ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
4−8





「今度は何だよ、川口」



 相変わらず、きつい口調で山田はそう言った。
しかし、川口は身に覚えがないのか、首を捻った。

「あん?送ってないで。何でなん?」

「満ちゃん、喋りながら携帯を打ってたの?」

 すご〜い、と柳岡は口では大げさに言いながらも、
大して驚いた顔をしていなかった。けれど、そんなことよりもと、
山田は携帯の画面をじっと見つめる佐野を見て、
そっと佐野の携帯を覗き込んだ。それに、我こそはと、
川口も、首を傾げながら身を乗り出して覗き込んだ。





「From.川口
Re:無題
 ――――――――――――――
 黒百合と引換えに、最後のダイスで償え」

 



後から携帯画面を見た柳岡が、初めに口を開いた。

「ねぇ〜、ダイスって何?」

 すると、山田は「サイコロだよ」と答えた。

「サイコロ?」



「――おい、待ってくれや。おれはこんな変なメール送ってないで」


「だろうな」と山田はまるで、何もかも知ったふうに頷いた。
 川口はそんな山田にギョッとした。

「だろなって……、川口何か知っているんか?」

「どうせ、なりすましメールだろ。今時、珍しくねぇよ」

「なりすまし?うそやん、誰かが勝手におれを名乗って、
佐野ちゃんにメール送ったんか?」

 心底嫌そうな顔をした川口。山田は言った。

「名乗った奴の方が、気の毒だけどな」

 送った奴も、もっと人選べばいいのに。と付け加えた。

「おい〜。それはひどいんちゃいますか。どうみても、おれの方が気の毒やろう」



「悠ちゃん、だったら黒百合は何なの?お花だよね」

 と首を傾げ、横から口を挟んだ柳岡。
 メールの文面の意味が分からず、興味深々なのだろう。
岡柳の頭の中では園芸部だけあって、無数の花が浮かんでいる。
もしかしたら、黒百合の種でも分けてもらおうと、
見当違いの事を考えていたのかもしれない。

 けれど、そのメールの意味に思うところがある山田は、
ずっと黙ったままの佐野に目を配らせて、「それは分かんねぇな……」と言った。




 佐野はしばらく見つめていた携帯を二つに折り、
「最後のダイスっていえば、あそこしか思いつかない……」
とうわ言のように呟いた。
 どうも、佐野はメールの内容も、差出人すら分かっているようだ。
これから何が起こるかも重々承知だったのだろう。だが、三人には何を言わずに、
「ちょっと行ってくる」とだけ、コンビニにでも行くような様子で、佐野は席を立った。














「はぁ?――佐野ちゃん」

 驚いた声をあげたの川口。佐野は振り返って、
「また、明日」と簡素な言葉を残し、言葉通りに教室を出て行ってしまった。

「えっ、佐野ちゃんって!」

 急いで佐野を追おうとした川口、その川口の肩を掴んで山田は大人しく
「行かせてやれよ」と、後を追うのを止めさせた。
それにも驚いて、ぴたりと体を止めた川口。

「――けど、チャイム鳴るで?」
 時計を指差して、あと一分もないやろ。と、真面目なことを言った。
山田は川口を席に座らせながら、首を横に振った。


「川口、お前はまず佐野の心配する前に、自分のメールアドレス変えろ。
前から思ってたんだ。mituruchanとか、自分の名前をアドレスにするなよ」


「めっちゃいいアドレスやろ。ていうか、俺の勝手やん!」

 喚く川口に、山田はしょうがないなと、未だに黒百合の種が欲しいな、
と一人思い耽っていた柳岡に



「――麗、川口のアドレス一緒に考えてやってくれよ。こいつにセンスはない」



 お前なら、まだマシだろう。と、言った。川口はその言葉にカッとなんて、

「山田、お前こそセンスないやろ!お前の私服は最悪やんか。
何やんねん、いつも縞々ばっかり着やがって!」

 と関係のないことまで口走った。けれども、それに乗るのが山田だった。

「ボーダーの何が悪い。お前だって前は着てたじゃねぇか」

「山田が毎回縞々を着ているの見て、着る気はもうとっくに失せたわ!」






 と、飽きずに二人は叫び合い、それを見ていた柳岡は
二人を諌めるわけでもなく、鳴り出したチャイムを聞きながら、
空席になった、ついさっきまで佐野が座っていた席に目を移した。











木崎先生「次回は、少し痛々しい表現があるようだ。
気をつけてくれ」


周防「あれぐらい、痛々しいうちに入んねぇよ。
   キザ先!!」
木崎先生「周防。
   お前みたいな人間ばっかりじゃないんだぞ」
周防「……。
   言っている意味が分かんねぇ」       



次回、時には身を切る思いもする!?



+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。