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バトルBゲーム
作:佐屋 有斐



1−2



  しかし、生徒達の予想を裏切るようにチャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。「起立。」と今日の日直が言うと、皆立ち上がる。早い閣下の呼び出しに、聞こえない『藤尾』の怒鳴り声。いつもとは違う日常を不審に思った生徒が、礼をする隙に閉まった教室の後ろ戸を少し開けて、廊下を伺っていた。着席の合図が終わった後もまだ、しつこく戸に張り付いく生徒に先生は出席簿を振り下ろした。
「こら、何やっているんだ。授業始めるぞ。」
「・・はい。」
 生徒は軽く叩かれた頭を手で撫でながら、不満げそうに戸に手をかけた。けれど、扉は閉まるどころか、逆の方向に勢いよく引っ張られる。
「おい、フジオ!!フジオいるかぁ?」
 
 スピーカーから聞こえた同じ声の持ち主が、戸を全開して大声で叫んだ。当然、教室にいた生徒も先生も突然のことで呆然とている。しかし、そんなことは気にしていないといわんばかりに、騒がしい生徒は戸の前で口を開けて立ち尽くす生徒を「何やってんの?邪魔。」と押し退け、堂々と教室の奥へと歩いていく。
「おい、周防。お前、何考えているんだ?授業中なんだぞ。他の生徒の迷惑を考えろ!」
 先生は慌てて制止の声をかける。すると、周防と呼ばれた灰色のパーカーをかぶった生徒は眉間に皺を何重もよせた。しかも、パーカーから覗く坊主頭に浮ぶ妙に綺麗な形をした眉毛は、なんとも言えない可笑しいやらと厳ついやらで、笑うにも笑えない。
「サイトォ先生、それどころじゃないんだって。フジオがいなくなったんだって!」
 周防は窓側の一番後ろに辿り着くと、前に座る背の高い生徒の影で机に伏している生徒の頭を容赦なく、叩き始めた。
バシバシッと叩かれる様はひどく痛そうだ。しかし、当の本人は黒いタオルに顔を埋めて、起きようともしない。
「あいつ、昨日電話で予習の課題教えてくれるって言ってたんだ。だから、8時ぐらいから学校来てたのに、あいつ来ねぇんだもん。」
「いつも遅刻ぎりぎりのお前にしては、珍しいな。それよりも、奥村を叩くのは止めておけ。多分、痛がっているはずだ。」 
 苦笑いを零しながら指摘する斉藤先生をよそに、周防は手を動かしながら話し続ける。
「でしょう?家近いから、余計に寝坊しやすいんだよ。でもさ、今日はキザ先と駆けしているし、フジオも早く来ないと教えないって、言うから俺頑張ったんだ。けど、あいつ何時まで経っても来ねぇし、携帯も出ねぇし。仕方ないから、放送室に駆け込んだわけよ。」
「あぁ、だから今日はやけに早かったのか。って、別に放送室に駆け込まなくても、教室に直接行けばいい事だろう。大体お前はな、特別待遇をいい事に・・」
 話しているうちに、説教モードになっていく斉藤先生。真面目に授業を受けたい生徒が小さな声で「先生、それより授業をしてください。」と言うものの、聞こえていないのだろう。一気に加速した熱は若い教師魂に火をつけたようで、白熱した表情で斉藤先生は周防ににじり寄った。
「お前は、学校をどこだと思っているんだ!」
 

 いきなり怒られてきょとんとした周防は、叩く手を止めた。
「何言ってんだ、斉藤先生。どこって、学校は学校じゃねぇか。先生こそ、どこだと思っていたんだよ?」
 確かに、間違ってはいない。だが、そういう事を言っているんじゃない、と生徒達は内心呟いた。しかし、周防はまったく悪びれた顔もせず、むしろ心配そうに斉藤先生を見つめている。周防が天然で馬鹿だという事を思い出した生徒達は、必死で噴出しそうになるのを堪え。斉藤先生は怒りに身を震わせながら、顔を真っ赤にして怒鳴った。
「ばか者!!」
「んもぉ、煩いな。」
 ようやく起きた奥村は机の上で、暢気に欠伸をしている。斉藤先生は顔を般若のように歪ませ、それを見た生徒数名はすぐに目線を反らした。そして、斉藤先生は動きに出た。奥村の学ランの首元と周防の腕を掴むと、二人を廊下に放り投げ教室の戸を黙って閉めたのだ。
 
  起きてすぐに廊下に放り出された奥村は、頭を掻きながら廊下に座りに直して呟いた。
「えぇ?何これ。」







次回、「先生、ボクは関係ありません!?」by.Mr.AG・・・フジオがいない、どうする!?











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