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塩は大事な交易品

 さて、アパートから色々持ち出してきた所で食器や調理器具はともかく、調味料など使っていればすぐなくなってしまう。


 だからこそ祭りや宴などのハレの日のみに使用を留めるようにしたわけだ。


 そんな調味料の中でも人間が生きるために最も重要なのは塩だ。


 砂糖や酢はあれば保存や味付けにも役立つがなくても死にはしない。


 しかし、塩がないと最悪本当に死ぬ。


 其れに様々なものを干すときにも腐らないように塩をもちいるのは重要だ。


 幸い俺のいる集落は海の側だから土器に海水を汲んでそのまま肉や魚などをを漬け込んだり、煮物にくわえたりすることで、塩は十分補える。


 海藻も取れればそれからもミネラルは取れるからな。


 しかし、縄文時代は原始共産制で基本は自給自足なのだが、どうしても集落の周辺では手にはいらない物は出てくる。


 例えば矢の鏃や槍の穂先にする石器用の黒曜石などだ。


 黒曜石は、火山岩の一種で黒っぽいガラスのような性質を持った石だが、良質で石器に使える黒曜石の産地はかなり限られていて、関東で使われているのは現代で言うところの長野県霧ヶ峰周辺や和田峠周辺、神奈川県の箱根、東京都伊豆諸島の神津島・恩馳島などだな。


 東京から長野県や箱根、伊豆諸島というとすごく遠く感じるだろうが、縄文時代の関東は東京湾の更に奥に奥東京湾と呼ばれる海があり、茨城と千葉の境辺りには香取海と言う海が広がっていて、現代では海に面していない栃木県・群馬県にも縄文時代には海が入り込んでいるから、関東地方はこの時代三分の二ぐらいは海の底だったんだ。


 こういう地形的なことが要因でこの時代における関東は貝や魚を取って食べるのに非常に適していて、たくさんの集落が海を通じて行き来していた。


 なのでこの時代の長野や栃木などの火山は現在よりもずっと海に近かったのでそこから黒曜石を運んできてもらい、そのかわりに内陸では取れない塩と交換したわけだ。


 まあ、そのせいで弥生の時代以降になっても塩害などで関東の水稲の栽培の試みは難航するんだけどな。


 ちなみにイルカや鯨を入江に追い込んで漁をするときはいくつかの集落で集まって漁をしたりもする。


 今では乳袋をつけることによって、運動することが楽になったとかで最近は女でも釣りや蟹や海老の採取などを行うようになってきてるな。


 流石に弓を使っての狩りは危ないし弦が胸に当たるんでやって無いけど、今までは木の実や貝などの動かない物を拾うなどしかできなかったのを考えれば大きく進歩したとも言えるな。


 因みにこの頃の日本列島の人口2万人の中で、各地域に居住していたのは北海道と東北で2000人ぐらい、関東は10000人くらい、北陸は少なくて300人くらい、中部は案外多くて3000人くらい、東海は2000人くらい、近畿は少なくて300人くらい、中国四国はあわせてなんと400人くらい、九州は2000人程度だったらしい。


 これは森に生えてる木の種類、遠浅な海岸線の長さ、後は気候の差だな。


 で、塩の作り方だが、今時代には塩田なんてものはない。


 最初は日干しして塩を吹いた海藻を食べるものと一緒に煮ることで塩を得て、そのうちに吹いた塩を海水で土器の中に流し込んで塩分濃度を高めて、其れを煮詰めるという手法に変わった。


 暖房などの関係で常に炉に火をつけっぱなしの縄文時代ではついでに塩を煮詰めることには問題はなかったわけだ。


 まあ、土器に入れた海水を運んでくるのは大変なんだがな。


 大きな集落だと海岸に製塩専用の竈をつくってそこでいっぺんに煮詰めてしまうらしいが、うちではそこまではやってない、持たすための木材などを持っていくのはそれなりに大変だしな。


 こうやって俺たちはちょこちょこと塩を作ってためておき、黒曜石を持ってきてくれたら、塩と交換するわけだ。


 因みにこの時代に幹線道路はないので箱根を境にその東西に交流は殆ど無い。


 静岡の方では熱海や伊東のあたりで黒曜石が取れる場所もあったしな。


 こういった交易を通じて、いいデザインだと思われる土器の文様が広がっていったりするわけだが、乳袋の作り方を教えてくれと言われたので、大雑把な作り方を教えた。


 多分関東では女が乳袋をつけるのが今後広まっていくんじゃないかな?

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