11.驚きの三羽ガラス
「柊、あんたは背もあるしパンツスタイルも似合ってていいんだけど、そのパーカー、なんとかしなさいよ」
さすがデザイン専攻だけあって、やなっぺの手厳しい的を得たダメだしがビシッとわたしの胸に突き刺さる。
「そうねぇ。柊ちゃんにはさぁ、もっとこう……レモンイエローとかサーモンピンクって淡い色なんて似合うんじゃなぁい? 襟ぐりのおしゃれなニットにレーシーなインナーのぞかせたりぃ……なんてのもアリだわぁ」
まるで自分のことのように心配してくれている沢木さんが、具体的なアドバイスを示してくれる。
「あっ、ちょっと待ってぇ……」
突然立ち上がり、テレビの横のマガジンラックを物色し始めた。
「これこれ! ほら、このファッション誌のここぉ! 」
彼女が指差した雑誌のモデルの着ているラインナップに目を向けると、確かにパンツスタイルにもフェミニンなトップが、かわいらしくなりすぎない程度に魅力的に着こなされている様子が写し出されていた。
「いいでしょう? もしかして持ってる? この雑誌ぃ」
「ううん、持ってないよ」
「じゃーこれ先月のだからあげる。ファッション・ユー。あたしの愛読書なのぉ。いろいろ参考になると思うわよぉー」
ファッション・ユー? それって……。
昨日ロランで、遥が仕事の話をしていた出版社の雑誌じゃないだろうか。いや間違いない。
階英出版ってちゃんと書いてある。
「ぁ、あの……。この雑誌ってどれくらい人気があるのかしら?」
わたしの唐突な質問に沢木さんは完全に言葉を失っている。
「え? 柊、この雑誌知らないの? 」
やなっぺが沢木さんの変わりに不思議そうに聞き返してきた。
「い、いや……。知らないわけじゃないけど、どれくらい人気あるのかと思って……」
人が恥を忍んで質問しているのに、よったんまであきれた表情でクビを横に振っている。
「あんたほんまに女子大生か? この雑誌が人気あるかどうかなんて聞くまでもないことやろ? うちらのバイブルやで。今、あんたが見てたモデルもめちゃくちゃ人気者なんや。CMにも出てるやろ? 」
「そうそう。いつもやってる男女学生の今どきファッションコーナーなんて、この雑誌の名物企画でみいーんな目を光らせてるのぉ。あたしごのみのイケメン君もいっぱいでてくるしぃ……。このコーナーに載りたくて自分から写真送って売りこんでくる子が後を絶たないって噂よぉーってあたしも送ったんだけどさ。……音沙汰なし、なんてね。あは!」
なんか、胸騒ぎがしてきた。これって、遥が引き受けた仕事の雑誌だよね。
とんでもなくすごい仕事なんじゃないかと今更怖気づくわたし。
「どうしたの? ……柊? あたしたちなんか気に障ることでも言った? 嫌なら、無理にあんたのスタイル変えなくてもいいんだよ。柊は自分が思っている以上にかわいいんだからさ、今のままの自分にも自信を持って!」
ち、違うんだよ……。わたしったら何励まされてるんだろう。
「やなっぺ……実はさ……。遥、この雑誌の仕事やることになったんだ」
「この仕事? ……って、もしかして堂野がモデルってこと? ファッション・ユーの??」
「う、うん」
「ぇえええええええええ!!」
「うそやん!!」
「マジぃ〜〜!?」
三人の驚きの叫びに覆いかぶさるようにして、わたしの携帯が鳴った。
遥だった。
それに気付いた三人は急に口をつぐんだかと思うと息を潜めるようにしてわたしを注視する。
胸に手を当てて大きく一度深呼吸をして、通話ボタンをゆっくり押した。
少し沈黙があったあと、遥の声が静かに聞こえてきた。
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