1−10
「あぁーー」
明雲高校のグランドで、周防は無気力な声をあげた。
「こら、しっかりと走れ」
木崎先生が笛をピーと鳴らしながら「ほらほら」と手を払い。
周防は恨めしそうに木崎先生を睨みつけ、勢いをつけてもう一周走り出す。
「あぁーーつまんねぇ!」
「おう、おう。英司の奴、おもしろく荒れてるなぁ」
校舎の四階、窓枠に身を乗り出して、一学年上の荒俣が楽しそうにそう言った。
「今日一日、藤尾がいなかったんすよ」
机の上で携帯を弄りながら奥村は答えた。
「周防の奴、彼女いたよな?確か、商店街に」
「輝行は別なんですよ」
「へぇ?英司も物好きだねぇ。・・・そういえば、あいつらどうやって知り合ったんだろう? クラスも違うし、部活も違うし。接点なんてないじゃん」
「さぁ?英司がある日、ひょっこりと輝行を連れてきたんで、俺は知りませんよ」
普通に出会ったんじゃないですか、と言う奥村に荒俣は噴出した。
「あいかわらず、適当だなぁ。お前ら、見ていて飽きないわ」
「先輩こそ」
荒俣は腹を抱えたまま、奥村を振り返って。
「・・で、バイトは?」
「今日は休みです」
「珍しいなぁ。奥村は勤労学生だとばっかり思っていたけど?」
「珍しく休みです」
「へぇ」
たいして、興味もなく頷いた荒俣は、赤髪混じりの髪を撫でた。
・・・二人の淡々とした会話は、ここで一旦止まり、
奥村は携帯の画面から顔をあげず、荒俣はだらしない顔で廊下を眺めていた。
部活中の野球部の掛け声が、グランドから聞こえてくる。
「おっ、お出ましじゃん」
荒俣の笑いを含んだ声に、奥村は顔をあげた。
ドアを凭れかかるように開けて、しんどそうにゼイゼイと荒い息を吐いて、目が若干血走っている。
「輝行!」
・・・藤尾が肌蹴た学ランの肩から、鞄を背負って立っていた。
「おもしろい格好。襲われたの?」
冗談を言う荒俣に、奥村は立ち上がって藤尾に近づき。
「どこ行ってたんだ?英司がずっと探していたけど、・・・大丈夫かよ?」
立っているのも辛いのだろうか、よろめく藤尾を支えた。
「やっと、逃げられた」
藤尾は泣きそうな顔でそう言い、安心したのか、ずるずると椅子に崩れ座った。
荒俣は面白いネタを発見したとでも思ったのだろう。急ににんまりした顔をして、藤尾を覗きこんだ。
「誰から逃げていたの?」
幻覚を見るかのように荒俣を見て、
藤尾は「荒俣先輩・・」と呟き、ため息をついた。
「なんでこうも、俺は運がないんですかね。あのバカといい、あのお坊ちゃんといい・・
剣道部の事で一杯いっぱいなのに」
誰のこと?と荒俣は奥村の顔を見た。
「門倉学園の東ですよ」
「東?」
「フランス人と日本人のクオーターで、えらい金持ちらしいんすけど。知りません?」
「知らないなぁ。けど、お坊ちゃん学校の子が、またどうしたの?」
「藤尾のファンらしいんですよ」
「ファンだって!」
荒俣は「そりゃあ面白い」と笑った。藤尾は不機嫌に、頭を抱えて込んだ。
「笑いごとじゃないんですよ。今朝なんて・・
『あれ、藤尾くんじゃないかい?』
フラフラと藤尾が歩いていると、白いベンツが目の前に止まっり、黒い窓ガラスが下へと開いていく。
『・・・あぁ、東くん』
焦げ茶色の長い髪をさらりと無意味に払い、黒いスーツを着た、門倉学園高校の生徒は微笑んだ。
『おはよう。こんな時間に君と会うなんて、偶然だね。
今日は朝の剣術の稽古はないはずじゃないのかい?』
なぜ、東は他校の、しかも友人でもない藤尾の部活の予定を知っているのだろう。
疑問に思うものの、頭がガンガンする藤尾は早く会話を終わらせたくて、そそくさと言う。
『朝練はないけど、約束があって・・』
『もしかして、あのツルツルとじゃないだろうね?』
『ツルツル?』
『周防英司だよ。あんな宇宙外生物ほかにいないよ』
爽やかな顔で東はそう言って、毒を含んだ笑みを浮かべた。
藤尾は苦笑いしながら、会うたびに、周防の呼び方が変っているような気がする。
『あんなツンテルドッテンといたら、君までバカになるよ』
どんな名前だよ、と暢気に考えていると、東の白いベンツから黒服にサングラスをした巨大な外人が一人出てきて、
「乗れ」と命令しているかのように、ベンツのドアを開けた。
『さぁ、今日こそは門倉学園に行こう』」
「それから・・門倉学園に着いたら、着いたで、校内を一周案内させられ。熱があるみたいだと言われて、
ホテルの様な保健室で、寝かされたと思えば、編入届けにサインさせられそうになったり。
学食を食べようと連れて行かれたら、全校生徒の前で、自己紹介させられたり
・・ちょっとした隙に逃げ出さなかったら、今頃もっと悲惨なことになってたかも知れない」
げっそりとそう言う藤尾。奥村は「お疲れ」と、藤尾の肩を叩いた。
「東も本格的になってきたな」
「いつか、無理やり編入させられそうだ」
「へぇ、面白い・・じゃなくて、なんでそんなに藤尾に構うんだろう?」
「さぁ?英司は武士みたいでカッコいいって、言っていましたけど」
「武士かぁ、藤尾だったらそう見えなくもないけど・・」
荒俣は藤尾をじっくりと見る。
確か、藤尾は時代劇でよくある鬘や着物が似合いそうな、細く釣り上がった二重の目と、薄い唇、
そこそこ低い鼻の日本人らしい整った顔のつくりをしていて。まして、剣道なんてやっているものだから、
無精ひげをつけでもしたら、若い武士に見えてもおかしくない。
「だけど、過激だねぇ」
奥村は相槌を打つように、頷いた。
「うぉおおおおお!!アズマ!!なんで、てめぇがうちの学校にいるんだよ!!」
「うるさい、野生人!」
「うそだろう?」
三人は窓に急いで駆け寄った。
グランドの入り口で、野球部の掛け声よりも、
さらにデカイ声で周防と東が制服とジャージの首袖を掴みあって、叫び合っている。
「僕は藤尾くんを連れ戻しにきたんだ。君に指図される覚えはないよ!」
「はぁあ?フジオ?なんだ、てめぇが拉致っていたのか!!」
「拉致?無礼な!僕は彼が本来いるべき場所に連れて行っただけだ!」
「本来だぁ?フジオは一生、うちの学校にいるんだよ」
「一生いるわけがないだろう!」
ついつい、いつもの癖でそう怒鳴った藤尾。耐え難い疲労と熱に身体が限界に達したのだろうか、
ブチッと血管の切れる音と共に、気を失って頭から真後ろへ倒れていく。
「「藤尾!」」
「おっと」
奥村は慌てて、藤尾を抱きかかえた。
それを見てほっとした周防と東は、再び向き合って、
「マネすんな」「お前のせいだ」
と、罵りながら二人はお互いの髪やら頬やらを引っ張り合い。
「おい、止めろ!」
止めに入る木崎先生やら、他部活の顧問達やら、周防を応援する生徒達の歓声がそれに加わって、
グランドはさらに騒がしくなってきた。
「やべぇな」
奥村は熱を持った鉄板のような藤尾を額から手を話し、藤尾を背負って廊下に走っていく。
そして、グランドを見ながら、荒俣は一人腹を抱えて言う。
「おう、おう。楽しみじゃない、今年のバトルBゲームは!」
一日の終わりのチャイムが、始まりを告げるように明雲高校に鳴り響いた。
不幸な剣道部員、藤尾 行輝 失踪(拉致・勧誘)から始まったバトルBゲーム。
ぞろぞろ出てくる、登場人物に脇役達。
果たして、まともな人間はいるのだろうか・・・・・・
以上、第一話 完結!!
次回、第二話
いい男 鳴滝巽の素顔が知れる!?
AG「えぇえええ!!ナルオカなんて知るかよ!!明雲高アンコール!!」
?「てめぇ・・・若を侮辱するな!」 AG「あぁ?やるかぁ?おっさん!?」
・・・・・・さぁ、どうなる!?
と、その前に
<<89-lux>>http://89lux.tirirenge.com/ にて
バトルBゲームのバックストーリー『RED ZONE PARTY』任意制ページにて
公開決定。バトルBゲーム 第二話は少々お待ちくださいませ。
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