撃する。剣先の魔法陣から打ち出されたそれは【毒竜ヒドラ】には遠く及ばないものの確かなダメージを与える。
理沙も少しでもダメージを稼ぐために魔法を打ち続ける。


怪鳥のHPが四割を切ったところで麻痺が解けて怪鳥が自由を取り戻す。
楓を標的に定めて暴風と礫での弾幕攻撃を繰り出す。
この攻撃は楓には通らないため貴重な【悪食】を温存するため大盾を下ろす。
楓に礫の攻撃が来ている間は理沙が安全に攻撃することが出来るためチャンスと言える。
理沙のラッシュでHPが三割半まで減る。
しかし、理沙が火力を出すにはMPの消費が激しいのだ。
しっかりと管理しなくてはここぞという時に全力攻撃が出来なくなってしまう。

HPが三割半になった瞬間。
怪鳥が暴風攻撃を止めて、空に向かって飛翔する。
楓と理沙は同時に嫌な予感を感じ中央に集まって固まる。
雪降る空に舞い上がった怪鳥はその白く輝く翼を闇すら飲み込むような漆黒に染めていった。
同時に怪鳥のHPゲージが少しずつ減少していき、残り一割となったところでその減少を止めた。


怪鳥が空気が震えるような叫びを上げる。

「来るよ!」

「分かった!」
何が来てもいいように、楓は最後の【悪食】すら捨てる覚悟で大盾を構える。




漆黒の怪鳥は翼を折りたたみ突進してくる。
それは音すらも置き去りにして、楓の大盾に衝突する。
最後の【悪食】がそのHPバーを半分ほど持っていくが、そこで楓を守る最強の大盾はその効力を失った。
怪鳥の爪が高速で楓を襲う。

構えた大盾を砕き割り。
鎧をバラバラに引き裂いて。

そのHPバーを残り一割以下まで削った。

「う、あっ……」
あまりのダメージに楓が呻く。怪鳥の口元から黒い光が溢れる。

「メイプル!」
理沙が跳躍する。
楓にとっての最大の救いは理沙が思考を停止することが無かったことだろう。

「【カバームーブ】っ!」
気力を振り絞って叫ぶ楓の体が高速で理沙の元へと移動し、続くレーザーを間一髪のところで躱す。

怪鳥が追撃のために突撃してくる。
理沙の予測すら間に合わない暴力的で理不尽な速度。
その攻撃が理沙に突き刺さる直前。

「【カバー】!」
楓が理沙と怪鳥の間に立ちはだかる。
僅か一割のHPバーにも関わらず、楓は理沙を守るためにこの戦い最後の行動になるだろう選択をした。

ただ、そうしたいと思ったからだ。


怪鳥の爪は【破壊成長】によって頑強になった大盾と鎧を砕き、楓の体を引き裂いた。
おびただしい量のダメージエフェクトが飛び散る。







それでも楓は倒れなかった。
HPバーをほんの一ミリだけ残して白いエフェクトを身に纏って立っている。

「【跳躍】!」
怪鳥が爪を振り抜いたこの一瞬がラストチャンスだと悟った理沙は、楓がどうして耐えられたかなどの、楓に関する思考の一切を中止して怪鳥に向かって跳ぶ。


楓がそれに高速で追いついてくる。
構えた短刀には紫色の魔法陣が輝く。
怪鳥は爪を振り抜いた直後で体勢が崩れている。まず、避けられない。


理沙は勝利を確信した。


しかし、怪鳥の瞳が怪しく輝き二人の間に漆黒の魔法陣が展開された瞬間に、そんなものはまやかしだったと悟った。
二人の顔に焦りとも驚愕とも取れる表情が浮かぶが、空中ではもはや身動きが取れない。

毒竜よりも先に撃ち出された漆黒の魔弾。
怪鳥の最後の切り札が二人を飲み込みながら飛んでいく。

飲み込まれた二人の姿は儚く消えていった。

そう、まるで。


夢か幻のように。











「私のとっておきはどうだった?」

魔弾が通り過ぎた一瞬後に空間がぶれて理沙が姿を現す。
最後の最後。
この一瞬のために見せずに取っておいた【蜃気楼】。
それを初めて見る怪鳥はその幻想を見破ることが出来なかった。

「【カバームーブ】!」
本物の楓が理沙まで接近する。
怪鳥が避けれるような時間は存在しないゼロ距離攻撃。

「【毒竜ヒドラ】!」
毒竜に飲み込まれ。
長く尾を引く叫びを上げて。

怪鳥は遂にその体を地面に沈めた。
怪鳥から溢れ出る白い光が二人を祝福するかのように輝いていた。







「やった……勝った…」

「疲れた…寝たい」
ボロボロになった広間に倒れ込みながら二人が呟く。

「そうだ。メイプルのあのスキルなんだったの?最後の攻撃を耐えたやつ」

「ちょっと待ってね…【不屈の守護者】っていうスキルで、HPが一割以下の時に味方をかばうと取得出来る大盾専用スキル。一日に一度だけどんな攻撃もHP1で耐えられるってさ」

「ああ、なるほど。そういうスキルか……私はレベルが上がったくらいかな…っていうか今メイプルHP1なの!?【ヒール】!」
暖かい光が楓を包み、HPを回復する。
これで何かの拍子に死ぬことは無くなっただろう。
二人は起き上がって探索を始める。

「怪鳥が毒の海の中だから探索はお願い」

「サリーは?」

「鳥の巣を見てくる」
二人が分かれてそれぞれ探索を開始する。
宝箱は現れなかったため、何処かにそれ相応の報酬があるはずだ。
楓はジャブジャブと毒の海を進み怪鳥がいた所に向かう。

「あっ!素材が残ってる!」
落ちていたのは楓すらも貫いた大きな黒い爪が四つと真っ白い羽が三枚だ。
いずれも最上級の素材だろうことは予想出来た。

「メイプルー!ちょっと来てー!」
理沙が大きな鳥の巣の中から叫ぶ。
楓はとことこと走っていくと下から理沙に問いかける。

「上まで行った方がいい?」

「うん!【カバームーブ】で来て」

「おっけー!【カバームーブ】!」
壁を蹴って跳躍し、理沙の元へとたどり着いた楓が見たものは二つの卵と、五枚のメダルだった。

「これ…怪鳥の?」

「いや、二つは大きさも色も違うし…何処かから拾ってきたとかかも……何の卵かも分からないかな」

「これも持って帰れるの?」

「そう。インベントリにしまうかどうかの表示が出たし…どっちがいい?」

「先に選んでもいいの?」

「いいよー!お好きな方をどうぞ」
一つは深い緑の殻をした卵。もう一つは淡い紫色の卵だ。

「じゃあ……緑が好きだからこっちで!」

「それじゃあ、私はこっちね」

二人が卵の情報を確認する。

【モンスターの卵】
温めると孵化する。


「情報が少ない」

「私もそう思う。モンスターが孵化するだけだったら嫌だけど…テイム出来るかもしれないしなぁ…」
このゲームにはサモナーもテイマーもいないため可能性は低かったが、怪鳥の討伐難度を考えると特別な報酬かもしれないのだ。
二人は取り敢えず卵も持ち帰ることにした。

素材は二人で爪を二つずつと、先に卵を選ばせてもらったお返しにと理沙が羽を二枚もらうことになった。
二人は巣から降りて魔法陣の元へと向かう。

「魔法陣三個あるよ?」
楓の言うように、現れた魔法陣は三つだ。
全て違う場所に繋がっていると考えるのが妥当だろう。

「サリー、どれがいい?」

「【悪食】もないし戦闘の少ないところに行きたいよね…」
理沙はしばらく悩みながら歩き回り、一つの魔法陣の前で足を止めた。

「これで!」

「おっけー!じゃあ行こう!」
二人が魔法陣の中へ入り光となって消えていった。
残ったのはここでの激戦を物語るボロボロの空間だけだった。














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