1−6
「ありがとう、キザ先!」
ブチっと、爽快に電話を切った周防は、笑顔で千鶴を見る。
「まっ、そうゆうことだ」
「どういうことよ、・・まぁ、行輝が稲田さんの所にいるってことは、分かったわ」
もう、言葉はいらないわ。と千鶴は、納得し。周防は、うんうん、と頷いた。
そして、携帯を腹に仕舞うと、両腕を広げ、空気を胸いっぱい吸い、はぁーと搾り出すように息を吐き出した。
「ほんじゃあな、千鶴姉ちゃん」
腕を上げ、膝をまげ、ポーズをとると、
ワン・・・
ツウ・・・
スリー・・・
Beeeeeeeeeeee!!! By.誰かの声
グォオオオオオオオオオオオオ
周防は物凄いスピードで加速しながら、盲ダッシュして行った。
「あの子・・・本当に足速いわね。さすが、県一!」
千鶴は真顔で感心しながら、ぼんやりとそう呟き、戸を閉めた。
一方、その同時刻。
「王手!」
将棋盤の上で、『飛車』という敵軍が、稲田氏の『王』様を落としていた。
「・・待ってくれぇ」
「待ったは無しだ」
低い声が、まるで威厳に満ちた、武士のような言い方でそう言った。
「器がせまいのぉ。少しぐらい、ええじゃろぉ?」
「駄目だ」
「えぇじゃろ?」
「くどい」
「けちじゃのぉ。そんなんじゃと、女の子にモテんぞ」
診療台の上、将棋盤を挟んで、稲田氏は皺だらけの目を細めた。すると、漆黒の髪の男が言い返す。
「どうだっていい。それより、あんたの負けだ。今度の旅は連れて行ってもらうからな」
「だから、それはいかんと言うとるじゃろ」
男は、不機嫌に眉を顰める。
「なんでだ?俺が勝ったらいいと言っただろう」
「それは、お前が勝手に言い出したことじゃろ。わしはいかんと言うとる」
梃子でも動かないと言い切る、稲田氏。男も負けじと、眉間に深く皺を刻み、睨みつける。
両者、目線がぶつかる先で、パチパチと赤い火花がめ飛び散っていた。
「おじゃまします。明雲高校の斉藤というのですが、」
ノックの音と共に、ドアを開けて入ってきたのは、見た通りの斉藤先生。
「うちの生徒がこちらへ運ばれたのとお聞きして、引き取りにきました」
ご丁寧に挨拶をした。
「あぁ、早かったですな」
ここは一時休戦と、稲田氏は男に目配らせし、診察台から降りた。
「あんたんとこの生徒さんは、向こうで寝かせているんですわ」
稲田氏は診察室の外を指差した。それに、斉藤先生は目を向ける。
「よく寝とりますからなぁ、お起きるじゃろうか」
ぼやくように言った稲田氏。ふと、斉藤先生が、未だ診察台に座る男に目線を移した。
「君は、確か・・」
「あぁ、巽ご存知なので?」
「えぇ、鳴滝巽くんを知らない人はいないでしょう」
斉藤と目が合った鳴滝は、軽く会釈し、流れるような黒髪が、さらりと整いに整った男前の顔にかかる。
それを手で払いのける仕草は、・・・たまらく色っぽい。
次回、『鳴滝 巽なるたきたつみ』!?ダレ、ナニ、バトルBゲーム初の色男登場!?・・「頑固者じゃ」by.稲田氏
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