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痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 作者:ユーキャン
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防御特化と限界突破。

サリーはいつも以上に感覚が研ぎ澄まされていることが実感出来た。
さらに、戦闘に気持ちが入っていくにつれて感覚はどんどんと鋭くなっていく。
そんなサリーの耳に指揮官らしき人物の声が聞こえてきた。

「フレデリカ……」
聞き覚えのあるその声は間違いなくフレデリカの声だった。
つまり、このプレイヤー達は【集う聖剣】のプレイヤーという訳だ。
それならばと、サリーが生き残る術を紡ぎ出す。

「【攻撃誘導】!」
サリーが一度目の魔法攻撃を躱す。
すると前衛のプレイヤーの動きが変わり一気に前進してきた。
情報は行き届いているようだった。

サリーが生き残る為には裏で主導権を握りつづけなければならない。
相手の行動を操作することが出来なければ次の瞬間には死が待っている。

「ありがとうフレデリカ」
未だ姿は見えない彼女に小さく言って、サリーは前進してきたプレイヤーの攻撃を躱す。

「【攻撃誘導】!」
その言葉を聞いてプレイヤー達の動きに鋭さがなくなる。
予想外は迷いと焦りを生み、動きを鈍らせる。
そしてサリーの力が二回で打ち止めではないことに彼らはまだ気づけない。
ただ、スキルの支援がないということはつまり、サリーは次々と飛んでくる攻撃全てを自力で避けなければならないということである。

「凄い……全然違って見えるよ」
サリーは自身の感覚の変化に驚いていた。
今までの集中した自分の見ていた世界が高速に感じられる程に剣は遅く感じられた。
練習しても身につかなかった恐怖センサーも使えている。
それも、ドレッドよりも遙かに上手く。

近い未来の危険が全て過去に起こったことのように把握できた。

限界を超えた先の覚醒は一時的にサリーを遙か高みに押し上げたのだ。

「当たんねぇ!!クソが!」

「負けない。負けないよ……!」
サリーの攻撃は必中で、サリーへの攻撃は全て外れた。
何度も使用される【攻撃誘導】にフレデリカが違和感を感じ始めた頃には既に二十人のプレイヤーがサリーに倒されていた。
そしてフレデリカは答えに行き着く。

「スキルじゃ……ない?」
仮にそうだとして、どうすることも出来ないという結論が残るだけ。
対処法を失うだけだ。
徐々にスキルではないという恐ろしい現実が全てのプレイヤーに理解され始めていた。

しかし、だからといってどうにかなるという訳ではない。

「おらぁっ!!」
気合いを入れて振り下ろされた剣を見たサリーはそれを躱す。
それも、ただ躱すのではない。
ギリギリで躱して必殺のカウンターに繋げるのだ。

「今だ!」
魔法での面攻撃がサリーに襲いかかるがサリーはそれが来るタイミングが何となく分かっていた。

「【背負い投げ】」
武器をしまってプレイヤーを引っ掴み空中へと放り投げる。
空から降り注ぐ魔法攻撃は投げられたプレイヤーに遮られてサリーの位置にだけ届かない。
フレンドリーファイアはないためプレイヤーにダメージはないが、落ちた先のサリーのダガーは別である。

「化物かよ……っ!?」
今だ七十人以上残っていると言うべきか、既に三十人ほどやられたと言うべきか。ただ一つ、サリーがたった一人で多くのプレイヤーの心を折っていることは確かだった。

「朧、【影分身】」
サリーに出し惜しみなどしている余裕はない。
常に相手の思考を止めるような予想外を生み出し続けなければならないのだ。

「生き残る……潰すっ!!」
駆け回るサリーの分身はサリー本体とは違い直ぐにやられてしまう、それでも一体ごとに一人は道連れに出来た。
その間にサリーは生き残るために包囲を破ろうとする。

その時。

「貰った!!」
サリーの背中側から一本の剣が突き刺さった。
遂に与えた一撃に歓声が上がる。

「いいや、まだだよ」
【蜃気楼】により作り出された幻影は空気に溶けて消えていく。
次々に出てくる予想外。
最初は余裕だと指揮に徹していたフレデリカが戦闘に参加する程にはサリーは脅威だった。

もっとも限界突破して覚醒している今のサリーでなければもう決着はついていただろう。
サリーを包囲するためには限界を迎えさせる必要があり、サリーを倒すためには限界を超えさせない必要がある。

「【多重炎弾】!」
フレデリカは信じがたいものを見るような目でサリーを見る。
たった一撃すら当たらない。
ほんの数ミリだけズレれば当たるのだが、その数ミリが果てしなく遠い。

「これは、やばい……!」
流石にサリーも無理な攻めは出来ないためプレイヤーの減る速度は遅いものの、それでも確実にやられていた。

潜伏するためにフレデリカが選んだ障害物の多い地形は、ここにきてサリーが生き残るのに有利に働いていた。

「くっ……追手が追いついてきた」
サリーを追ってきたプレイヤーが第三勢力としてサリーの包囲に加わった。
サリーはそれを感じつつフレデリカの魔法を走って避ける。

「いいよ。まだいけ……る?」
それは突然だった。
足の動きが止まり、膝からガクンと崩れ落ちた。

「【ウォーターウォール】!!」
襲いかかる炎弾を辛うじて転がって躱すものの、次の瞬間には倒れこんだサリーは警戒されつつも隙間なく包囲された。

すぐに襲いかかることが出来なかったのはサリーの予想外な行動に警戒心を抱いているからだった。
それでしてやられているのだから尚更である。

サリーは限界を超えて動いていた。
そんなものが長く続く筈がない。
フレデリカが全員に障壁を張りながら迫ってくるのを見て、サリーは静かに呟いた。

「次は負けないから」

「【多重炎弾】」

フレデリカの詠唱と共に爆音が響いた。
それはフレデリカの魔法ではなかった。
天空を爆炎が照らし、煙の尾を引いて流星のように何かが高速で降ってくる。

それはフレデリカとサリーの間に落ち、
直後炎弾の輝きが全員の視界を塗りつぶした。

光が収まった時にゆっくりと立ち上がったのは白い翼を持った黒鎧の少女。

「やらせない。絶対に」

メイプルだった。
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