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第四章 絶叫
 世間話に花を咲かせながら更に進み、そろそろまた休憩かな、と思う頃に目の前の通路が突然途切れた。
「え?」
 秋留が思わず疑問の声を発する。
「いやいや、行き止まりのはずはない」
 俺は目の前の通路をくまなく調べた。右下に小さなボタンを見つけた。おそらく、目の前の偽物の壁を開くための仕掛けだろう。
 仲間に確認する事なくそのボタンを押すと、音も無く目の前の壁が左右に開いていった。
 壁の向こうには通路と同じ位の広さの部屋。
 その真ん中には二本の線路と、それぞれの線路の上に木製の小さめなトロッコが一台ずつあった。
「おお! これはまさか〜」
 嬉しそうに秋留はトロッコに近づく。
 ダンジョンにありがちなトロッコ。絶叫物が大好きな秋留には溜まらない一品に違いない。
 俺は両方のトロッコと線路を調べたが特に異常は見当たらなかった。
 線路の先は急傾斜になっていて、その先は真っ暗な穴が口を開けて待っている。
「誰がどっちに乗るんじゃ?」
 ジェットが不安そうに尋ねる。あまり絶叫物は好きではないのかもしれない。そもそもお年寄りに絶叫物は禁物だろう。万が一、心臓が止まったら只事では済まない。
「線路の先が同じ部屋に繋がっているとは限らないし。慎重にメンバーは分けた方が良さそうだね」
 トロッコに乗りたくてウズウズしている秋留が冷静に答える。さすが我らの頭脳。今はアドレナリンが出まくってそうだが。
「とりあえず、石投げてみよう」
 俺は足元に転がっていた石を左の線路の先に放り投げてみた。
 石はコロコロと音を立ててすぐに止まる。一応地面はあるし、急傾斜ではないようだ。
 石をもう一つ拾って右の線路の先にも投げてみる。暫く落下してからコロコロンと小さな音が聞こえる。
「とりあえず両方とも穴を入ってすぐに御陀仏という事は無さそうだな。トロッコの大きさからいって、三人ずつ分かれた方が良い……」
 俺は全員に説明する。
 気づくと、秋留は既に右のトロッコの先頭に座り、しっかりと前方を睨みつけていた。
「途中で死んだりしないじゃろうな?」
 ビクビクしながら、死人のジェットが言う。ジェットはそれ以上死ねないから安心しろ。
「この洞窟を作った奴は罠には必ず抜け道を作ってきている。今回も下手をしなければ死なないと思うぞ」
 俺の台詞にジェットも少し安心したようだ。
「とりあえず、わしは左のトロッコに乗らせてもらいたいですな」
 俺の放り投げた石の音を聞いていたのだろう。傾斜の少ない方をジェットは選んだ。
「そうすると、俺は秋留と同じトロッコになるかな」
 理由を述べずにさりげなく秋留と同じトロッコに乗る。
「ちょっとブレイブ! ちゃんと考えてトロッコに乗っているの?」
 秋留が振り向いて言う。「俺も絶叫物大好き」という一言に秋留は黙って再び穴の奥を睨み始めた。
「戦力的に考えて、俺がブレイブの後ろに乗るかな。クロノとシャインは一緒の方が強いし」
 リーダーのカリューだけが唯一戦いの事を気にしているようだ。まぁ、こいつも度胸はあるだろうから、右のトロッコでも心配ないだろう。
 クロノとシャインは仲良しのジェットの前に座る。勿論、ジェットは一番後ろの座席に座っていた。
「じゃあ、それぞれ出発するか!」
 俺はネカーとネマーをそれぞれの線路の後方にあるレバーに向けて構える。これが出発用のスイッチである事は確認済みだ。
「また生きて会えると良いな。しゅっぱ〜っつ!」
 俺の台詞に涙眼になったジェットと黒猫二匹が乗ったトロッコが先に出発した。
 勢い良く傾斜を降りてったトロッコからジェットの悲痛な叫び声とクロノとシャインの楽しそうな声が聞こえてくる。
 やがて穴の奥に進んでいったのか、三人の喜怒哀楽にとんだ声は聞こえなくなった。
「ブレイブ! 私達も早く出発しよ!」
 秋留が嬉しそうに言う。
 俺は「おう」と答えるとネマーのトリガを引いて、トロッコを出発させた。
 目の前の傾斜にトロッコが吸い込まれ、一気に加速する。
「ウオオオオン!」
 後ろではカリューが獣の雄叫びを上げている。
 前からは秋留の楽しそうな笑い声。俺は左右の手すりに必死にしがみついた。
 一体、何度の傾斜なんだろう。落下しているんではないだろうかと錯覚してしまう。
 周りの景色があっという間に通り過ぎていく。さすがにちょっと怖い。前に座った秋留はこれでもかという程に楽しそうだ。
 線路の傾斜が少し緩やかになったと思うと右に急カーブ、少し落ち着いたかと思うと左に急カーブ。さっき食べた干し肉が出てきそうだ。
「きゃはははは」
 いつもクールな秋留の笑いとは思えない。相当、絶叫物が好きに違いない。
 暫く上ったり下ったりを繰り返し、今は平坦な道をトロッコは進んでいる。
「何か落ち着いちゃったなぁ。つまんないなぁ」
 残念そうに辺りをキョロキョロしながら秋留が言う。
「この洞窟の製作者は、俺達を飽きさせないように色々仕掛けを用意しているみたいだぞ」
 通路の先に不気味な風切り音を聞いた俺はネカーとネマーを構えた。それにならって秋留も杖を構える。飛び道具の無いカリューも俺の後ろで一応剣を構えているようだ。
 目の前を横切る巨大な鎌。それが十メートおき位にブオンブオンと音を立てて揺れている。
「このトロッコにブレーキとかスピードアップするような機能はついてなかったぞ」
 ネカーとネマーから発した硬貨がむなしく鎌に弾かれるのを見ながら言う。
「カリュー、トロッコから手を出せば、構えている剣で地面に届くよね?」
 秋留が冷静に判断して言う。つまりカリューの剣でブレーキとスピードアップをやらせようという訳か。
 秋留の考えがカリューにも伝わったらしく、大鎌の目の前で地面に剣を突き立ててトロッコのスピードを落とす。
「スピードアップ!」
 大鎌が通り過ぎた瞬間に発した俺の声と同時に、カリューが剣で地面を引っかきトロッコを加速させる。
 カリューの地道な作業を繰り返し、何とか大鎌のトラップを抜けた。
 抜けたと同時に天井が開き、後方に巨大な鉄球が姿を現した。
「微妙な傾斜になってるから、あの鉄球、こっちに転がってくるな……」
 後ろを振り返りつつ落ち着いて解説する。
 いい加減、洞窟の数々のトラップに慣れてきたのか、何事にも驚かなくなってきている。
 無駄だと知りつつも一応、硬貨をぶっ放してみたが、予想通り巨大な鉄球に弾かれた。
「頑張って、また漕ぐかぁ!」
 カリューが再び地面を剣で引っかく。少しは加速したが、後方の鉄球はどんどんスピードを上げてきている。
「秋留、何か良い魔法ないのか?」
 前方を眺め秋留に尋ねる。
「トロッコがせまくて、杖が振れないんだよねぇ。簡単な魔法なら唱えられるけど、あの鉄球には効果なさそうだよ」
 う〜ん、どうしよう。俺の真後ろではカリューが必死に地面を引っかいてトロッコのスピードを上げている。
「いい加減、ちょっと焦ろうぜ!」
 俺達の落ち着いた会話に危機感を持ったのかカリューが怒鳴った。確かにそろそろ真剣に考えないと危険な気がする。
 俺はこの鉄球がやっと通れるような狭い通路に何かないか見渡した。
 待てよ? やっと通れる……?
 俺はネカーとネマーで左前方の少し脆そうな壁目掛けて硬貨をぶっ放す。俺の予想通りに壁が大きく崩れた。危うく線路にまで砕けた岩が来そうになって少し焦ったが……。
 俺達のトロッコは崩した壁の脇を何の問題もなく通り抜けた。一方、巨大な鉄球は隙間の無い通路に現れた突然の岩によって行く手を阻まれた。
「さすが、ブレイブ!」
 後方で鉄球が止まるのを確認して秋留が俺の事を褒めた。
 暫く進むと線路の右側に鉄球が丁度収まりそうな大きさの穴が開いているのが見えた。きっとここまで頑張って逃げ切れば、鉄球はこの穴に落ちていくのだろう。
「ねぇ、あれなんだろう?」
 秋留が前方の線路の間に設置されている不気味な装置を指差して言う。はて? 何だろう?
 試しに俺は不気味な装置目掛けて、硬貨を放った。
 線路の間がパカッと開いて突風が噴出され、俺の放った硬貨が装置前方の急な上り斜面の方へと消えていく。どうやら加速装置の様なものらしい。
「次は上りみたいだね」
 硬貨が凄い勢いで消えていくのを見て動揺する事もなく、秋留が嬉しそうに言った。
「こ、このトロッコ、いつになったら終着点に着くんだ?」
 カリューが後ろで愚痴っている。確かにさっきから肩に力が入り続けているせいで、いい加減疲れてきた。
 とうとう加速装置の場所をトロッコが通り過ぎた。顔面が後ろに引っ張られるような圧迫感を伴い、俺達の乗るトロッコが勢い良く急な上り坂を上っていく。後ろからはカリューの雄叫びが聞こえた。
「う、うおお……凄い勢いだし、な、何か……」
 あまりのトロッコのスピードに身体が流されそうになるのを必死に堪えて言う。この坂、今や垂直な壁を上っている。いや、さかさま?
「うきゃきゃ〜〜」
「うわぁあああああ」
「ウオオオオオンッ」
 なんとトロッコはグルリと一回転した。そしてその勢いのまま、急な斜面を再び下っていく。
「きゃはは〜、楽しかったね」
 秋留が元気に尋ねて来るが、俺はあまりのショックに返事が出来なかった。後ろではカリューが気を失っているようだ。
 一回転した余韻がまだ残っている状態で次は通路の両端の明かりが一斉に灯る。お陰で大分先まで見渡せるようになった。
「分かれ道!」
 秋留の後ろから前方を覗いて咄嗟にネカーとネマーを構える。
 前方で線路が二手に分かれいているのだ。その中間には切り替えスイッチのようなものが見えた。
 状況を理解した俺はトリガを引いて、硬貨を切り替えスイッチに当てる。
 トロッコは分かれ道を左に進んでいく。
「右はどうなってたの?」
「壁に激突」
 既に次の分かれ道が見えていた俺は、秋留の質問に手早く答え、通路の先を確認する。
 そして素早くネカーのトリガを引いて切り替えスイッチに当てた。
 トロッコは線路の無くなっていた左ではなく、右の線路を走る。
 それにしても、これじゃあ神経の休まる暇がない。先ほどから極度の緊張の連続で意識が朦朧としてきていた。
「カッコいいよ、ブレイブ。その調子で頑張って〜」
 秋留の天使の呼び声で意識が一気にハッキリとした。俺が意識を失ったら、誰が秋留を守るんだ!
 俺は次々に切り替えスイッチを狙い、俺と秋留の乗るラブ・トロッコを導いていく。
「それにしても、こんな危険な罠が一杯のトロッコ、ジェット達は大丈夫かな?」
 分かれ道もなくなり、再び平坦な線路を走るトロッコの上で秋留が心配そうに言った。
「まぁ、クロノもシャインも一応盗賊だからな。何とかうまくやってるんじゃないかな?」
 あいつらの追跡能力を思い出して答える。しかしトロッコの上じゃあ追跡能力なんて意味ないかな。
 その時、俺は近くに別のトロッコの存在を感じた。水攻めの罠を作動させたこの洞窟の製作者か?
 一人考えていると、突然左側の壁がなくなり、その向こう側に別の線路が現れた。
「あ〜、秋留達だニャ〜」
 聞き覚えのある声が細い洞窟の中にコダマする。
「元気だった〜? ジェット大丈夫?」
 秋留が別トロッコに乗ったジェット達の事を心配して尋ねる。
「首やら腕が何回か無くなりましたが、何とか生きてるですじゃ〜」
 ジェットが怖い事を言う。やはりあの黒猫達の盗賊の腕じゃあ、トロッコを襲う数々の罠を超える事は出来なかったか。
「あ、お前ら進路間違えただろ?」
 俺はジェット達の乗るトロッコの前方を確認して言う。
「壁」
 ジェット達のトロッコからも良く見えるように、別線路の前方を指差して大声で言った。
「ぬああああ!」
『フニャーー!』
 ジェットの悲鳴とクロノとシャインのステレオの叫び声が洞窟内にコダマした。
「俺達の線路を歩いてついて来い〜! 分かれ道には目印つけとくから〜」
 ジェット達の乗るトロッコの破壊音に負けない様に声を張り上げる。頑張ってついて来いなー。
「じゃ、私達も先を急ごう」
 大してジェット達の事を心配していなさそうな秋留が言った。
 俺は早速分かれ道を確認すると、スイッチを切り替えた。そして後からついてくるだろうジェット達のために線路の上に硬貨を落としておく。
「今日はやけにお金の使いっぷりが良いね」
 俺が金袋から硬貨をネカーとネマーに詰め直しているのを見て秋留が言った。
「まぁね。たまにはさ〜」
 このカリューから拝借した金袋も大分軽くなってきたな、と心の中で呟く。当の本人は俺の後ろで相変わらず気を失っている。
 と突然、左頬の横を何かがかすめた。金袋の重さを確かめていたせいで、何がかすめたのか確認出来なかった。
「ふせろ!」
 俺は秋留の頭を押し下げて叫んだ。
「いっつぅ〜!」
 どうやら再び飛んできた何かにカリューの左肩が当たったようだ。カリューの左肩のアーマーが壊れ、青い毛並みの地肌が見える。
 進行方向とは逆に飛んでくるせいで、飛んできている物体が何なのか確認する事が出来ない。
 俺は狭いトロッコの中で立ち上がり、ネカーとネマーを構えた。揺れるトロッコの上でバランス良く立っていられるのも盗賊としての技能である。
 風を切る音を聞き、トリガを引いて硬貨をぶっ放す。トロッコの少し前方で鉱石の様な物が弾け飛んだ。
「この奥に何かいるな」
 次々に飛んでくる鉱石を弾きながらトロッコは奥を目指して進んでいく。この鉱石を飛ばしてくるのは、新手の罠だろうか?
 俺はネカーとネマーを乱射して線路の奥の暗闇を攻撃する。何か硬い物に当たって、硬貨が弾かれる音が聞こえると共に火花が散った。火花に照らされ、何者かの身体と途切れている線路が一瞬浮き上がった。
「カリュー! トロッコ止めてくれ! 線路が途切れてる!」
 俺が叫ぶとカリューは剣を両手で構えて地面に突き刺した。
「なにぃぃぃぃ!」
 思わず俺は大声を上げる。
 軽い破裂音と共にカリューの持っていた剣が真ん中から折れたからだ。
 その時、秋留が立ち上がりトロッコから飛び降りた。
「なにぃぃぃぃ!」
 再び俺は大声を上げる。この速度のトロッコから飛び降りたら無事では済まないぞ!
「水の牢獄により全ての者を包み込み、全ての者に残酷なる死を……ウォータープリズン!」
 秋留は宙を舞う天使の様に優雅に、そして美しく流れる水の様に呪文を唱える。
 秋留の言葉と共に俺と獣人の乗るトロッコが水に包まれた。
 確かにこれならモンスターやら壁にぶつかっても、ある程度は衝撃が吸収されるかもしれない。しかし、これじゃあ息が出来ないぞ、秋留!
 水の中から秋留の姿を確認すると、背中の真っ赤なマントが鋭い爪で地面に突き刺さって秋留の身体を支えていた。あのマント、本当に便利だな。俺も欲しいくらいだ。
 秋留の姿に見とれている間に、水に包まれたトロッコが銀色の身体をしたモンスターに激突した。
 大きな水泡が破裂すると同時にトロッコがバラバラとなり、俺とカリューは宙に投げ出された。しかし二人とも難なく宙で一回転し、無事に地面に着地する。
 暫くの間呼吸が出来なかったため、またしても頭が朦朧としている。
「秋留! もう少し考えて魔法唱えろよな!」
 もう呼吸が整ったのかカリューが振り返り、秋留に怒鳴っている。
「急だったから、他に魔法が思いつかなかったんだよ。それに助かったんだから良いでしょ」
 秋留がこちらに近づきながら答える。
「それよりも……」
 俺はネカーとネマーを構えて立ち上がる。目の前には銀色の身体をした巨大なモンスター。こいつは……。
「ダグ」
 俺の台詞に他の二人も頷く。
 あの秋留二人分位の高さもある巨大なリスの様なモンスターはダグ。以前、魔族の鍛冶屋が飼っていた鉱石を食べて、凄い勢いで吐き出すモンスターだ。しかしあの時とは何かが違う。
「銀色のまま動いてるね」
 秋留が冷静に判断して解説した。
 そう、以前出会ったダグは息を止めている間は緑の毛並みから全身銀色に変わり、全ての攻撃を弾いていた。しかし、目の前にいるダグは銀色の身体をしたまま動き周り、普通に呼吸もしているようだ。
 俺は試しにダグ目掛けてネカーとネマーを乱射したが、全て銀色の身体に弾かれた。
 ニヤリと笑ったダグの口から鉱石の弾丸が放たれる。敵の攻撃は見えているのだが、朦朧とした身体が思うように動かせず、鉱石が肩をかすった。
「ウオオオン」
 カリューが四つ足で地面を蹴り、ダグ目指して飛び掛る。獣人が結構板についてきたな。
 ダグの口から放たれる鉱石を野生的な勘で避け、ダグの腹に爪を突き立てる。
「いてててて」
 ダグの身体から飛びずさりカリューは体勢を立て直した。
「こいつの身体、硬いぞ」
 間抜けなカリューの台詞に俺も秋留もガックリとする。そんな事、知ってるって。
「じゃあ次、私行くね」
 そう言って秋留は一歩前に出て呪文を唱え始める。
「水の牢獄により全ての者を包み込み、全ての者に残酷なる死を……」
 あれ? さっき聞いた呪文と同じだ。あのモンスターには効くのだろうか?
「ウォータープリズン!」
 銀色のダグの身体を水が包み込んだ。
 ダグはそんなのお構いなしに、秋留目掛けて口から鉱石を放った。俺は咄嗟にネカーをぶっ放し、鉱石を破壊する。
「さんきゅ、ブレイブ」
 秋留の唱えた魔法はダグに効いてなさそうなのだが大丈夫だろうか。
 俺の予想とは裏腹に暫くすると、ダグが苦しみだした。
「いくら硬くても生物だからね。呼吸が出来なければあの通りよ」
 その魔法を俺達はクッション代わりに使われていたと思うとゾッとする。
「大丈夫だよ。ある程度の素早さがあれば簡単に出れちゃうような魔法だから」
 俺の心を読んだのか、秋留がそう付け加えた。
 俺達の見てる前でダグは息絶えた。銀色の身体がフヨフヨと水泡の中を漂っている。
「さて、行き止まりだけど何かありそう?」
 秋留に言われて、俺は気を取り直し辺りの壁を探索した。
 程なくして怪しげなスイッチを発見し、問題ない事を確認して押してみる。
 音も無く近くの壁が左右に開いた。