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14:老人とその後

 あれから一週間はたつ。

 殺人鬼の話はなりを潜め、あれからはそういった被害もない。

 あっても非常に困るのだが。

 今日も今日とて十三番街は悪徳と無法者なりの平和を保っている。

 

 「まことに昨今、なんでも、武も商売か」

 コアの手のひらになんとか収まる重き布袋。

 その中身は狼を下した懸賞金。

 レグナ古金貨、新金貨、鋳つぶした銀も多量。

 この重みから相当にヴァルが苛ついてたのがわかるというもの。

 「節約すれば数年は生きていけるなぁ」

 「とはいえコア様にしましては今更このようなものは必要ないのでは?」

 ルルイエが問う。

 ここは十三番街、オルト事務所の三階、今ではコアの私室のようになっている部屋だ。

 相変わらずにごちゃごちゃとおもちゃ箱のように乱雑に物と書が置かれ物置部屋の体から抜け出せていないがルルイエが甲斐甲斐しく整理、不要な物を処分していくせいか以前よりもずいぶんとすっきりしている。

 ソファーとテーブルが置かれティーセットをおさめた棚が部屋端にある。

 コアはソファーに座りテーブルに置かれた甘い茶を静かに飲む。

 「おかげさまで金に不自由はしてないな」

 コアはオルトに口座を持っている。

 自身が必要とした事だが和紙をはじめ万年筆、活版印刷の原型、新聞など様々な製法、知識をコアはヴァルに教えている。

 和紙など身も蓋もなくいってしまえば鼻をかむ、穢れ物を拭く紙が欲しかった。というだけ。

 そういう矮小な理由から個人的に作ったものだった。

 作り始めてコアは個人で作るには効率が悪いとオルトのつてを利……頼る事にし、オルトの手勢、工房で作らせ、いくらか必要分の紙を用立てる事、売るならば幾らかの利益をコアの口座に入れる事を条件にと色々と教えた。

 興がのり、紙が安定的に作れるなら手軽に書く物も欲しい、この世界の本は基本的に写本だ、なれば印刷できれば便利に、本など安価に出来るのでは、新聞なんかあれば面白いだろう。

 幾つもの物を作り、生産しその利益を掠め、いやいや、あやかる。

 気づいた時には度を越した小遣い稼ぎになってしまっていた。

 おかげで紙面上はすごく潤ってしまい、額を見て邪悪な気持ちが湧いてしまう。

 食る物や服に、色々とヴァルにたかっ……援助してもらえるおかげで不自由していない、何かにつけて面倒事はおしつけられるが。

 身の丈に合わない膨れる金銭は毒にこそなれ。

 散財というわけではないが適度にオルト名義で使っている。

 が、それでも十分に余り今更に金銭を過剰に必要とはしていない。


 「孤児院など放っておけば、もっと潤いましょうに」

 ルルイエには悪意なく。

 「…ヴァルにも伊達や酔狂だと言われるが、あれはあれで投資なんじゃがな…子が大人になる頃には面白い事が起きるかも、な」

 茶を飲み干し、おかわりを催促する。

 ルルイエはすかさずポットから新しい茶をそそぐ。

 「コア様、お茶ばかりは…何か食べますか?」

 「……いや、茶でいい」

 コアはルルの言葉をやんわりと断る。


 外法の反動、副作用といえる。

 いまいち食欲が湧かない。

 あれから黒い魔力は完全に体から抜けきっているものの浸食された身はまだ本調子ではない。

 代償大きく、発動中も命を賭のテーブルに乗せ続けるような、それでいて卑近な技。

 全く度し難い。

 

 甘い茶を一口。

 「ほらわしも年頃の『男の子』じゃからなぁ、わかるか?」

 「子供はよく食べるべきですよ、食べられる者は特に」

 反論の余地もない。

 「…では、軽いものでも頼む」

 「はい♪」

 ルルはこれでいて結構な世話焼きらしい。

 平穏だ。

 平和で穏やかな情景。

 


 これで階下で轟音と怒号が響いていなければ最高だった。



 「ルルイエさん! 殴り込みです!!」

 「あ゛ぁ? そんな事くらいお前らでなんとかしろボケが!!」

 部屋に入ってきた若い者にルルイエさんが激をとばす。

 ついでに皿も飛ぶし拳も飛んだ。

 先程までのおっとりさはどこへやら。

 「コア様がお食事中だ!!」

 ルルイエの凍てつく視線と罵詈雑言、若い衆は固まる。

 「あー、まぁ、わしは大丈夫じゃから…その、なんだ…乗り込んできたのはどんな奴だ?」

 このご時世、オルトに対して豪気な事だ。

 「えっ、あ、こう黒い外套を羽織った蒼い目の」

 「――もしかして、白髪の獣人か?」

 「あっ、はい、これが滅法強くてネエさん達もどんどん沈められていって、もうすぐそこまで来て、ブォオヘッ!!」

 戸口に立っていた若衆、女が横に飛ばされる。

 「…ここから匂いがするな」

 シェスリーがコアの視線の先にあらわれる。

 「……お主は本当に気持ちいいくらい馬鹿よな」

 コアは呆れた口調で言い放った。

 「ふっ、よく言われる」

 シェスリーは快活に笑い全く悪びれず言った。

 なんというか憎めない妙な愛嬌というか、奇怪な魅力がそこにある。

 「ルル、これはわしの知り合いじゃ…少し二人きりで話をさせてくれ」

 「コア様!?」

 かちこんできた賊と二人きりなど到底看過出来る事ではない。

 「沈められた者の介抱を頼むルル。シェスリー、殺してはいないな?」

 「…不殺を気取るつもりもないが格下をやるほど飢えてもいない」

 「あ? 格下だと」

 ルルイエさんが凄く怖いです。

 シェスリーの眼前にルルイエが迫る、その姿はどこからどう見ても喧嘩を売ってるチンピラだった。

 上から下まで交互に睨めつける。

 両の手は隠し武器の刃物にそれとなくかかり。

 「ふん、弱い奴ほど吠えると言うが」

 「……刻まれて死ね」


 ヤメロ


 冷えた、それでいてのしかかるような圧のこもったコアの声が場に響く。

 静止する間。

 あと数瞬遅れれば刃は抜かれ拳は打たれた。

 ルルイエには知らぬ事とはいえシェスリーに並の刃は通らない、このままいけばむざむざ一人を沈められる事になるのは自明。

 さすがに上層の構成員を沈められるのは冗談ではすまされない。

 「双方、おさめて貰えると嬉しい」

 コアが頭を下げ伏せる。

 「ッッッ!!」

 しばらく後にしぶしぶ、隠刃にかかる手を離すルルイエ。

 「わかりました……何かあればすぐにお呼び下さい」

 シェスリーに対し警戒のガン飛ばしを続けながら舌打ち、ルルイエは退室。

 「狂犬かと思いきやよい従者(狗)ね」

 副音声で何か聞こえてきた気もするがあえて無視する。

 シェスリーは我が物顔で部屋を横切り、コアの対面のソファーに許可もなく座りこむ。

 「…おぬしの図太さというか馬鹿さ加減にほとほと感心する」

 「ふっ、褒めるな」

 「褒めとらんわ」

 頭が痛い。

 「そもそも下の奴らが悪いのよ、コアはいるか?と聞いても馬鹿にしたような態度ばかり、おまけに明確な害意をもって掴みかかられるとなると体も勝手に動く、あとは流れと勢いね、まぁ些事よ、気にするな」

 傍若無人、大雑把、良く言えば天衣無縫といえるのかもしれない。

 まことにもってやりづらい。

 「何か用向きがあるようじゃが、まずは受け取れ」

 コアは机上にある金の入った布袋をシェスリー側に寄越す。

 「巨狼を倒した報償じゃ、ぬしに渡すとなると自作自演も甚だしいがこれを機につまらない仕事で拳を穢す事はするな、それが渡す条件の一つ」

 コアはシェスリーの瞳をまっすぐに見つめる

 「流派の名を汚す事なかれ。というのは何処も共通だろうと思うが? 以前にわしに師と派を問うておきながら自分は名乗らず……自覚はあるんじゃろ」

 茶に口をつけるコア。

 「…痛いところをついてくる」

 シェスリーは渋面になる。

 「自覚あるだけマシじゃが後戻りできる内に引き返せ、あの狼はぬしのあったかもしれない先よ」

 沈黙が場を流れる。

 「説教くさくなってしまったな。まぁ些事だ、気にするな?」

 コアの笑顔、言葉にますます渋面になるシェスリー。

 「……」

 「くっくっくっ」

 場に毒花が一つ咲く。

 「拳の才子も舌戦はまだまだとみえるなぁ」

 「…うるさい……ほかの条件はなに」

 むすっとした顔。

 そんな顔も出来るのかとかコアは思わず観察してしまう。

 「あの場で問いただしても良かったのじゃが聞きたいのは……おぬしの雇い主の事かの」

 コアとシェスリーの視線がかち合う。

 「……」

 「まぁ別に話したくないならそれはそれでよいがな」

 ソファーにもたれかかり、ため息まじりのコアの言葉に。

 「どうして」

 「ん?」

 「どうして、そこまで良くしてもらえるのかがわからない、不気味」

 シェスリーは揺らぐことなく。

 「ただのえこひいきよ」

 「えこひいき?」

 「そう、わしにとって有用だと思う者、面白いと思った者、殺すに惜しいと思った者、これはただの贔屓じゃよ、ただそれだけ」

 なんでもない事のようにコアは言葉を吐く。

 「なんじゃ? 何かもっとそれらしい理由でも欲しかったか? では、運が良かった。というのはどうじゃ」

 「運…」

 「理由が欲しいなら適当に見繕ってやるぞ、おぬしなど殺す価値もなかった、生かしておいてもさほどに脅威を感じない、ただ暇つぶしに弄んでいるというのはどうじゃ?」

 首を少しかしげ挑発的とも言える言葉。

 「!!」

 奥歯を噛みしめる。

 たしかに終盤、圧倒的な差でやり返された。

 それを思えばこそ、その言はあながち間違いとも感じられない。

 「まぁ考え込むな、てきとーに幸運くらいに思っておけばよかろうよ」

 コアはまた一口、茶を含む。


 女の腹部に剣を突き刺す最中の事をコアは思い出す。

 あの刹那、自分に何がおこるか、どうなるのか、全てシェスリーは把握していた。

 知っていてなお、この女はコアを見据え、叫ぶ事もなくただ見つめ笑った。

 それはただの諦念ではない。

 自己を殺すに至るほどの兇手を前にしてなお、楽しみ、笑い、そのまま逝こうとする。

 対人、技比べ、武とは突き詰めて言えば命のやりとりだ。

 が、これもまたコアの弱点だろうか、コアはこういう馬鹿を殺す事がどうにも出来ない。

 殺したくない、かまいたくすらなる。

 その弱点、嗜好をわざわざ相手に教えてやるほどに親切でもないが。

 

 「で、喋ってくれると手間がなくて助かるんじゃが」

 コアの言葉を断る事は可能だろうか。

 否といえばそれまでで追求する事もなくあっさり引き下がってくれるかもしれない、いや引き下がってくれるだろう。

 追求に対し必死さ、切羽詰まったものがまるで感じられない。

 「――喋らんというのならそれでもかまわん、金もやる、ただそんな小賢しい事をする奴を相手にわしはこれから一切興味をもたん」


 シェスリーはゾッとした。

 コアの目がもう何も写さず、路傍の石を見るような冷たさも何もない、無を宿していた。

 自身と競り合う、打ち勝つこの相手に興味をもたれない、一切、どうでもいいとすら思われない。

 それはシェスリーが今まで生きてきて味わった事のない感覚、恐怖だった。

 暗い道で親とはぐれてしまいそうな、幼子のような心細い気持ち。

 片恋の相手に突然いなくなられる不安。

 それらがない交ぜになったような衝撃。

 

 「……い、依頼主の事はあたしもよくわからないというのが本当」

 喉がひりつく、しかし声はなぜか出てしてしまう。

 「……」

 「常に顔を隠していたし金払いは良かったけど両替商をいくつも通してだった、辿るのはまず不可能とみていい」

 「つまらん話じゃな」

 「……でも獣人の鼻は騙しきれない、気をつけていたみたいだけど並みの相手ならまだしもあたしには嗅ぎ分けられる、あの臭いは」

 シェスリーはそこで言葉を区切り、もったいをつける。ここだけの秘密を喋るかのようにひそやかに声を潜め、

 「騎士よ」

 シェスリーはそれだけ言うと指先を窓へと向ける。

 「あそこらへんの騎士と同じ臭いがしたわ」

 その指先は向かいの建物を指す。

 いや、それさえも向こうの先、十三番街を抜け出て遥か先、貴族階級の住まう若い区画さえ抜けて王都中心を指しているのだ。

 その事実に気づいた時、その指先の風景を幻視しコアは窓を凝視、思わず立ち上がってしまった。

 「まさか、王城か!!」

 「さぁ?」

 シェスリーは言葉を濁す。

 「そういう風に思わせるっていう手もあるから、でもこんな話どこでもある事、別段に珍しくもない」

 シェスリーは至って冷静だがコアの方はおよそ平静ではいられない。

 予想外の相手が出てきた、言うなら国一番の暴力者に目をつけられたようなものだ。

 この無法の街が厄介になっている、邪魔くさいというのはわかる。

 が、何故いまになって、ここまで露骨な排除をしたがる。

 いや、ゆくゆくはそうなるオルトの一強を嫌ったのか。

 王都の拡充計画でもあるのか。

 ここ十三番街は正確には十三の名前を冠した正式な区画街ではない。

 大戦後、本来は王都郊外に自然発生的に生まれた貧民窟、食い扶持を求めて王都に出てきたもののそこに住めなかった者、あぶれた者の掃きだめ。

 混乱期にあってそれがいつしか街の様相を持ち得、ある種の独立自治区の色が強い、強すぎる場。

 もし王都に正式な十三番街が出来ればこの街の者はここに十四番の名をつけられるだろう。

 近年は公然と貴族の利用すらあるこの街を王都の中心、ゼロ番街などとうそぶく声もある。

 そのような畏れ多い言を鑑みればそろそろ『掃除』すべきだと上が判断するのもしょうがないのかもしれない。

 「しかしこれが本当なら厄介にすぎる…」

 コアはぐったりと座り込む、ソファーの柔らかさや弾力も今の心境では忌々しい感触としか思えない。


 「これであなたが聞きたい事はあたしは喋った、今度はあたしの用を聞く…」

 「嫌じゃ」

 コアの先んじた即答。

 「え?」

 「ぬしの言いたい事は大体わかる、どうせ『再戦を!!』などと言うんじゃろ?」

 何もかも見通した、呆れたような声音。

 「ん、まぁ……」

 先んじて考えてる事、言わんとしている事を当てられてシェスリーとしてはなんともバツが悪い。

 「今やっても結果は変わらん、何より勝ったところでこちらに何の益もない、まことに馬鹿らしい」

 すげなく返す。

 「ぐっ」


 シェスリーとの闘争は楽しくないわけではないが外法が必要になる、そうなると楽しさよりも苦しさの方が遥かに勝る、なんとしても避けたい話だ。

 「世界は広い、わしなんかに関わってないでもっと正統な強者と立ち会って技比べでもしてるがよい」

 「……」

 「よせ、妙な殺気を出すな、わしはやらんぞ、何より戸の外にいるルル達がやってくるぞ」

 内心これにはコアも焦る。

 こんな所、密室で拳鬼と乱戦など悪夢以外のなにものでもない。

 「…どうしたらやってくれる?」

 シェスリーは静かに問う。

 その目はギラギラとしていて獲物を前にお預けをくらっている獣だ。

 「自身の獣を御する事も出来ない未熟者とはせん! 十年早い」

 コアはばっさり切り捨てた。

 「……そう、わかった」

 シェスリーは立ち上がり、窓の方へ歩む。

 窓を開け放ち、新鮮な空気が部屋に流れ込む。


 「あたしの名はシェスリー、流派は東山古派六門六花拳、師は大猿のハイレン」

 突然、風吹く窓を背にシェスリーはコアに向き合い、掌と拳と合わせ礼をとり、語る。

 非常に嫌な予感がした。

 「この身に宿す加護は『白竜』」

 謳うように朗々と宣言する。


 竜?

 そもそも竜というのは獣の分類でいいのか?

 

 突然の宣言にコアの思考が若干の混乱をきたす。

 加えて言うなら嫌な予感がさっきから止まらない。

 

 「コア兄の先程の言葉しかと刻んだ、自身の獣を見事に御し十年の後にまたまみえましょう」

 この馬鹿、よりにもよって妙な所で知恵を出した。

 「まさか一度言った事を撤回などしませんよね?」

 これにはコアは言葉が出ない。

 揚げ足とりの如き言いがかりにも等しいが、武人が礼をとり自らの流派、師を出し、獣人がいまだ相手には不明な自身の手の内、加護までばらしたのだ。

 断れる雰囲気ではない。

 「お前は~~ッッッ」

 コアもこれには流石に思う事がある。

 舌戦はまだまだなどと何故思った。

 間違えてはいけない場面では絶対に間違えず、自身の目的を必ず達成する、白竜のシェスリーとはそういう嫌な女。


 「では、しばしの別れ」


 窓枠に足をかけ、コアが制止する間もなく飛び去る。

 その顔、最後に一瞬見えた笑みは悪戯が成功した童のようにも、これから先にあるであろう獲物を前に舌なめずりする悪女にも見えた。

 どちらだったのか今のコアにはもう確かめるすべはない。

 竜の脚力を宿したシェスリーは地に落ちる事なく向かいの建物に、そこからさらに飛んで何処かへと消え去った。

 夢のように、幻のように。


 ここまでの騒動を思えば来た時のように出入り口からのうのうと帰る事は不可能であり窓から出るというのは正しい。

 シェスリーほどの武なら向かってくる相手を全て黙らせる事も可能ではあるだろうが、それをしないのは彼女なりの気遣いかもしれない。


 「厄介な女に目をつけられた、気に入られた気がする…」

 気がするではなく、実際にそうなのだ。

 だが今のコアにはそれくらいの現実逃避はしょうがない。

 あの異常な身体能力と硬い鱗、なるほど竜という言葉が嘘とも思えない。

 むしろ嫌な真実味すらある。

 順当にいって十年後に竜と斬り合い、殴り合いする羽目になるのかと思うと死刑宣告に近い。

 最初から全力全快の外法を用いてやりあうしかないが、現状のままのあれの練度、持続時間では初撃で仕留めきれずに長期戦ともなれば確実に自滅、負ける。

 そしてこの場合の負けは死と同義だと思ってよい。

 あと欲を言うなら。

 「……竜を斬れる剣ってどこかに売っているのか?」

 ボロボロになった軟剣を思い出しため息が出る。

 十年後、あの鱗が今よりも柔らかいという事はあるまい。


 「あぁ――嫌じゃ嫌じゃ!!」


 ソファーに埋もれながらコアはルルイエが様子を窺いに来るまで大人げなく愚痴を吐き続けた。

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