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  CROSS ROAD 作者:青葉 夜
分断
そうして、翌朝。といっても、感覚的にはそれほど時間は経っていない。
そも、寝たのが夜明け少し手前なんだし。

「敵襲ううううっ!!!」

そんな大声に起こされて、目覚めて感じたのは大勢の気配。
左右両翼に展開した気配は、此方を後方から包み込むような配置を取っている。

「ぬわっ!?」

後方から飛び込んできた矢を咄嗟に鞄で弾き、侍女さんたちを伏せさせる。
一、二、三…連続して飛び込んでくる矢。ソレを弾こうとして…恐怖からか動きを止めてしまっている侍女の少女を矢の軌道上に捕らえて。

「…っ!?」

咄嗟に少女の頭を抑えて地面へと押し倒す。矢は少し外れて、馬車の中の荷物へと刺さってしまっていた。

「無事か」
「あ、え、その……」

返事を聞かずに、馬車の背部の布扉を下ろす。
声を返せるなら特に問題は無いだろう。
視界が狭くなる危険性はあったが、一応この馬車もそれなりに強靭だ。弓程度なら暫くは持ちこたえてくれると思う。

「壁際に荷物を寄せて、その下にしゃがみ込んでおくと良いよ」

言って、御者台から外の様子を覗いてみる。
…うぅ、何かかなりヤバ気な状況だ。

「ちょ、こら坊主っ、中に入ってろっ!!」
「護衛連中はどうなってるんですかっ!! っていうか、撒いたんじゃないんですか!?」
「撒いたと思ってペースを落としてたら追いつかれたんだよっ!!」
「怠慢だっ!!」

思い切り悪態をついて、幌の上へと上る。
後方左右に展開している盗賊らしき連中の姿。…うわぁ、凄い数だ。このままだと確実に捕まってしまうだろう。

「我らはロイ様を連れて先に行くっ、貴様らは連中を駆逐の後合流せよっ!!」

と、不意に前の馬車…其処に併走する馬から、そんな声が聞こえてきた。
…それはつまり、“俺達は先に逃げるからお前らは囮かつ生贄になっておけ”と。

「…………っ」
「腐れ外道め…」

御者の兵士が息を飲む気配が聞こえる。
それはつまり、この馬車の面々に決死の覚悟で散れと宣言したような物だ。
…組織の内部に関して、部外者の俺がどうこう言える立場ではないが…。
こういうのは、嫌いだった。

「総員、反撃開始っ!!」

号令と共に開戦。
兵士達は盾を翳して矢を防ぎ、そのまま盗賊へと特攻を掛けて…って、おいっ!?

途端馬車は完全に無防備になってしまう。
攻めなければ終わりは無いが、しかし一気に誰も居なくなるって言うのは…!!

「我に敵する者に氷の刃を…」
「土は爆ぜ、豪來と成りて倒せ」
「精霊よ、風の守りよ、我らに守りを」

詞が、足元…馬車の中から零れだして。

「むっ…!?」

順に、年長の侍女、年若い侍女、少女のような侍女。
途端に膨れ上がる馬車の中の気配。これは…魔術だろう。

溢れる気配が形を成し、打ち出された氷刃が盗賊を切り裂き、爆ぜる大地が敵を薙ぎ払い、清浄なる風は飛び寄る矢の尽くをその御風にて払い落とした。

「………」

なんだろう、この光景は。
世界に、見慣れない光と言うか、そんな物が見えていた。
馬車の中から。氷刃から、爆ぜる大地から、この一体を覆う風から。

薄明るい、其々別の色の薄明かりが。

「…気?」

じじいの訓練で、何度か目視できるほどの気を見た事は在る。
が、しかしこれは少し属性が違うような気がして。
はじめの二つは、馬車の中から放たれた魔力だ。が、この馬車を覆うのは少し違う。
人間ではなく、もっと別の存在が力を貸しているような…

「…これが、精霊か」

勘の訴えだが、先ず間違いないだろう。
けれども、一番気になるのは、何故俺がそんなことを理解できているのかと言うことで。

「………んぅ」

悩むのは後回しにしておこう。
先決するのは盗賊退治。
左右両翼の盗賊は、兵士達がなんとか抑えきっている。
が、人数的にどうしても抑えきれない部分が居るのだろう。馬車の背部、そこから弓を引き絞る幾人者盗賊の姿。

侍女さんたちも魔術や精霊魔術で頑張って持ちこたえてはいるが、それでも飛来する矢の迎撃で精一杯。とても盗賊たちへの攻撃なんでままならないだろう。

「…已む無し」

懐の袋から石を取り出して、それを幌の上へと散らかす。
気を錬って、収束。身体の中を循環させる事で、身体能力の強化も図って。

……やっぱりだ。俺自身の気も見えるようになっている。
魔力は勿論、気といえど、これまでは気配で感じこそすれ、こうして視界で認識する事など今まで滅多になかった。

だと言うのに、今。
何故かは解らないが、しかしそれらを俺ははっきりと目視できていた。

「………………………」

自身の身体に起こっている変化。
気に為らないでもないが、しかし之はコレで有用。
魔術なんていうイミフな技に対抗する術は一つでもありがたい。

「ま、とりあえず……」

この盗賊連中を片付けるのが先決か。
石ころに気をのせて、その一撃を投擲するのだった。


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