「イルミネーションを見に行くぞ」
サカキからのメールだ。
一足早くお目見えしたクリスマスのイルミネーションを見に行くというのだ。
「いつ」
「今夜」
「了解。迎えに来てくれるのね?」
「ダメだ。現地集合。」
「何時」
「19時半」
「かしこまり。」
いつも通り、用件のみのやり取り。
岸子にとっては、それが心地好い。
食事に行く、呑みに行く、遠出する。
サカキと一緒が一番ラクだ。
かといって、付き合っているわけではない。
だから、一線は越えていない。
――いまさら、改まってどうこう、ってのもねー。
――このくらいのお気楽さがちょうどいいのダ!
タクシーで現地に着く。
思いのほか人が出ている。
――物好きねー、みんな。 寒いのに……。
さてと、サカキはどこだろう?
行けば分かると、詳しい場所を聞かずにいた。
メールをするより、電話をした方が早い。
「トゥルルルルー カチッ
どこ?」
「一番デカい木の下。」
「了解」
――うぅぅ。このさっむい中、なんだってまた、サカキめ……。
――おー、いたいた。
サカキの長身はこんな時便利だ。
混雑の中でも、余裕で迷子になれる。
岸子にしてみればそうだが、サカキにしてみるとそうではないらしい。
「おまえ、ちっちゃいんだから、勝手にはぐれるなよ!」
以前、混雑した会場へ二人で行った時、
好き勝手に歩いていた岸子をつかまえてサカキが青い顔でそう叫んだのを思い出した。
「だって、アタシからはサカキはいっつも見えてたもん。」
サカキのその剣幕と、真っ青な顔に、
岸子はその一言を飲み込んだのだった。
「おまたせー。」
「おう。
せっかくだ、一回りするぞ。」
サカキが先に立って歩く。
――ったくもー、寒いってのに、よーひとが出てるわ、こんなに。
また、はぐれて青くなって探させては悪いと、
岸子は必死になってサカキについて歩く。
――サカキも、もうちょいゆっくり歩いてくれりゃーいいのに!
――脚の長さが違うっての!
やっと、サカキに追いつく。
せっかく追いついたのに、また引き離されてはかなわない。
岸子は、サカキのコートの裾をコッソリと握った。
「しっかし、この寒いのに人出てるなー。」
「そうねー。
ほんっッと、寒いねー!」
「お、イヤミか?」
「イイエ、ゼ〜ンゼン♪」
「ん?」
サカキがコートの裾の異変に気付く。
裾を握る手、その腕の先は岸子。
サカキは足を止めないまま、
岸子の手をコートの裾から外すと、
岸子の手を掴んだまま、自分のコートのポケットへ突っ込んだ。
そして、そのまま歩き続ける。
――チョッ、チョッ……!!
「チョッ……、サカキ……!」
「ん? なんだ?」
「手、手……!」
「手がなんだ?」
「ポケッ……、ポケットに手……!!」
「裾つかんでるより、はぐれないじゃないか。」
「……。
……い、息が出来ない!」
「ぶはははははは!
なんでだよ 笑」
「……き、キンチョーして……」
「ブハハハハハハ!!!
面白いな、おまえ。」
おかまいなしに歩き続けるサカキ。
「ちょっ、と、…… 手……!」
「いーじゃん、面白いからこのままー。」
冬だけど、春の訪れ……? 笑
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