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4−7

 




その後、――結局、
蒲原先生は顎に大きな青痣をつくっただけですんだものの、
「気をつけなさい」という一言の注意ですませた蒲原先生は甘いと、
坂ノ浦学園高校の乗本教頭は、川口に「昼休み、職員室に必ず来るように」と、
死んだ魚のような目つきで言いつけた。

しかし、乗本教頭の説教を受けた生徒は、今までいなかった。
説教をするべき問題児さえ、今までいなかったのだ。
あの恐ろしいほど生気のない教頭がどんな説教や罰を川口に与えるのか、
まるで検討がつかなかった。




 けれど、言いつけられた当の川口といえば、まったく不安がる様子もなく、
いつも通りの休み時間、定位置である山田の席周辺で、
席の主山田と佐野、そして、唯一の紅一点である柳岡とで、
乗本教頭の説教を楽しい会話の話題に上げて、陽気に笑っていた。
川口の神経は並々以上のようだ。



「呼び出されちまったけどさ、――案外、乗本教頭って優しいかも知らへんで」
 こないだ、花壇に水やっていたから。と、
「木花に優しい人は、人にも優しい」と根拠もない事を川口は言った。

「分かんねぇぞ?よくあるトイレ掃除とか、反省文とか書かされるんじゃねぇ?
先に言っとくけど、俺は手伝わねぇから」

と山田。川口は「冷たいなぁ〜、悠世ちゃん。お友達でしょうが」と
山田に擦り寄った。すると、

「教師を自転車で轢くような馬鹿、いらねぇよ。近づくな。あっちいけ」

シッシと、山田は川口を手ではなく、足で遠ざけた。


「つれないわぁ〜、悠世ちゃん」


 川口は負け犬のようにうな垂れながらも、
すぐ隣で綿菓子を頬張る佐野の手から袋を奪い取り、
中身をすべて口の中に放りこんだ。


「あっ、全部食うなよ」



「壮ちゃん、手伝ってあげたら?」

 柳岡がそう言うと、川口は口をもごもごさせながら
うんうんと頭を上下に振った。柳岡に親指を立てて「後押し、ナイス」と
言っているのだ。
だが、佐野は空になった袋を裏返し、ムスッとして言った。


「俺も嫌だ。俺の綿菓子全部食う奴なんか手伝わない」

「佐野ちゃん〜」

 岡柳はそこで、ようやく綿菓子の袋が空になったことに気がつき。


「あぁ〜、見たことないパッケージだったから、
あたしも食べたかったのに〜。それ、どこで売っているの?」

「ナナミちゃんにもらったから、知んない」

 ――でも、多分、この辺では売ってないと思う、と佐野。
岡柳は恨めしそうに、


「満ちゃん〜」


川口を見て叫んだ。そしたら、山田は笑いながら、


「今日のお前、最悪だな。何やっても駄目じゃん」

ときつい言葉を追って言った。
山田は川口に容赦がない。


川口は皆に責められ、ついには現実逃避するかのように目を瞑り、
両手を合わせて「修行でもしに行くかぁ」と呟いた。それに、山田が


「いってらっしゃい、二度と帰ってくるな」


と微笑んだのは、外でもない、サディズム・サディストである証拠だった。
ふざけている時は大して気にも留めないが、時々、川口は本気で泣きそうになる。
ボケも大変なのだ。


川口は山田を見て、唯々、
「どうか、優しい人になってくれ」と祈るように言った。










 そんな三人のやり取りを佐野がぼんやり聞いていると、
制服のズボンポケットに入れていた携帯が振動し始めた。
おそらく、メールだろう。振動はすぐに止まり、また元の同じように静かになった。

――ピザ屋パウロの店長、パウロからのバイトに関するメールかも知れない。
佐野に限っては、ほとんどシフトを入れていて、急なバイトが入るはずもなかったが、
美香がバイトに入ると、客がこぞって配達に美香を指名する。
その訳は、門倉学園高校の吉柳と同じだ。美女ほど重宝されることなく、
美香自身性格の良さも加わって、どこに行っても美香は人気者だった。
その為、佐野は大抵暇になった。配達は美香がしてくれるのだ。厨房に入るといっても、パウロは盛り付けしか佐野にさせなかった。
だから、美香がバイトに入る日は、少し遅めにバイトに入ってもかまわなかった。
パウロのメールはそれを知らせるためだった。



 佐野は携帯を取り出して、
今日の放課後はこの三人を遊びに誘ってみようかなと思いつつ、
メールボックスを開いた。





「――あれ、川口。俺にメール送った?」











連続二話投稿第二弾(1)

サイト2000hit
ありがとう&メリークリスマス!?


次回、

川口「――えっ、何でメールが勝手に??」


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