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1−9





チャラッチャラッチャラ〜チャチャッ♪
『Ah,ニードゥ!』 
 チャラッテャラッチャラ〜チャチャッ♪
『Ah、インポータント!』
 チェキッチャラッチェラ〜チェチャッ♪



 バギッ



「あっ」 
斉藤先生は間抜けな声をあげて、驚き。そして、見てしまった。



 あれは、一瞬の出来事だった、周防の変な着メロが鳴った瞬間。
 周防はいちいち学ランのボタンを外して、ポケットの中の携帯を取り出し。
 ――一方、鳴滝は顎を俊足が一撃、壁に吹っ飛んだ。

「ホォオ!わしの診療室を壊すなんざぁ、千億年早いわ!」
 荒い息を吐いたのは、他でもない、稲田氏だ。中国拳法のような仕草で、腕をくるくる回し、足位置を変える。

「おい、誰だよ?」
 その傍では、周防が気にもせずに、携帯に向かって怒鳴っている。


「何なんだ、こいつらは・・」
 斉藤先生、呆れて果てて、診療ベッドの上に座った。抱きついたままの、小沢まで雪崩れ座り。
小沢は、「もう、終わったの?」と、顔をあげた。
 相変わらず、くねくねと構える稲田氏と、携帯に怒鳴っている周防。
 壁にぶつかり、床に崩れ落ちる鳴滝を見て、小沢は一言。
「さっさすが、閣下!明雲高の英雄!」
 何も見ていないくせに、ガッツポーズと声援を送った。
 斉藤先生はもう無視を決め込み。「お前の風邪がうつったみたいだ」と、頭を抱えた。

「そりゃあいかんな。わしが看てさしあげよう」
 普段の稲田氏に戻ると、ベッドに横になるよう指示し、机の上から電子体温計を取り出して、脇に挟むよう、斉藤先生に渡した。
「お前さんはもう、大丈夫か?」
 立ったままの小沢に、稲田氏は言った。
「えっ?」
 一体何のこと?と首を傾げた、小沢。
「熱じゃよ」 
稲田氏は小沢の額に手をあて、「もう、下がったようじゃな」となんでもない風に言う。
「あっ、そういえば、身体が急に軽くなった気がする」
「四十度もあった熱が、ものの一瞬で、見事に下がるとはな。お前さんもやるもんじゃ。
どうだ、英司と一緒に鍛えてみんか?」
「変な勧誘をしないでください」と、言いたい所だが、斉藤先生は何も聞かなかった振りをした。
「いっいいえ、俺は陸上部のマネージャーなんで・・」






「うぉおおお、何だよ!晩飯まで抜きとか、ふざけんなよ、キザ先!」

 絶叫した周防に、小沢は話の途中で、「閣下?」心配そうに顔を周防に向けた。 
「だって、フジオがどこにもいねぇんだ。俺が探さないと!・・えっ、用?用なんてないけどさ、
朝なんで来なかったか、知りてぇし。ほら、休み取れなかった訳だし。
って、どうでもいいとか言うなよ、俺にとっては死かつ問題だったんだって。
・・はぁあ?すぐ戻ってこい?嫌だって、俺はフジオを探しに・・えっ、稲田のじいちゃん所は・・」
 周防は片手から耳を離し、ブンッと首を捻った。

「稲田のじいちゃん、フジオはどこにいんの?」
 体温計を受け取った、稲田氏はデジタル盤を見ながら言う。
「藤尾さんの坊っちゃんなら、おらんぞ」
「どっか行ったの?」
「最初っから、おらなんだ。・・斉藤さん、あんた本当に熱があるようじゃ」
身体を起こした斉藤先生に、稲田氏は上着を捲るように言い、聴診器を耳につけた。

「キザ先生ですか?」 
小沢は、嬉しそうに周防に近づいた。
「そうなんだよ。ここに、フジオがいなかったら、すぐ帰ってこいって言うんだ。
もし、行かなかったら、キザ先の奴、真冬なのに100キロマラソンしろとか、晩飯一週間抜きまで言ってくるし。
・・俺なんで、あんな鬼コーチのいる学校に行っちまったったんだろう」
 「泣きそうだ」と言う周防に、
小沢は平気な顔で、「でしたら、俺がタイム測り、付き合いますよ」と笑う。

 まったく、話が噛み合っていないが、二人とも気にしていないらしく。
「新しいストップウィッチ買ったんで、早く使いたくて」
「って、あれ?俺なんで走ってばっかりなんだ?」



『周防、小沢、自分の言いたい事を、言い合うのは勝手だが、
稲田さんや斉藤先生に、これ以上迷惑をかける前に帰ってこい!』
 受話器越しに聞こえる、木崎先生の声。
小沢は携帯に向かって「こんにちは」と叫び。 
 ・・聞こえていたのか、と周防は返事もせずに電話を切った。


「あぁーあ、帰んないと」
「今日の走りこみは、何十周でしょうね?」
 うんざりした顔で携帯を腹ポケットに仕舞う周防に、活き活きとした顔で話す小沢。
「そこのコザマン。今日は家に帰って、ゆっくりと休まんといかん」
「ええっ、でも、さっきは見事に下がって?」
 稲田氏は小沢の学ランの襟を掴んだ。
「さっきのは、冗談じゃ。一時的に下がっただけで、またすぐ熱が上がってくる。
さっさと帰らんと、また倒れるぞ。医者命令じゃ、今すぐ帰れ」
 「そんなぁ・・」と稲田氏に襟を掴まれたまま、部屋の外へと引っ張られていく。

「あ、稲田のじいちゃん!」
 周防は、稲田氏を呼びとめ。小沢は助けてくれるのかと、目をメルヘンチックに輝かせた。
「なんじゃ?」
「そいつ、コザワンだから。まちがっても、『コザマン』じゃないから」
 ちょっと馬鹿にした言い方でそう言い、稲田氏はどれも同じじゃと、玄関へと小沢を引きずって行った。


「じゃあ、そろそろ行こうか」
 斉藤先生は腰をあげて、稲田氏の後を追うように玄関へと向かう。周防も頷いて、後に続こうとして・・・・


「あぁあああああああああ!」

「今度は何だ?」
「ナルオカはどこ行った?」
 周防は診察室を振り返って、キョロキョロと目線上を探しても誰もいない。っと、視線の端の方に誰かいた。
「そこにいたか、ナルオカ!って、あれ?何やってんだ、あいつ」
 様子を窺うように、周防は眉間に皺を寄せたまま、壁に崩れ倒れている鳴滝に近づいた。



「おい、ナールーオーカー!」
 シャツの首元を掴み、うな垂れた顔を無理やりこっちに向けた。目を閉じて、長く黒い睫が見え、顎が若干赤い。
「死んでるのか?」

 周防がそう言った瞬間、その目がパッと開き、険悪な顔つきで周防の手を剥がそうと鷲掴んだ。
「へっ、やっぱりクズ高だな。死んだ振りなんて、バカみたいな作戦で、この俺に勝てると思うな!」

 周防と鳴滝は一斉に拳を握り、互いの顔目掛けて腕を振り動かした。

 ゴンッ



「うぉおッ痛ってぇぇぇえ」

「くっ」

 二人の頭に拳骨を振り下ろしたのは、誰もが知っている斉藤先生。「いいかげんにしろ!行くぞ、周防」
 周防のパーカーを掴んで、引っ張り出した。
「ギャー、ちょっと、斉藤先生。首が絞まるって!」
 ピカっと反射する丸裸の頭の周防は、必死に締まるパーカーと自分の首の間に手を挟んで抵抗している。
・・・しかし、斉藤先生の我慢はとっくに超えていた。
「こうでもしないと、また喧嘩するだろう。木崎先生に罰則を増やしてもらうから、覚悟しとけ!」
「はぁ?関係ないって、それとこれ」
 
 こうして、周防は文句を言いながら、ズルズルと斉藤先生に連れて行かれた。






 
 今日、一番可哀そうな鳴滝は、壁に頭をぶつけて二度目の失神。
騒がしい物音や登場人物達の声を聞きつけ、部屋に誰かが飛び込んできた。

「五代目!」
 黒いシャツに白い水玉、ベンツの運転手だ。
運転手は、壁に凭れて伸びる、鳴滝に慌てて駆け寄り。そして、叫んだ。
「ごたいめぇぇええええええええ!」
 
「うるさいわ!」
 戻ってきた稲田氏は、無慈悲に運転手を蹴り飛ばした。






*次回、「わしにできない拳法はない!」by.稲田氏 「両方とも、蹴り技じゃねぇ?」by.AG
って、多分・・・・・・もうフジオを見つからない!?

「それでも、AGは諦めないぜ」by,奥村 from,もう、今出番ないの協会




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