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第2話:俺と学校と変な奴等
 朝は、いつもあれだ。
 もう少し静かに出来ないのかと思うが、これが我が水上家の朝だと言ってしまえば、それで通ってしまうのだからしょうがない。
 逆に静かだと寂しいと思ってしまう自分の心に、ちょっとした矛盾を感じてしまう訳なのだが……。

「眠いよ……ふぁ」
「琥珀ちゃん、朝早く起き過ぎなんだよ」
「朝五時から起きて何してるのか…この若年寄」
 俺を囲む三人の会話。
 仲の良い姉妹の会話だが、せめて俺をどけて話してくれないか?
 左腕に瑠璃、右腕に琥珀が絡みつく。そして俺の首を絞めようとしている珊瑚。一人、ポジションがおかしいけど、これはいつもの事。
 この見事な妹トライアングルに囲まれている俺――それぞれ俺の身体を掴んでいるので、とても歩き難い事この上ない。
 そんな訳の分からない事をしながら、いつものように学校へと向かっている俺達だが、こんなに寄り添って歩く必要は普通ないだろう。
 隙間なんてないぞ? 冬だから暖かくて丁度いいが、夏にやられるとたまったものじゃない。
 すでにこの光景は朝の名物で、周りを行く連中は俺達を見て、羨望と嫉妬の視線を交互に飛ばしてくる。
 いい加減、俺も慣れたからお前等も慣れろ。そして頑張れ、俺。世間の目は、生暖かくて厳しいぞ。
「どう思う? お兄ちゃん」
「ん……確かに早い気がするな。そして、俺が迷惑を被る」
「別にいいでしょ、あたしが早起きしようがそんな事は。ねぇ、兄貴?」
「いや、だから俺が迷惑を被ると言っているだろ?」
 左右から覗き込むこうに、俺の顔を見ている瑠璃と琥珀。同じ顔に見られると慣れてない奴は混乱する。
 こいつ等は、簡単に言えば双子。難しく言うと、一卵性双生児。でも双子は双子だ。
 ショートカットの髪に綺麗な天使の輪をつくってクリクリとした瞳に長めのまつ毛。そして、小さくスッと伸びた鼻に同じく小さく艶の良い赤い唇をしているのが妹の琥珀。
 一方、顔のパーツはまったく同じでツインテールの長い髪をしているのが姉の瑠璃。髪型が同じだとまったく見分けがつかないが、性格に関してはまったく正反対。おっとりして人見知り、恥ずかしがり屋の姉の瑠璃。元気で無鉄砲、豪快な妹の琥珀。
 どうしてこうも見事に反対なのか、教えて欲しいぞ。まるで漫画やゲームの世界だ。
「珊瑚……お前、お姉ちゃんなんだからどうにかしろよ」
「それは無理。ボクの手を離れた可愛い妹達は、晴れて自由の身です」
 首にしっかりとしがみ付いてるので、顔が後ろに向かない。
 仕方がないのでそのまま話しかけるが、まったく相手にしてくれない。こいつ等の姉ちゃんなのに冷たい奴だ。
 ――珊瑚は、瑠璃達の姉である。
 そして、俺と同級生でしかもクラスメイトだ。セミショートの髪に長いまつ毛が下向きの三白眼。小さくて可愛らしい鼻と薄いピンク色した唇。しかし、こいつはほとんどが無表情のポーカーフェイス。しかも独創的な頭の持ち主で不思議系。でも、その頭脳は学年でトップの秀才。
 先生達の期待も高く、有名大学に進学させようと必死に説得しているらしいがどれも速攻で断られて途方にくれていると、泣きながら俺に話してくれた先生がいた。しかし、生徒を居酒屋に連れて行くのはどうかと思うけどな。
「おにぃは、まだ手がかかるおこちゃま。だから、ボクがしっかりと更生させてあげるよ」
「いや、更生せんでも俺はまっとうだ」
 拳を握りしめて俺に見せるように、首に思いっきり抱きついてくる。
 こいつの身長は150ちょっと。俺、170強。見事に首にぶら下がるおもちゃの出来上がりだ。しかし、この状態だと珊瑚のふたこぶラクダが背中に、ぽよんぽよんっと当たっているのだが……これまた瑠璃に負けず劣らず成長しているもんだ。
「おにぃ……えっち。ボクはおにぃの嗜好は調査済み。机に隠してるもんね」
「ば、ばか! 俺はっ」
 小声で俺に、耳打ちする珊瑚の声は妙に色っぽくて、心臓がツイストを踊り出していた。
 モロにばれてる。
 俺の思考と嗜好は、すでに把握済みなのかっ! 微妙にダジャレが出来てる。思考と嗜好……。そんな事より、机に隠してある俺が友達から譲ってもらった、大人のバイブルまで知ってるなんて! こいつ、いつの間に調べたんだよ。
 普通はベットの下が定番だが、ここはあえて机という斬新な場所に隠したと言うのに――ばれてる!
 しかし、こいつは俺を「おにぃ」と呼ぶが――これは「おにいちゃん」の略――でも、俺とこいつは同級生だぞ? お兄ちゃんではないのだが、自分だけ仲間外れは嫌だとか言って、そう自分勝手に呼んでいるのだ。やっぱり、こいつの考えている事は、さっぱり分からない。

 大体、こいつ等のお兄ちゃんになったのは十年前。
 俺が六歳の頃だ。それまで、俺は一人っ子だった。つまり、こいつ等は血の繋がらない家族。
 ――義理の妹
 だが今はそんな感じは一切なく、すっかり馴染んでしまっている。なんて考えていたら、俺の両脇では未だにさっきの早起きの事を言っているし、後ろからは誰に話しているのか分からない声が延々と聞えていた。これは、ある意味拷問だ。

 さっさと学校に行こう。





「待っていたぞ、水上亮っ!」
 あの状況のまま学校に着き、校門を入ったところで大声で俺の名前をフルネームで叫ぶうっとうしい声。
 またかよ、こいつは。毎朝、俺の名前を大声で叫んで何がしたんだよ。
「今日こそは、決着をつけてやるぞっ!」
「うるせぇよ、ハゲ」
「ハゲではないっ! これは剃っているんだっ」
 朝日を受けて神々しく光る頭に、周りにいる奴等は目を眩ましてる。
 さすがに冬は威力が落ちるが、それでもこのハゲの頭はすごい。もしかして、蓄熱式か? フルチャージしたら、風呂でも沸くかも知れない。しかしいつもの事なので、俺はサングラス着用。これでこの攻撃からは免れる。瑠璃達も、しっかりと学習しているので、サングラスをかけている。
「で、何の用だ? メロンマスク二世」
「誰が、メロンマスク二世だっ、変な呼び方をするなっ!」
 頭に浮かび上がる青筋は、頭全体に広がってマスクメロンのように見える。
 それでついたあだ名がメロンマスク二世。何故一世ではないのかという疑問は、こいつの親父が同じような頭をしているので、それで二世なのだ。こいつにはピッタリなあだ名なので、誰も変えようとはしない。どこか、リングネームみたいでかっこいいぞ、ハゲ。
「はいはい……それで、はげますようにが何の用?」
浜守要はまもり かなめだっ! 誰も『守』を『す』とは読めんだろうがっ」
 自分で何を説明しているんだ、こいつは。しかし、確かに読めんだろうな。
「だから、お勉強がてら呼んでいるんだよ。はげます君」
「浜の間に、『げ』を入れるなっ!」
 まったく、ああ言えばこう言う奴だ。別にお前の相手なんてしたくないんだよ、こっちは。
 それを毎朝、こんな所で待ち伏せしているから仕方なく、相手してやってるだけだ。ありがたく思えよ。大体、頭以外特徴のない顔をしているんだから、紹介する方の身になってみろ。頭しか、紹介のしようがないんだよ。まったく、もう少し特徴をつけて出直して来い!
「兄貴……ハゲ先輩、いつにも増して元気だね」
「ちょっと、しずくちゃん。ハゲ先輩はひどいよう。あれは、ハゲじゃなくて坊主って、言うんだよ。ハゲてはないよ」
「何気に、ハゲを連発する瑠璃もすごい。でも、あのハゲは毎朝見るにはうっとうしい面ね」
 三人の容赦ない言葉責めに、すでに意気消沈して撃沈しているハゲ。
 泣くなら始めから出てくるなよ。
 いつも毎朝、こいつらに言われてる事だろうが……。もしかしてこいつ、言葉責めフェチか?

「だらしないですわよっ、委員長っ!」

 ハゲの後ろ、眩しくてまったく見えなかったが、そう言えばこいつもいたんだ。
 朝から本当にご苦労様って感じだよ。すっとハゲを後光代わりにして出てきたのは、一人の女子生徒。その風貌は、いかにも優等生。そして、お決まりの黒ぶち眼鏡をかけている。三つ網、膝下スカートなど今のこの国では最早、天然記念物かも知れないぐらいの人物構成だ。
「おはようございます、水上先輩」
 俺に向かって頭を下げる女子生徒につられて、俺も頭を下げる。礼儀ってものはちゃんとしないといけないんだ。
 そう教えられたんだよ、親父に――。
「あぁ……おはよう、倫子」
「やんっ……倫子って、呼び捨て……きゃっ」
 颯爽と現われてきたのに、この変わり様。身悶えてクネクネと体を動かしている姿は軟体生物。
 こいつといい、あのハゲといいまともな奴はいないのか? うちの学校の風紀委員には。
 さっきの浜守は、風紀委員長でこのクネクネしてるのが、一年で副委員長をしている御佳倫子みよし りんこ
「あっ、倫子ちゃん」
「あはよう、瑠璃さん……ついでに、琥珀さん」
「ついでって、何よっ」
 同じ一年の瑠璃達の同級生で、クラスメイト。しかも、意外と仲がいいときている。
 一歩間違えば喧嘩になりそうな事を言っているが、当の本人達は笑顔で話し合っている。よく分からない組み合わせだが、仲が良いのはいい事だ。
「それで、今日は何なの?」
「それがね……聞いてよ、琥珀さん。また、ハゲが暴走して……困っちゃうのよね」
 肩を竦めて話す倫子だが、仮にも先輩で委員長をハゲ呼ばわりか? 人望ないな……ハゲ。
「ハゲハゲいうなっ」
「お……やっと、復活したか。たこ将軍」
「たこ言うなぁ! 今度はたこかよっ、ハゲ言ったりメロンマスク二世言ったり、うっさいぞっ」
 勢いよく立ち上がり叫んでいるハゲ。今度は、顔中真っ赤だ。まるでゆでだこ、だからたこ将軍。
 ちなみに、近所に同じ名前のたこ焼き屋があったりもする。安くておいしいので、生徒達に大人気だ。
「水上、勝負だっ」
「だから、何のだよ」
「今日こそは、お前に捕らわれた愛しの――」
 ハゲが話し始めたその時、待ってましたと言わんばかりにタイミングよく、チャイムが鳴り始めた。
「あ、始まっちゃうよ。行こう、琥珀ちゃん、倫子ちゃん」
「もう、またハゲのせいで遅刻寸前に、なっちゃったよ」
 瑠璃と琥珀はそう言いながら、校舎へと走って行く。その後をしっかりと追っていく倫子。
 本当に仲の良い事だ。残された俺に珊瑚が肩を叩き促してくるので、そのまま校舎へと向かう事にした。
「毎朝、ご苦労様って感じ……」
「それを言ったら、俺達もだ」
 大体、いつも俺に勝負だと言ってくるが、勝負した覚えがない。それも全て、チャイムが鳴るからだ。
 ミスターチャイムマンと俺は勝手に呼んでいるが、それも当たっていると思う。
 色々とあだ名があって羨ましい奴だ。
 後ろを振り返ると未だに呆然と固まっているハゲがいるが、捨てておこう。

 それより――いつも俺に何の用なんだよ、あいつは……。
すっかり、2話の投稿を忘れてました(汗)
1話は、微妙なところで終わってますし、自己紹介なしなので
さっぱりだと思いまして…。
この話、本当にストーリーなんてありません。
いきあたりばったりの脳内構成ですので、たまに理解不能な事が起きるかも知れませんが、そこは笑って許してください。


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