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群青

作者: 桃花

目の前には一枚の絵がある。そう感じたのはいつの頃からだっただろう。

学校から見下ろした故郷。校舎から見える山々や海峡。その時々で、見せてくれる顔が違う自然。それを見ながら人間関係で疲れた私は癒されていた

ふと、この絵を残したい。その衝動からなけなしの小遣いで買ったスケッチブックを片手に写していくいく日々が続く。

雲と雲の間柄からこぼれ落ちる光の橋。向こう側だけ晴れている海峡や晴天で向こう側まではっきり見えている風景。四季折々見せてくれるそれを写し取っていく。周りには変人とバカにされようと気にせずに。

夜はその絵に色をつけていく。色をつけられるのを待っているスケッチ達。一つ一つに心を込めて書いた時がその絵で再現できたら良いと思いながら完成させていく。

今日も今日とて変わらずにスケッチをしたり色をつけたりするのだが、場所が違う。

父の家は、年に数度何かあったりする毎に親族会議をする。

前回は、私の絵の取扱について集まった。決まったことは気に入った人にプレゼントは可。ただし上手に描けてあげる人がいない場合は本家が売買・管理することになった。何故に絵が?と今でも思うも、稀にいくら積んでも良いといってくる人が要るらしく(プレゼントした人談)困ったので、親族会議に上げたのだそうだ。

今回は、年始めの挨拶。直ぐに終わらせて飲み会に移行したので人が来ない場所で、色をつけていく。いつもは兄か姉が帰るわよと声を掛けてくれるも今日は無く、仕方がないので母の元に帰宅を促しに行くと何故かさっきまで飲み会だった場所が、討論の場になっていた。

「なんかあったの?」

「あ~。緊急議題があったみたいよ。今日はお泊まり見たいね」と困った顔をしながらも、お泊まりになった。

分家の分家。かなり遠い親戚?みたいな我が家も討論参加になってしまったために会議が終わるまで足止めを食らった。直ぐに帰れるものだと想い泊まる準備がしていないため、下着やパジャマを買い出しに行かねばならなくなった。

家族と一緒に泊まる部屋などなく、子供たちは男女別にして雑魚寝。知らない親戚達に囲まれながら微妙に緊張するため現実逃避するために色塗りに夢中になる。

隣に誰か座るっている。いつの間に?と思うが直ぐに忘れ絵に向かう。

寝る時間だよ。と年長組にいわれ布団に入ろうとすると

「何描いてたの」と聞かれる。

「別に風景だよ。見ても楽しくないよ」とその日は寝た。

朝起きると昨日の子が勝手に絵を見ていた。無言でスケッチブックを取り上げる。

「なにするのよ!!」と声をあげるも無視。布団を上げて朝食を取りにいく。

台所では母さん達が忙しそうにしている。

「おはようございます」と挨拶して勝手にご飯を盛り付けテーブルにいく。起きた順に食べ下げていかなくては台所が回らない。姉がいたので隣に座りながらさっきの出来事を聞いてもらう。

「災難だったね」とそっけなく返答されるも黙っているより楽になる。食後の一服をソファーで飲みながら、再従兄弟の海斗を探す。

海斗とは兄が仲良しでよく面倒臭い事があると助けてくれたりする。今度、梅の絵を描いてと頼まれていたのが出来上がったのでプレゼントしようと思っていたのだ。

兄と一緒にご飯を食べに来たのを確認。食べ終わりを確認したら声をかけようとスタンバイする。

「どうした?」とチラチラ見ていたのがばれていたようで声をかけられる。

「これあげる」と梅と桜のを一つづつ手渡しする。

「なんだ?」と渡された絵を見た海斗は驚いている。

「良いのか2つも」

「良いの。桜は連れて貰ったお礼。梅は前に言ってたから」と伝えるとありがとうと笑顔で言われる。うん。あげて良かった。と喜んでいると兄が横で絵を撮しながら良かったなと言っている。

絵のナンバーを管理しているのは兄で、譲渡した絵や本家に渡した絵などの写真保存してくれている。

「そろそろ桜の時期だな~」とそれを見ていた絵を管理してくれている弘文さんが話に加わってきた。

「桜。入学式とかの時期だよね」と去年連れて行って貰った公園のバージョンを出して貰う。

SDカードに保存している写真を見ながら何れを売るか考えている弘文さん。売りたく無いのを除いて貰うようお願いしておく。

「じゃ。ダメなの以外で数点売買しておくから」と去っていく。本家に保管している絵を画商に渡すのであろう。携帯電話で激しくやり取りをしている。

ふと、今朝の事を兄達に話せば良かったなと昼頃縁側で色づけしているときに思い出す。「あ。居た、居た」と声がするが知らない声。誰?と見てみると本家跡取りを連れながら今朝の子が近づいてくる。

うわ~絶対に面倒臭い事だと思いながら笑顔で近づいてくる子達を見ていた。

「さっき話した子だよ」と自分の手柄見たいに話しているが、あんたの名前知らんよ私。

「誰ですか?用が無いなら邪魔」と言い放ち絵に向かう。

「な。なんなの!!今朝から!!」と大声をあげるため近くに居る顔見知りにSOSを出す。

近くに居た叔父さんが仲介に入ってくれて、煩い子から離してくれた。

「で?何があったのかな?」と弁護士の様に(本職だけどね)聞いてくれたので、今朝の事。さっきの事を説明。「人見知りもほどほどにしなさい」と苦笑しながらもわかってくれた。相手方にも話を聞く為に後ろにいる彼女らに振り向いている叔父さんを視界に入れながら庭を眺める。

ここの桜も綺麗なんだよねと思いながら今度桜の時期におじましたら写させて貰おうと考えていると人聞きならない言葉が…

「だって、ぼっちで絵を描いてるんだもん声をかけてあげたら無視するんだもん。朝に何描いてたのかなってきになったから見てたら突然取り上げるからムカついて」と言い出した。誰が声をかけてくれといったよ。誰が!ありがた迷惑と言うか自己中と言うか…

私もだけどね…と眉間にシワを寄せているのを見た叔父さんは笑い出し「わかった。わかった」と頭を撫でてくれる。

「未来ちゃん勝手に人のものを見たのはダメだよ。わかったかな」と言い聞かせている叔父さん(いや。16才なんだからわかっているよね?つか、未来っつ言うんだ。始めて始めて知った)

「三智もわかっていると思うけど、無視・無言は誤解を招くからね」といわれ頷く。

「じゃ。問題ないね。解散~」と軽く言っている。また、ひとの来ない場所に行くかと移動しようとすると

「絵を見せてよ」と言い寄ってくる。

助けろ。と叔父さんの服を掴む。

「あ~。嫌だってさ。諦めなさい。良いこと教えてあげるから」といっている。多分ここに飾ってある絵を教えてあげているんだろう。

叔父さんに感謝の一礼をして移動する。これが騒ぎのもととなるとは知らずに…数ヶ月後、家族と団らんしていた時にテレビに映った物に驚いた。テレビには、噂の画家は!!と題してあり映された絵は夕暮れ

画家と紹介されていたのはあの時彼女…

「あれ、三智のだよね」と言われ頷く。去年の夏に夕暮れが美しくて写し取った一枚だ。急いで弘文さんに確認したところまだ売っていないもの。誰かにプレゼントしていない奴だから間違えていないはずと兄を見ると

「譲渡してないやつだ」との事。だったらなんで…と呆然としていると電話がかかる弘文さんからで、本家が動くようだ。絵自体は本家に保管されていることが確認されているようで、多分写真をとりコピーしたんだろうとのことだ。画面に映っている絵は何処と無く薄っぺらだ…

「こんなの私が写し取った大切な風景じゃない」と悲しみさえ浮かんでくる。

「本家が動いたんだどうにかしてくれるはずだ。じゃないと管理を任せた意味がない」と父が慰めてくれる

1週間後、本家に呼び出しを貰い行くと驚きを禁じ得ない事を言い出した。

曰、今回の件から“絵”は彼女の物とする。と言うこと。

そっかぁ~。そういう風にするんだ。と内心ガッカリしながら主張だけはきちんとさせてもらう。

「良いですよ。但し、私の手元にある物は破棄します。今後は一切の活動をしません」そう言いお茶を呑み退室する。

私の言葉に驚いている跡取り。だろうなと言う顔の当主。まだまだ甘いなと思っていると先ほど服用した遅速成の毒が回り始める。全身が熱湯をかけられたように熱い。呼吸が…


まぶしいと目を覚ましたら病院でした。やると思っていたらしく別室に医療班を待機させていたみたいです。当主が…

「もう。危ない薬は飲んじゃだめ」と母にしかられました。次回は、アレルギー症状が出るのにしますか…

「アレルギーもダメだからね。ホントに」と見透かされ先に釘を刺されたのでやめておこう。ばれたら怖いから。

さて、服毒自殺未遂でアーティストのイカれ度合いをわかった跡取りはどんな手を使うのかな?と様子観察中の入院先で考えていると弘文さんが来た。

「今回はすみません。こちらの管理不行き届きでした。あの件はこちらで内々に処理したから」とニャっと笑っているがどんな処理をしたのか…

「でな。絵は処分したのか?」と聞いてくる。丁度いいタイミングでスケッチブックを持ってきた姉が入ってきた。

「なはずないじゃないですか。三智を殺したら処分しましたけどね」と朗らかに笑っている姉。

スケッチブックを受け取り医者の許可を貰っていたので色づけを行う。

「成る程。じゃあ大丈夫だな。何か良いの有るか?」と聞かれたのであの絵を売買して貰うことに。良いのか?と聞かれたので、本物を見て貰いたい。そう言うと納得している。じゃあ高く売り付けてくると笑いながら携帯電話を片手に出ていくけど、院内は携帯電話禁止だよ~と呟く。

「三智は好きだね~と真っ白なスケッチブックも受け取る」

「入院って暇だし」

「勉強は?」

「出席日数足りないと思うよ。退学か補習だな~」とため息をはく

「じゃあ勉強だ」と入ってきたのは従兄弟の希里だ。学年の上位に食い込んでいるから家庭教師を受けたんだろう。教えるのうまいし…

え~と言いながらも退院する2週間お世話になりました。毎日来てくれて色々話してくれたり、同じ学校の親族も来てくれて学校の事を教えてくれた。

「そうだ。例の絵高く売れたみたいよ?」と希里が世間話のように教えてくれた。

「そうなんだ」と問題を解いてたら興味ないの?と聞かれた。

「別に誰が買おうと大切にしてくれたら良いのよ。そこらへんは本家に任せてるし。今回の件は、跡取り候補の試しに使われたんでしょう。うちら灰汁強いから」と笑うと

「だね。皆個性的だからまとめるの大変だよ」と補佐候補だからだろうかため息をついている。

優秀も大変だな。と言いながら明日で退院だからと今までのありがとうを込めて可愛い絵をプレゼント。ペットの寝ているところを描いたのを渡すと

「このシリーズ良いじゃん」とお褒めを頂く。退院してからゆっくりした時間が過ぎていく。周りはうるさかったが噂なんて気にしないし。

そー言えば、今回の件でお世話になった人にプレゼントをしたいなと思い立った。家族には絵を売ったお金で旅行とか。あと、当主さんとか弁護士さんとか医者のかたとか…

医者は病院に良い感じのを寄贈すればいいな…とプレゼントする人をリストアップし好みの絵を色づけしていく。

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