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痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 作者:ユーキャン
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防御特化と新開放。

今年最後の。
来年もまた投稿していきます。
カスミは刀を手に入れてからは再び通行許可証のランクを上げることに専念し始めた。
一方、それからさらに一週間経った頃のメイプルはというとギルドの机に突っ伏していた。

「さーりーぃー……通行許可証のランク上がらないよー……」
メイプルが向かいの椅子に座っているサリーに話しかける。

「まあ、メイプルは時間かかるかもね」
と言うのも、通行許可証をランクアップさせるためには、町の中から外からとにかく走り回っておつかいイベントをこなさなければならないからだ。
そしてイベントの内容は採取から討伐まで多岐に渡る。
カスミの速さが異常なだけで本来はなかなかの時間を要するのだ。

メイプルは防御力と引き換えに色々と投げ捨ててしまっているために普通よりもさらにスピードが落ちてしまっている。
サリーの通行許可証の文字は漆、メイプルは貰った時のままだ。

「早く奥まで行ってみたいなぁ……」
メイプルがそう呟いたその時、確かに感じられる地鳴りが四層全体に発生した。

「な、なに?」

「分からない……っと?」
メイプルとサリーに同時に運営からの通知が届く。
二人がそれぞれメッセージを開いて確認する。

【プレイヤーが初めて玖の鳥居を突破したため町が本来の姿を取り戻しました。またこれによりアイテム、クエストが追加されました】

「サリー!ちょっと出てみようよ!」

「うん、見てみようか」
二人がギルドから出ると明らかに変わっている点があった。

「おお……?あれは……」

「んー……見た感じ……鬼だね」
そこには人ならざる者、ぱっと見て分かるような鬼などを始めとして物怪や妖怪と呼ばれるような者達が闊歩していた。
第四層は妖怪と呪術の町だった。

「サリー?こういうのは大丈夫なの?」
メイプルがふわふわと浮かぶ人魂を指差す。どう見てもサリーの苦手なタイプのものだ。

「向かってこないし、驚かせてこないからね……そっとしておけばいいから」
とは言っても好きなものではないため表情が明るいとは言えない。
サリーは通り過ぎていく人魂を気にしつつメイプルに話しかける。

「到達したのってカスミかな?」

「すっごい進んでるみたいだったもんね」
二人は今ここにいないカスミのことを思い浮かべる。
そしてその予想は当たっていた。


玖と書かれた鳥居を潜った先でカスミは座り込んでいた。
カスミが鳥居を潜った途端に妖怪が溢れ出したために驚いてしまい立ち上がれないままそれを見ていたのである。
カスミの元にも運営からのメッセージが届いてカスミは事態を把握した。

「なるほどな……よっと……ふぅ」
カスミは立ち上がると改めて新しい区域を見渡す。

「次の鳥居は近いな」
今潜った鳥居から伸びる道は一本だけである。
妖怪達が歩く大通り、両側に店が構えられたその通りを最奥まで進むと一際高い建物の前に辿り着いた。
その建物の入り口の前に最後の鳥居が設置されているのだ。
そしてその鳥居の隣には立て札があった。

【次代の主は赤鬼の角、龍の逆鱗、天の雫を持つ者に託す】

「今までに買うことが出来たアイテムにはなかったな……アイテムも増えているようだし再探索といくか」
カスミは三つのアイテムの情報を集めるのも兼ねて追加されたアイテムを見るために心躍らせて店を回り始めた。


そしてそれはどのプレイヤーも同じだった。一斉に探索を始めるプレイヤー達とNPCの妖怪達で今まで静かだった町は賑やかになった。

メイプルもサリーと共に新たなアイテムを見て回ることにして近くにあった店へと入った。
人間だった店主は狐の尻尾と耳を生やした女性に変わっていた。

「化けてたってことなのかな?」

「かもね」
二人は新しい商品を見て回る。
実用的なアイテムからそうでないものまで、この店だけでも見たことのないアイテムはいくつもあった。

「見てメイプル、これ」
そう言ってサリーが手に取ったのは紐でくくられた三枚の御札である。
サリーは左手には白い御札、右手には黒い御札を持っている。

「二つは違う効果?」

「うん。黒い方は三分間対象のスキルを一つランダムで使用不能にする。
白い方は事前にスキルを選んでおいてそのスキルが封印される時に身代わりになってくれる」
サリーはどちらも枚数分、つまり三回使えると付け加えた。

「ほほー……なるほど」

「白黒一セットずつしか持てないけどね」

「……とりあえず、買っとこうかな?」

「それがいいと思うよ、どこかで使うタイミングがあるのかも」
買っておいても損はないアイテムだったため二人は御札を二色とも購入することにした。

「サリー!サリー!こんなのもあるよ」
そう言ってメイプルが見ているのは付け角や付け耳である。

「試しに一つ付けてみたら?」
試着可能の表示を見たサリーがメイプルに提案する。

「んー……あっ!じゃあこれ!」
メイプルが付けたのはくるりと巻いた角である。

「んー……」

「羊になった時に似合うかなって!」

「ん!ああ、羊……そっかそっか。うん似合ってるんじゃないかな」

「じゃあサリーはこれとか!」

「え?私は別に……」
メイプルが渡したのは真っ白い狐耳と尻尾のセットである。

「朧とお揃い!」

「そうだね……人のいないところでなら付けてみてもいいかな?……尻尾まで付けるのはちょっと恥ずかしいし」
もしこれらがプレイヤー間に浸透したなら付けてもいいかもしれないと考えつつサリーはメイプルと共に会計を済ませて店を出た。

「今日はこの後ちょっと用事があるからログアウトしないと……」

「おっけー!バイバイサリー」

「うん、バイバイメイプル」
サリーは光に包まれて消えていった。
一人残されたメイプルがさて何をしようかと考えていると、見覚えのある人物が目の端にとまった。

「あっ、ミィだ。あっちは……何があったっけ?」
ミィがキョロキョロと周りを見渡した後で細い路地へと入っていったのを見て、何があったか思い出せないメイプルは同じ道を行ってみることにした。
前回のイベントをきっかけに知り合って結構仲良くなったミィに声をかけるのもいいと思っていた。

曲がり角の多い道を進んでいくとミィの声が聞こえてきた。
止まる必要はないのにメイプルは立ち止まり、角からチラッとミィのいるだろう方向を見る。

「よしっ……癒されたらモンスター倒しに行こうっ」
そう言うと、ミィは青いパネルを出して装備を変更し始めた。
それだけではなく、見た目を変更するアイテムも使い始める。
赤い髪は真っ白になりロングヘアーに、服は青と白に変更し、ぱっと見ただけではミィだとは分からないだろう。
いつもの赤い姿が印象的なためだ。

「よっし!」
ミィは扉を開けて中へと入っていった。

「…………見ちゃいけないのだったよね?ど、どどどうしよう!?」
メイプルは結果的に後をつけて覗き見をするということになってしまった。
メイプルは誰にも話さないということに決めて、それでもミィには見てしまったことを伝えようと思った。

「とりあえず……入った店は……」
小さな看板を確認するとそこには【ふわふわふれあいルーム】と書かれていた。

「……よし。ふぅー……」
メイプルは扉を開けて中へと入ると受付の人に代金を支払って奥へと進む。
そうして入った部屋の中はふわふわと浮かぶもふもふの猫が何匹もいた。
そしてその奥で緩みきった表情をして座っているミィもいた。
ミィはメイプルに気づくと抱いていた猫ですっと顔を隠した。
いくら変装をしていても割と仲良くなった相手と向かい合えばバレてしまうだろうことは明白だからである。
顔のパーツまでは変わっていないのだ。

メイプルはそんなミィに近づくと全て話して図らずも見てしまったことを謝った。

「いいよいいよ、それに……誰かには知ってて欲しかったかも。演技し続けるのも大変で……あはは……」

「本当、ごめんね。お詫びっていうか……何か出来ることがあったら言って!」

「……じゃあ、この後ちょっとモンスターを倒すのを手伝ってくれたり…」
メイプルはそんなことならと快く了承するとミィと共にしばしもふもふを堪能した。
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