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痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 作者:ユーキャン
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防御特化と一夜。

メイプルはいつもの赤い服に着替えて演技モードに入り直したミィと共に町から出た。
メイプルは町から出る前にミィと今日限りのパーティーを組んだ。

「私足遅いから、【暴虐】!……行きたいところまで乗せていくよ!」

「……の、乗るぞ?」
ミィは恐ろしい見た目の足からよじ登り背中に跨る。
ミィとしてはまさか乗ることになるとは思っていなかっただろう。
ミィはそのままメイプルに向かってほしい場所を告げた。

「おっけー、しゅっぱーつ!」
ぐんと加速して駆け出した化物はフィールドにいるモンスターよりもモンスターらしかった。



そうして暫く走った所で二人は目的地に辿り着いた。


「よっ……と。【炎帝】!」
ミィはメイプルから降り、ぐっと体を伸ばすとスキルを発動させた。
それを合図とするように次々とモンスターが現れる。

「【身捧ぐ慈愛】」
メイプルが発動したスキルはミィを完全に守りきる。
敵にすれば恐ろしいそれは味方にすると回避や防御という行動の存在を忘れてしまいそうになるほど頼もしい。
実際、ミィは防御行動を取る必要が全くなかった。
メイプルが横にいるだけでモンスターのHPを削ることを考えるだけでいいのだ。

「……これは、勝てない訳だ」
そうして移動しつつ狩りは続き、あらかた狩り尽くした所でミィは脱力した。
最後に移動して到着した湖を背にしてミィが座り込む。

「ありがとうメイプル。ごめんね、かなり付き合わせちゃった……」
ミィは素の状態でメイプルにお礼を言う。

「ううん、いいよ!でも、今日はそろそろ終わろうかな……眠たくなってきちゃった」
現実世界でも夜は深まっている。メイプルは今日のところはログアウトしようかと考えた。

「本当ありがとう、私も終わろうかな。いつもより張り切って攻撃したから疲れたかも」

「そうだ!じゃあ、最後にもう一度癒されていく?」
メイプルはそう言うと化物のお腹からドシャッと落ちてきた。
人型に戻ったメイプルはスキルを発動させ、ふわふわの毛玉になった。
ミィは恐る恐るそれに触れる。するとふんわりと柔らかい感触がする。

「中へ入ってきてー?」

「う、うん」
ミィは毛をかき分けて中へと入る。
心地よい柔らかさに包まれて体の力が抜けていく。

「あー……いい……」

「よかった」
メイプルより上に重なるようにミィが潜り込んで、時間が経過した。
そして、癒されていたその時二人はぐっと毛玉が引っ張られる感覚を覚えそれぞれに反応する。

「な、何?」

「んん?」
二人が揃って毛玉の側面からポンッと顔を突き出した。
毛玉は重力の鎖を引きちぎってふわりと浮かび、湖の真上までふわふわと飛んでいった。

「メイプル、ど、どうなってるの!?」

「分からない!」
湖の真上についた毛玉はそのまま空へ向かって上昇していく。

「これは……イベント?」

「どうだろう?もし落ちても私が守れるから大丈夫だけど……」
二人が水面から五メートル程上昇した所で湖の水が柱のように伸びて二人を包み込む。
しかし、それも一瞬のことで二人は光に包まれると、次の瞬間別の場所にいた。

「と、取り敢えず出るね?」
ミィは毛玉からすぽっと抜け出ると毛玉の真横に降りる。
メイプルはこのままでは身動きが取れないためミィに毛を焼いてもらい地面に降り立つ。

いや、正確には地面ではない。

「ここ、どこ?」

「メイプル……えっと、雲の上?」
メイプルが今踏みしめているのは土ではなかった。
ふんわりと柔らかい雲だったのだ。

「すごい星……」
足下を確認したメイプルは今度は空を見上げる。
星々が眩しいくらいに輝いているのは、思わず見惚れてしまうような光景だった。

「うん、綺麗。星が降る夜ってこういう夜かな?」
二人はしばし夜空を眺めていた。

「……どうする?取り敢えず進んでみる?もう一度くる方法もよく分からないし……」
メイプルの提案にミィも乗って、二人は雲の壁を乗り越え乗り越え先へと進んでいく。
そうして進んでいくとまっすぐに伸びる雲の道に辿り着いた。
二人はギリギリ二人が横に並べるくらいの道幅の道に足を踏み出した。

「 ん?メイプル!上!」

「上?……【身捧ぐ慈愛】!」
メイプルは一度は解除した【身捧ぐ慈愛】を再度使用し、ミィを守る。
直後、空から道に光る物体が降り注ぐ。
メイプルはそれを浴びつつバックし、避難する。
すると、雨のように降り注いでいたそれは止んだ。
二人は降ってきたものに当たりをつけることができていた。

「ミィの言う通り、星降る夜だった……」

「物理的に降ってくるなんて思わないって……」

「どれくらいの威力なのかは分からないけど、私なら耐えられるから進めそうかな」
メイプルはミィと共に再び歩き出した。
降り注いだ星がメイプルに当たっては跳ねて落ちていく。

「サリーなら全部避けちゃうのかな?」

「いや、流石に無理じゃない……?」
道には休むことなく星が降っている。
躱して進もうと思えるような光景ではなかった。
そうして進んでいるうちに道の終わりが近づいてきた。

「結構大きい星も降ってきてるけど……」

「問題なーし!到着っ!」
長い道を進んだ先には雲の壁、そしてそこにできた横穴があった。
ここまで来て入らないという訳にもいかないので二人はそこを慎重に進んでいく。
横穴はそこまで長くはなく、すぐに終着点がやってきた。

そこには煌めく光が注がれていた。
静かに、糸のように伸びる光。
それが天から雲で出来た器へと続いている。

「おお……」

「これ……」
二人は器に近づいて、溜まった光に触れてみる。
何かを触った感覚はなかったが、二人はそれぞれ一つのアイテムを手に入れた。

「【天の雫】?」

「使い道は……ちょっと分からないみたい、でもいいものじゃないかな?素材とかかも」

「ミィはここで手に入るのはこれだけだと思う?」

「多分、基本一本道でこっちにしか行けなかったし」
確かにとメイプルも納得して、二人はここで探索を終えることにした。

思わぬ冒険も終わり、それぞれがログアウトした。

翌日。
メイプルはサリーに【天の雫】について話していた。

「んー……何かのキーアイテムだと思うから大事に残しておいたらいいんじゃない?」

「そうする。あと、そろそろ通行許可証のレベル上げもしないと」
今までで最もやることが多い階層に毎日がイベント期間と言っても過言ではないくらいだった。

「私も早くマックスにしないとね。先に最奥で待ってるよ」

「うん、絶対追いつく」

最初はカスミ、そしてそれに続く形で次々に玖の鳥居を越えていく。
そしてそのうちの一人が情報を公開したことで、十一月初めにこの町の最終目的は明らかになった。
そう、三つのアイテムを集めることだ。

既にその内の一つを手に入れているミィとメイプルにより、両ギルドは情報収集の過程を飛ばして【天の雫】を手に入れようとしたが、【炎帝ノ国】は予想を上回る星の威力に苦戦することとなる。
【炎帝ノ国】では時折ミィに頼まれてメイプルが助っ人に向かってそのやばさを改めて浸透させたりもした。
貰った報酬で寂しかったメイプルの懐が温まったりもした。

【楓の木】はメイプルがクロムとカスミを連れて一度、サリーが単独で一度攻略しただけで終わった。
残りの四人は最後の鳥居の先に向かうつもりがなかったため、挑戦は見送りとなった。
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