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基本的にこの時代に争いは殆ど無いんだけど、例外もあるって話

 さて人間が集団をつくれば争いが生まれる。


 人類に歴史は戦争の歴史と俺の愛読書だった銀英伝でも言っていたが、実は戦争のような争いが頻繁に起こるのは灌漑農耕、つまり稲や麦を灌漑を行って作るようになってからだったりする。

 これは土地や水を巡っての所有権という概念ができてしまうからと米、麦などを多量に蓄える習慣がついたからだな。


 日本で言えば弥生時代以降だな。


 其れまではなんで戦争などの争いが起こらないかというと、川や土地はみんなのものだし、蓄えているものと言うもの自体が少ないから、殴り合いや殺し合いをしてをして奪おうとするよりも一緒に食べられるものを探したほうが楽だからだったりする。


 ただしどんなことにも例外が在る。


 今俺達がウパシチリを中心に集まっているのも其れについて話しているからだ。


「俺の嫁がさらわれたんだ、取り戻したいから皆力を貸してくれ」


 基本的にこの時代は男がよその村に行ってその村の娘と母親に許可をもらって家族になるのが基本なんだが誘拐婚も普通にあったりする。


 ようは”お、あの女いい女じゃん”と思ったら、その女が1人になったのを狙ってさらって嫁にしてしまうやつもいるってことだ、これは立派な拉致行為なわけで現代だったら間違いなく警察に捕まるわけだがこの時代には警察も国家も無い。


 とは言え古代から戦国時代ぐらいまでは上級階級でも誘拐婚も有ったし、一般人は旦那が戦に出てる間に父親が誰だかわからない子供が増えてることも珍しくなかったくらいだから、日本は長い間そういうのはゆるい感じだったようだが。


 それはともかくこの時代はまだ集落の人口そのものが少ない時代だから、女がさらわれたからと言って、平和を保つために指をくわえて黙ってそのままにしていく訳にはいかないわけだ。


 これが二度三度続いたら村から女がいなくなっちまうしな。


 しかし隣の集落は10kmほど離れてるしこの集落の全人口は60人位。


 半分が女で半分が15歳以下だとすると、戦いに行ける男は15人位。


「相手の集落はどんくらいの規模なんだ?」


 この時代では集落に家が10個あって60人というのは結構大きい方では在るんだが、家が20個以上


 100人を超える集落もないわけではない。


 箱根の集落なんかはかなりデカかったからな。


「じ、実はここよりよりちょっと大きいんだ」


 ちょっと大きいというと向こうは80人位か?


 そうすると向こうは20人位戦えるかもしれないな……。


「そうか、其れは困ったな……」


 人間同士での戦いの訓練などはしていないが、猪や鹿などを狩っている縄文人はそれなりに強い、が其れは相手も同じことで、同じくらいの強さであれば人数の差が強さの差になってしまう。


 なんかうまい方法を考えないと負けるなこりゃ。


 この時代は怪我そのものがその後の生活に致命的な可能性もあるから、できればお互いに怪我しないで済む方法はないものだろうか、しばらく考えて思い浮かんだもが有った。


 ボーラならあまり怪我をさせないですむかもしれない。


「ちょっと俺に考えがあるんで、取り戻しに行くのは待っていてくれ。

 可能な限り早くやってみるつもりだ」


「わ、わかった」


 ちょっと不服そうだったが、流石に人数が多い集落に殴り込みをかけるのは勝ち目が薄いというのもわかってるんだろう、渋々ながら頷いてくれた。


 俺は余ってる革の切れ端に小石を入れて革の端に穴を開けるというものを3つ作り、其れを一メートルくらいの同じ長さの紐で三つ又になるように紐で結びつけて、簡素なボーラを作ってみた。


 そして広場に2本のきの棒を立ててからみんなを呼んでみた。


「なるべく相手を傷つけないようにするためにこれを作ってみたんだ」


 と皆にボーラを見せてから


「使い方はこう」


 と、頭の上でボーラの石の一つを持ってくるくる回して勢いをつけて棒に向けて投げてみたがはずれてしまった。


「ありゃ……失敗」


 其れを見た男が俺に言ってきた。


「大体やりたいことはわかった。

 俺に貸してくれ」


 俺は頷いてボーラを拾ってくると彼に手渡した。


「ああ、いいぜ」


 彼は見よう見まねでボーラをくるくる回したあと棒に向かって投げつけた。


「おお、そういうことか」


 ボーラは2本の棒に絡まっている様子を見てわかってくれたようだ。


「ああ、相手の足めがけて投げれば絡んで転ぶはずだ。

 これをみんなで投げればうまくやれば半分くらいは転ばせることができると思う。

 できれば大怪我はさせたくないからな。

 頭とか首は狙わないで足を狙ってくれ」


 村の男たちは皆頷いた。


「なるほど、俺達にも作り方を教えてくれ」


 俺は作り方を教えて皆がボーラを一つずつ持った状態でとなり村に向かうことにした。

 あと念のため落とし穴を警戒するために長い棒を作って、その棒で地面をたたきながら進むすることにする。


 ・・・


 村の戦える男全員の15人で簡素な踏み分け道をひたすら木の棒で地面をたたきながら腰にボーラをぶら下げながら歩いて、隣の集落までやってきた。


 年齢は上は60近く、下は10代後半と総動員だ。


 ちなみに結果からすると道に落とし穴は掘られていなかった。


 流石にそこまではしないということなのか、単に俺たちを侮ってるのか、後々不便になるからかなど理由は考えられるがな。


 集落の前までつくと嫁をさらわれた男が大きく叫んだ。


「俺の嫁を返しに貰いに来た!

 返さないというなら力ずくで返してもらう」


 しばらくして集落から男どもが出てきた。


「あの女にふさわしいのは俺だ。

 取り返したかったら取り返してみろ」


 この時代の争いは石槍や弓などは使わない。


 素手での殴り合いだ、そして向こうのほうが明らかに数が多い。


「良かろう……なら力ずくで取り返してやるから吠え面かくな!」


 俺達は10人ぐらいがまずボーラを頭の上で回して相手に投げつけた。


「いけい!」


 ヒュンと音を立てて投げられたボーラが何人かの脚に絡みついて、転ばせる。


「な、何だ、卑怯だぞ!」


 相手の方も驚いているが、こっちもこんなにうまくいくとは思っていなかったので結構驚いた。


「そっちのほうが数が多いのに卑怯もクソもあるか!」


 相手が走り寄ってくるところを残りの人間の投げたボーラで脚を絡め取って、残ってるのは半分の10人くらいになった、とは言えボーラをとかれたら、すぐに逆転するからな。


「いくぞ」


「こいや!」


 後は入り乱れての殴り合いの乱戦だ。


 とは言え戦える数の多いこちらの方が優勢で、結局なんとか相手の代表格っぽいやつを殴り倒して決着はついた。


 まあ、俺は相手の中でも弱そうな奴と取っ組み合って、特に優劣もつかない状態のまま終わったが。


「はあ、なんとかこっちが勝ったようだな」


 落とし穴対策の棒とかボーラとか使っても負けてたら、流石にやばい気がするからな。


 具体的には猟に入れる森の割当を減らされるとかあり得たかもしれん。


 連れ去られた女と男が抱き合ってる様子を皆が良かったなと言いたげに見ていた。


「ウグ、くそう俺の嫁が……」


「いや、お前の嫁じゃないから、

 嫁にしたいなら相手がいない女でちゃんと母親の許可を取れよ」


「ぐぐぐ……」


 多分こっちよりあっちの集落のほうが大きいからなんとかなると思ったんだろうな。


 まあなんとか無事に嫁さんを取り返して俺達は村に戻ってこれた。


 殴られたりして痣を作ってるやつは居るが、こっちにもあっちにも大怪我をしてるやつはいないはずだ。


「そういやこれ狩りにも使えそうだな」


 仲間の男がボーラを持っていった。


「ああ、鹿とか鳥を捕まえるのが楽になるかもな」


 本来は人間に使うものではなく狩猟用の道具だしな、ボーラは。

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