*木崎先生からの再度、猛注意*
これより非常に安全な軽度から気まぐれな重度の暴力表現あり。苦手意識のある人は、目を瞑って読みましょう
5−9
東・明雲高校の場合(弐)
明雲高校生たちの雲行きは怪しかった。
東で小面の女を目撃したの小沢だった。寝ぼけてフラフラと歩いて、
壁に向かって立小便をしていたら、女の笑い声が聞こえたが。
もちろん、気の弱い小沢は幽霊がいるんだと勘違いばかりしてその場から立ち去ったのだから、それが小面の女だと知るはずもなかった……
だから、小鼓で叩き起こしたのが一体誰なのかと揉めていても、
教えてやれる者は誰もいなかった。
三年の弥刀と生島は、はじめは宥める側にいたはずなのに、
寝不足のせいか無理やり起こされた怒りが飛び火して、
シャツの首元を掴み合い、今にも殴り合いをしそうな雰囲気になっていたが、
もう殴りをしているのもいた。
最悪の状態だ。
「――どうするんだよ。これって仲間割れみたいじゃねぇ」
揉めあいから離れ、壁にべっとり張り付いていた生徒が言った。
「みたいじゃなくて、仲間割れだろ」
「あんまり近づくなよ。巻き込まれる」と言った尻から、
殴られて吹っ飛んできた米原に押しつぶされ、注意を促した生徒はあっけなく撃沈した。
絶句ものだ。
最後までゲームをがんばろうと、誓った友が仲間にやられてしまった。
壁にへばりついている場合じゃない!怒りを新たに、
既に大騒動の渦と化した生徒郡の中へと走った。そして、無口な陸上部、
米原は気絶した体の上からのそのそ起き上がり、すっかり空になって放置されていたアルミのタライを投げつけた。
「米原がキレたぞ!」
タライが頭に当たって打ち所が悪かったのか、
うずくまる生徒をよそに、大喧嘩は米原をも巻き込んで、尚も悪化した。
「残念〜。ここには焼却炉ねぇんだよ」と、おちょくった弥刀は米原に飛び蹴りを食らわされ沈し。二年の応援団、千葉の喧嘩を止める声がもはや、煽りにかわっていた。
これは自滅という類のものになってきた。
――この騒動の原因の一端でもある小沢は、
必死で奥村を摩擦の痛さ凌ぐ早さで揺さぶり起こした。
奥村の頭はまだうまく起動していなかったが、やはり奥村。明雲高校ではまともな方だ。
「はぁあ。眠ぃ。何騒いでんの?」
「喧嘩だよ。奥村くん、閣下を起して」
「英司?起せばいいじゃん。そこで寝ている。輝行も一緒だろ」
赤いティシャツと制服のズボン姿で大の字で鼾をかいて寝ている周防の隣、
胡坐をかいて眠る藤尾。赤い紐のついた刀が藤尾の右側に立てかけてあった。小沢は二人を見る前に、首を振りだした。
「駄目。無理。怖い」
「何が?」
「俺、まだ閣下の寝起きに立ち会ったことがない」と、小沢。奥村は笑った。
「出産じゃねぇんだから、立ち会わなくていいと思うけど。
英司の寝起きってそんなに悪かった?」
「閣下は何があってもおかしくない」
「――何があってもか」とケラケラ笑い、奥村はさっそく「英司、起きろ」と面白半分に揺さぶった。けれど、数回揺さぶって周防はまったく起きず。
その代わりに、藤尾が眼を覚ました。
「起床の時間か」
目をパチパチさせながら刀を手に持って立ち上がる藤尾は、
まだ寝ている周防見て「時間だ」と足蹴りした。だが、周防はそれでも起きなかった。
「輝行でもだめか」と、諦めかけていると、
飛んできたタライが周防の髪のない頭に直撃した。
「うぉおおおおお。痛てぇ!」
「あいつ、タライで起きたぞ」
奥村は青ざめた小沢に言った。頭にたんコブを作った周防は頭を擦って、
本能的に犯人が分かったのか、地面で転がるタライを掴み、
「てめぇ、やったな」と、素手でタライをボコボコにへこまし出した。タライの変形速度は普通じゃなかった。それを見た明雲高校生たちは殴ろうとしていた手を引っ込めた。
――周防がこっちに来たら、ヤバイ。と、悟ったのだった。
「俺の勝ちだ。分かったら、二度と俺に勝負を挑むな!」
地面で拉げたタライを見下ろし、そう言った周防は気が済んだのか、
また寝ようと「よいしょ」と座りだした。藤尾が刀で周防を突いた。
「寝るなよ。そろそろ先に進む時間らしいぞ」
振り返った周防は、眉間にこれでもかと皺を寄せて言った。
「――何で、俺の家にフジオがいるんだ?」
次回、第五章完結!?
来月より第六話最終章が始まるのであります
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