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痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 作者:ユーキャン@夕蜜柑
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防御特化と解放。

メイプルは拠点に戻る途中にサリーとあることを話していた。

それは今から二日目にかけて能力を一つ解禁するというものである。
そこで使い勝手が良く、最も消費が少ないスキルを選んだ。

メイプルはドレッドと対峙してすぐにそのスキルを発動した。

「【捕食者】!」
地面から二匹の醜悪な化物が姿を現す。
ドレッドに外部に初公開のそれを予想出来る訳がなかった。

「はぁっ!?何だそれ!!」

「シロップ【大自然】!」
メイプルの声に応じて地面からつるが伸びドレッドとメイプルを閉じ込める。
蔓は何重もの壁を作り、内部の空間を小さくしていく。
ドレッドは蔓を切り裂いて脱出を試みたが間に合いそうになかった。
ドレッドが蔓への攻撃を止めてメイプルの方に振り返る。

「……オーケー、今回は俺の負けだ。次は万全の状態で……な?」
ユイとマイとの戦闘を終えた直後に、絶対に間に合うはずのなかったメイプルからの奇襲。
結果、メイプルはドレッドを閉じ込めることに成功した。
今回はメイプルに有利な状況が偶然生まれたが、次もそうとは限らない。
普通に対峙しても間違いなく逃げられてしまうだろう。

「何度だって返り討ちにします!」
【捕食者】がドレッドに迫る。

「また来るぜ、次は本気でメイプルを狩りにな……!」
そう言い残して、ドレッドは光となって散っていった。
散り際に何か策があるかのような獰猛な笑みを浮かべていたのが、メイプルの目に焼き付いていた。



メイプルはシロップに【大自然】を解除させるとサリーの元に戻った。
【大自然】によりメイプルとドレッドだけが隔離されていたのだ。
メイプルはサリーに近づくとすぐ、サリーの頬をグニグニと引っ張った。

「無理しすぎだよ」

「……ごめん」

「取りあえず、ユイとマイが復活したら謝らないと」

「うん……」
しばらくして、ユイとマイが復活した。
メイプルとサリーはすぐに謝ったが、ユイとマイはそもそも気にしていなかったようだ。
むしろメイプル到着までの間、強敵からオーブを守りきれたことで役に立てたと嬉しそうだった。

「取りあえず、オーブは全部設置しておくね」
サリーのインベントリから十個のオーブがゴロゴロと出てくる。

「サリー、何であんなに無理したの?別にもうちょっと早く帰ってきても良かったんだよ?」

「ああ……それは……取りあえずカナデを呼んでくれる?」

「ちょうどそろそろ交代ですし、私が呼んで来ますね!」
マイが奥へと走っていき、カナデを連れて戻ってきた。

「カナデ、早速だけどこれを覚えて」
そう言ってサリーが見せたのは自分のマップだった。

「これは……すごいね」
その場にいた全員の目に飛び込んできたのは今回の広大なフィールドほぼ全ての情報が詰まったマップだった。
十二時間走り続けて作り上げたマップにはギルドの位置や規模などももちろん書かれている。

「私は……ちょっと、限界みたいだから……カナデ、メイプルのマップに書き写してあげて」

「ん、了解。もう覚えた」
カナデは相変わらずの超人的記憶力で難題を余裕でクリアした。

「ありがとう……メイプル、プランBで」
プランBとは前衛部隊が崩壊した際にする予定だった行動である。
実際にイベントをやっていると予想とは違う部分も多かったため、早々にこれを発動することとなった。

プランB。
またの名をメイプル解放策。
防衛という枷を取り払って、外へと放つのである。

既にほぼ全てのギルドがサリーによってその位置を暴かれている。
次にやってくるのは本命の化物だ。

「防衛が危なくなったら呼んで、飛んで帰ってくるから」

「回数制限はある?」
サリーの問いにメイプルは消費量を計算する。

「距離にもよるけど……サリーを助けにいった時の距離なら一日に二往復出来るかどうか……かな?」
兵器を破壊することで飛んでいるのだから、常に使える訳ではない。
しかも、移動用に使い切ってしまうと攻撃の分がなくなってしまう。
慎重に使わなくてはならないのだ。

「遠くまで順に回収して飛んで帰ってくるね」
サリーのマップのお陰でギルドを探す必要がなくなり、メイプルは最短距離を移動出来るようになる。

大幅な時間短縮だ。

「少し……休むね」

「うん、バトンタッチだね」
サリーからメイプルへ。
今ここに準備は整った。

「じゃあ、明日の朝から行ってくるね」

「僕も急いでマップを写すよ」
カナデは次々とメイプルのマップに情報を書き入れていった。






翌朝。
一つの中規模ギルドが無事朝を迎えて伸びをしていた。

「はぁ……やっと朝か」

「夜襲がなくなるだけで倍は楽だな」

「……敵襲!敵は一人!」
朝の静かな空気を切り裂いて敵襲の報告が届く。
一人と聞いて敵のいる方向をゆったりと見た全員は緊張にその身を固まらせた。

何かに身を隠すこともなく真っ直ぐに歩いてくる漆黒の装備の少女。

理不尽の権化。
死の象徴。
狂気の具現化。

そう、防衛のことなど気にもとめずメイプルが歩いてくるのだ。

「や、やるぞ!守るんだ!」

「「「おう!!」」」
気合いを入れたその瞬間。
メイプルも臨戦態勢に入る。

「【捕食者】」
唯一解禁された新しい攻撃手段。
それは心を折るのに十分過ぎる力を持っていた。
向かってくるプレイヤーを食い散らかして一歩ずつ近づいてくる。
純粋な暴力により、正面から叩き潰されていく。
敵の位置も、攻撃手段も、そのおおよそのステータスも分かっている。
しかし、それでも止められない。

メイプルが一歩進むごとに明確な死が這い寄ってくる。
希望などほんの少しもない。
狙われたギルドにとって、死は絶対であった。
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