1−8
ふわりと蒸気が立ち、空気は一瞬にして緊迫化した。
野性的な鋭い目線が飛び交い、熱気と冷気が立ち込める。
「周防止めろ!」
斉藤先生の制止の声も手も届かず。目にも見えぬ速さで移動したかと思えば、
構えていた周防の拳が鳴滝の顔面めがけて、豪速で打ち込まれようとしている。
「周防!」
・・もう、誰にも止められない。
小沢は瞼を閉じた。
「何をやっとるか、ここはわしの病院じゃぞ」
あっけなく、顎を殴って、周防の豪拳の軌道を反らし、足元まで蹴り払って、転倒させたのは稲田氏。
フンと息を吐いて、周防を見下ろしている。
斉藤先生は安堵のため息をもたし、小沢は恐々と薄目を開けた。
「じいちゃん、何するんだよ?」
周防は立ちあがって、牙でもあるような、険悪な顔で稲田氏の胸元を掴んだ。
「ばかもん、それはこっちの台詞じゃ。わしの病院で暴れるなんて、千年早いわ」
お返しだといわんばかりに、稲田氏は周防の腹を殴った。
「うげっ」
腹が二つに折り曲がって、床に崩れた周防。
ようやく全開した目で、小沢は呟いた。
「あのじいさん、何者?」
「すいません、またご迷惑をおかけして」
斉藤先生が慌てて謝罪すると、稲田氏は、
「いやぁ、気にせんでええ。こんくらいの年頃じゃと、血の気が多くて当然じゃ。
英司はまだまだ、技量が足りんが、筋はええ。鍛えれば、なかなかの武道家になれるじゃろう」
・・・あんた、周防を何者にしたいんだ。斉藤は、心の中で呟いた。
「はっ」
鼻から、息が通ったような笑いを零したのは、鳴滝。腕を組んで、勇ましく周防を見下ろしている。
・・・なんて、でかいんだ。小沢は息を二度飲み込んだ。
「無様だな」
鳴滝は極上の嫌味な笑みを浮かべて、「悪役かい!」って感じに言う。
けど、たまんない、悪い色気のオーラが依然、漂っている。
――しかし、ここにいるのは男臭い男ばかり。鳴滝、微妙に流し損だ。
「ナルオカぁ!精々、今のうちに余裕ぶっこいてろ。
そんで、俺の『ストレート、ロイヤル、炎、龍、虎、竜巻、メガトンキック、銃弾パンチ』をくらって、天国で死ね!」
立ちあがって身構えた周防は、ピカリと目を光らせた。
「キュー、閣下ステキー!」
口笛(?)を吹いて、小沢は歓声をあげた。
・・おいおい、もうどこに突っ込んでいいのか、分からないぞ。
斉藤は、なんでこんな中学生みたいな、生徒たちがうちの学校にいるんだと、泣きそうになっていた。
けれど、とりあえず先生は放っといて・・
まさに、雰囲気だけは明雲の勝利かと、思われた。
しかし、鳴滝を甘く見てはいけない。
「ギロッ」っと、超弱者小沢を睨みつけ(小沢、白化)、
自分より背の低い周防にむけて、力強い蹴りを放った。
ガガガガシャンッ
当然にように、周防は軽々とそれを避けたが。後ろにあった、ガラスの入った棚は、かわいそうに、豪蹴が直撃し。
吹っ飛んだ上に、ガラスが粉々に飛び散った。見るも無残。
「ひぃぃっ」
もう、小沢怖くて失神しそう、斉藤に抱き。
この状況には、斉藤もビックリ。唖然として、極悪な顔の二人を見つめていた。
「相変わらずの、弱々キックだ。そんなの、俺に効くわけないじゃん。
大体、クズのナルオカが、このスオウエイジ様に勝てるわけない!」
「・・・・」
すっぱり、きっぱり、堂々、清々。周防は言い切り、鳴滝を邪悪に目を細めた。(けど、それでも色気があるんだな)
そして、メラメラと殺気がどこからともなく、部屋に溢れ返り。
小沢は斉藤に抱きつきながら、
「俺はここに居ない」「何も見てない」「何も聞いてない」と、ぶつぶつ呟いていた・・
次回、うっわぁ、・・・・ヤバイ雰囲気!?でも、「俺は何も知らない」by.コザワンの呟き
*念の為の、木崎先生からの猛注意*
作者の気分次第で、凶暴になる恐れがあるから、
痛い・怖いの駄目な人は、もう一度、飛ばしとくように。
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