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第三話 水鏡 / 8



 厨房には朝食の準備をしているのだろう、アオギリとアズサが何かを料理していた。と言ってもまだ材料を切ったりしている段階のため良い匂いもしなかった。アオギリが流石と言うべき剣捌きならぬ包丁捌きであらゆる敵を切り刻む。勿論まじめな彼女なので宙に浮かばせた敵を落ちる前に切り刻む様な曲芸紛いの調理法などはせず、地道に一本勝負で戦っていた。しかしそれでも彼女の捌きは一芸と言えた。アズサはそれをじっくりと観察していた。恐らく将来は彼女も料理の達人になるのだろう。

「何か御用でしょうか?」

 ボクに気付いたアオギリはその手を止めて律儀にお辞儀をして対応する。

「水を何か大きな入れ物に入れてもらえませんか?」

「あ、アイシス、こんばんは。でも梧姉様、この家にそんなのありましたっけ?」

 アオギリは無言で食器の奥から大きな水瓶(みずがめ)を取り出してくれた。

「このような物しかありませんが宜しいでしょうか?」

「ええ、構いません。あ、グラスも頂けた……」

 ボクの言葉を遮るように、アズサがボクの顔の目の前にグラスを突きつけてきた。ボクの言葉を事前に読んでいた。

「はい、これでしょ。えへへ〜、気が利くでしょぉ?」

 アズサは「褒めて」と言わんばかりの上目遣いでボクにすり寄ってくる。その笑顔は日頃院で摩耗している心を癒してくれるようだ、胸に何かがこみ上げてきた。ボクよりも小さいこの子を見ていると妹と言う存在も悪くないなと毎度思うのだった。

「ええ、アズサは聡明な子ですね」

「でしょでしょ? 椚姉様も『梓は気が利くね』っていつも褒めてくれるんだぁ」

 ボクがその頬を撫でると、まるで猫の様に自ら頭をボクの掌に擦りつけてくる。猫……猫か、今度院で飼う事を検討してみるか。

「アイシス様……」

 アズサの仕草に夢中になっていたボクを、やや冷めたアオギリの声が現実に引き戻してくれた。彼女の手には水が沢山入った水瓶がある。ボクがアズサと遊んでいる内に水を入れてくれたのだろう。

「感謝します」

 それを受け取ろうと手を伸ばすが、アオギリはボクに水瓶を渡そうとはしない。催促するように手を振るがそれでもアオギリの手から水瓶が離れる事は無かった。

「どうしました?」

 ボクの問いに答える事無くアオギリは目を細めて厨房の入り口へと歩む。

「あ、あの〜?」

 入り口に立ったアオギリは振り返り、目を細めたまま淡々と喋る。片目しか良く見えないためドスが利いていた。

「私が部屋までお持ちします」

 そこで一礼してアオギリは行ってしまった。ボクは慌てて追いつこうと足を出したが、アズサに服を掴まれてしまい、体が止まってしまった。

「アイシス、これこれ」

 アズサは自分が持っているグラスを強調するように差し出す。

「そうでした」

 院では常に一人で物事をこなしてきたため、人から助援を受けると急に何もかも手際が悪くなってしまう様だ。この家に来る度にそれを思い知らされる。

「梧姉様は優しいですねぇ」

 アズサはボクにグラスを手渡ししながらそう言った。

「ですが何故あの様にまるで怒ったような顔をしたのですか?」

 このボクの言葉にアズサは首を傾げた。

「梧姉様は怒った顔なんてしてなかったよ? 心配そうにしてたでしょ?」

 …………ああ、アレは『心配』を表す表情だったのですか。つまり、体格的にあの水瓶を持つのが難しそうだと考え、ボクの代わりに持ってくれていると言うことか。

「ふむ、ボクはもっとアオギリの表情を読み取れるようにならなければなりませんね」

 ボクは急いで厨房を出、アオギリの背中に追いついた。その背中に僕は感謝の言葉を告げる。アオギリは振り向くと無表情のまま、これまた淡々と、

「構いません」

と、言うだけであった。


 普段からアケミの館は静寂に包まれているが、夜は一層静かとなる。そのような状況でアオギリという、決して会話しやすいとは言い難い人物と二人きりで長い廊下を歩く事は空気が重く感じられる。

「明日の朝食は何ですか?」

 この空気に押しつぶされそうになるのをたわいない話題で打開してみる。

「明日の朝食は和食です。詳しい内容もお教えしましょうか?」

 これまた律儀に歩を止めて、振り返っての答えである。

「あ、いえいえ。それに歩いたままで構わないです」

「そうですか?」

 再び歩き出したアオギリの背中を追いかけ、また話題を持ちかけた。

「前から疑問だったのですが、この屋敷は飲み水の確保できる場所が厨房しかないのは何故ですか? これだけ広いと不便でしょうに」

 アオギリは頭だけこちらに向けてこれに答えてくれた。何気に少し滑稽な姿である。だが真面目な顔をしているアオギリに不快な思いをさせぬようボクも真面目な顔で聞き入る。

「そもそも私達は水を飲まないのです。この館で水分を必要とするのは御嬢様と長だけです。その為、余分な手間が増えぬように事前に厨房以外の飲料水に関わる水道管を全て排除しました」

「ふむふむ。未来にかかるかも知れないコストを回避するためなのですね」

「はい。掃除などの際はトイレにある蛇口から水を手に入れます。全ての作業を私と椚が担当しましたので他にも色々とお答えできますが?」

「いえ、もう結構です。根掘り葉掘り聞くのは流石に不躾でしょうし」

 元々何となく聞いたことなので深く掘り下げる気もなかった。それに丁度良くボクに割り当てられた部屋の前に着いた。

「部屋の中までお持ちしましょうか?」

「宜しければお願いします」

 やっぱりアオギリは礼儀や立場を重んじるようだ。他人の部屋には必ず一言断ってから入室するなどのマナーが、彼女の全ての行動の影に存在している。

 部屋の机に水瓶を慎重に置くと、アオギリは机の隅に置いてあるボクのノートパソコンを指さした。

「これは何ですか?」

「これ、ですか? これはノートパソコンですけど……見たことありませんか?」

 アオギリはボクの言葉を無視してジッとパソコンと睨めっこをしている。いや、正確には黒いモニタに映った自分との睨めっこなのかも知れない。自分から聞いたのに答えを無視するとは何とも失礼である。しかしアオギリが何かを注視している姿は珍しく、ボクは折角の機会だと思って彼女の目の前でノートパソコンを立ち上げてあげた。

「これは……テレビですか?」

「いえ、その機能もついてますがもっと色々なことが出来る機械ですよ」

 アオギリの顔を見ると訝しげな視線を送りながらも興味がわいていることが容易に見受けられた。

「ネットには繋がっていませんから大した事はできませんが多少動かしてみましょうか?」


 それからはアオギリの興味のわく限りパソコンを弄くって見せた。アオギリはほとんど無言だったが、パソコンの画面を覗き込む目線で次に何が見たいのかが容易に把握できた。

 その表情はボクの年代のそれに相応で、ボクはこの間アオギリを身近に感じることができた。そうしていると、部屋にある時計から小さな音が聞こえた。恐らく夜用の時を知らせる鐘だろう。

「あ、梓一人に任したままでした。済みません、これで失礼します」

 アオギリはその音を聞くや否や、瞬時に部屋の外へと行ってしまった。

「ふむ、この館一番の剣士の弱点は好奇心とな。好奇心は猫を殺すと言うが、まさにそれですね」

 アオギリがいなくなってしまったために急に寂しくなった部屋を見渡す。

 ここはアケミの館の中にある『ボクの部屋』である。ちょくちょく来るボクに、アケミが部屋の一つをボク専用にしてくれたのである。このパソコンもここに置きっぱなしの物だ。だがこの部屋には掃除をしてくれるクヌギだけが入るので、他の鬼神城の皆はここに何があるか知らないのだろう。恐らくアケミも。

 アケミは他人のプライベートにはほとんど関与したがらない人物である。今まで教えたボクに関する情報は全てボクから口に出した物だ。彼女は友好的に見えるが、その実、決して自分から他人の領域に踏み込むことをしないのである。否、出来ないのだろう。ボクは彼女の過去を知っている。あれだけの過去がある彼女だ、他人の過去を訊くことはないはずだ。そう、訊き返されて自分の過去を訊かれる度に『過去』を思い出さされるのであるから。それを恐怖と感じる彼女には無理な話である。

 だが最近例外が出来た様である。アマヅチと言う魔だ。彼女の過去そのものであるアマヅチだけにはアケミは開放的で、また、追求的である。何故だろうか。

「罪の意識か?」

 自分が犯した罪を償える対象、つまり当事者である存在に出会えたからなのか。彼女は自分が償えないことに苦しみを感じていたのだろうか。

「確かアマヅチにアケミがした事を言ったと言っていたな」

 院に届いたアケミの手紙にその様なことが書かれていた覚えがある。その際にアマヅチはアケミを『赦した』と言う。普通に考えて親を殺した者をそうも簡単に許せるものなのだろうか。

「いや、彼女達は魔だ。人間の基準に当てはめてはいけないか」

 そう、人間とは違うのである。今日の夕食後に聞かされた話でそれを大きく実感したばかりでないか。

 皆のお腹が十分に満たされた後、それぞれがばらばらに行動し始めた頃アケミはボクを小さな個室に連れて行き、そこでアマヅチの事に関して何か分かる事は無いかと最近の彼女の様子を教えてくれた。アマヅチは人を殺した後大した変化がなかったらしい。これを聞いたときにボクはそれこそが『魔』の本性であると直感的に納得した。まあ、実際は殺されたのは人間ではないが。アケミは、アマヅチは自分の力に護られているから人を殺した際の記憶が薄れて今でもああも普通に生きてられると言っていたが、それははたしてどうか。何故ならそれを口にしているアケミ自身、人を殺すことに何ら抵抗も感じなかったの……


  待て、破綻している


 違う、アケミは罪を感じていたのだ。だからアケミは人を殺すことに恐怖や抵抗を感じたはずである。


  本当にそうか?


 少し整理をしてみよう。罪を感じているからこそアケミは過去に触れたがらない。これを暗示するようなことが手紙に書かれていた覚えがある。ならばこれは確定か。

 次に、アマヅチは人間を殺したことに何も動じていない。これは彼女を観察した限り事実である。しかし、アケミ曰くそれは彼女の力が原因だとのことだ。つまり力がなかったら彼女も人を殺すことに抵抗を感じると言うことか。ならば人の死そのものに対してはどうか。それも自分の親である。そう考えると、やはり力とやらがアマヅチの過去への執着心を薄めているのかもしれない。それがアケミを簡単に許したことに繋がるか……。いや、単純に感情の問題なだけかも知れない。


  馬鹿げている 無意味だ 推測は事実とは違う


 おかしい。何かおかしい。何かが間違ってる。この苛立ちは何だ、何かがボクを駆り立てている。手元にあった紙を力のあまりグシャグシャに丸めてゴミ箱に投げると少しこの苛立ちは和らいだ。

 そうか……アマヅチだ。この違和感はアマヅチからの物か。アマヅチの力、これは何のためにある。過去から自分を護るためか?

「馬鹿な。それでは未成熟な存在で終わってしまう」

 人間の人格は過去から出来る物である。例えば自分にマイナスな記憶だけを選んで消去したとする。

「それでは幼児時代が乗り越えられない」

 我慢を知らない時代にとってその力は未来に対する凶器になってしまう。そして人格を形成するのに幼児時代は重要である。ここで穴をボコボコと開けてしまったらどうなる物か。

「魔は人間を駆除する、地球に創られた者」

 ならばそのようなデメリットを負う必要性はない。魔の力は遺伝子で伝わるわけではないため、遺伝的崩壊による狂いでもない。

「魔の力は人間の武器と同位」

 やはり何かがおかしい。それは何だ。

「そうか……覚醒というモノか」

 覚醒、魔は初めから力を持っているのでなく、ある程度育ってから力を得る。その時、一時的に暴力的になる傾向がある。それは(けい)の拡張によって不安定になった輪郭が原因である。形とは存在そのものである。(えい)が心象と言う単語で説明できるなら、形は本質であろうか。拡張時に起こる輪郭の崩壊によって魔はその存在以上の力を受け持ってしまい、多くは暴力的、つまり古き魔と同じ状態に戻る。また、時には暴走を起こし災害となってこの世に傷跡を残し、領主によって排除されるか魔狩り者によって削除されるか、稀に自己消滅する。自滅の際は形の完全崩壊が主な原因である。これは『形の輪郭が崩壊し、拡張した輪郭を形成する』という正常な過程が、突然途中で止まってしまった結果である。これは魔の死を意味するのだ。大きな力を持つ者に多く見られる現象で、我々は地球によって作られた監視システムなのだと考えている。大きすぎる力を手に入れる者は地球によって消されるのだ。また、覚醒を迎えない魔もごまんといる。これも地球によって作られた証拠であり、覚醒のタイミングとして『鍵』が必要なためだ。推測するにアケミのは『絶望』で、アマヅチのは『他者の血』が鍵であったのだろう。それは多種多様であり、富だったり愛だったりもするのである。鍵をその生涯で、特に若い時に手に入れられなかった魔は絶対に覚醒出来ないのだ。また、血の濃さも重要である。魔と人間の両親に生まれる魔の子は血が薄いのだ。これが何世代も連続したため、世間では魔の血を持った人間が沢山いるのである。しかし、そういう者達は霊力が行使できず、また体力も普通の人間となんら変わらないため自身に人外の血が混じっている事に気づけないのだ。魔としての自覚は親が子供に教えるかどうかで決まる。大体の家系は親と子に覚醒が起きず、また霊力とみられる奇跡がなかった場合、孫にはその知識は受け継がれないようにしている。


「馬鹿げている。これを思い出してしまったら先程までの思惟(しい)は大半無意味になってしまう。やはり人間は不完全だ。早期のレイの研究が必要だと言うことか」


 再び整理しよう。まずアケミは覚醒の所為で暴力的になり父親とアマヅチの両親を殺した。その後、罪の意識あり、っと。

「まあ、これも仮定に過ぎないが」

 その後、罪の意識の所為で過去に恐怖を覚えるようになった。

「そこで、アマヅチに会う」

 アケミはアマヅチと仲良くなった。

「変だ。自分は彼女の親の敵なのに何故仲良くなろうとする。これはやはり罪の暴露による意識の緩和なのか」

 その後、アマヅチの覚醒が起こる。いや、その前に使者を殺していたか。その事を本人は殆ど覚えていない。

「…………いくら何でもおかしい。彼女に関してはアケミから現段階で分かる限りの情報を聞いている。つまりそれはアケミも同じ事を知っていることが前提となる」

 おかしい、おかし過ぎる。何故アケミはこのことに疑問を抱かないのか。いや、そもそもボクこそ何故こんな簡単な違和に気付かなかったのか。

「アケミに訊かなければ」

 ボクは急いで部屋を出てアケミの部屋がある階上への階段へと走る。長い廊下の途中にムクゲの背中が見えた。

「ムクゲ、アケミは……」

 ……何だ? 廊下が曲がったのか? 崩れたのか?

「アイシス様? どうなさいました?」

 目の前に誰かの足がある。その誰かがボクの顔を覗き込んできた。

「あ、ムク……ゲ?」

「はい、そうですよ。待っていてくださいね、すぐに朱水様を呼んできますから」

「はい……その方が好都合……です」

 ボクの言葉を聞かず、ムクゲは廊下の曲がり角を曲がってしまった。ボクはどうやら廊下の床に倒れ込んでいるようだ。

「何故……だ?」

 理由の分からない状況だ。それに何故か途轍もなく体が重い。

「だめ……だ……目が……」

 ………………


▽▽▽▽▽


「どういう事かしら? つまり勝手に倒れ込んだって事?」

 槿は私の質問に困惑した表情で答える。彼女自身訳が分からないのだろう。

「はい。廊下の遠くから朱水様の名前を呼んだ途端急に倒れてしまって。その後、アイシス様の意識を確認した後すぐに朱水様をお連れしたんですが……」

「で、あの状態ね」

 私が着いたときにはアイシスは廊下で意識を失っていた。

「で、アイシスの状態は?」

 槐はアイシスの体中を調べていたが首を振って何も見つからなかったという表現をした。

「でも、調べた感じでは寝ているだけですし命に別状は無いようです」

「そう。で、槿に呼びかける前に最後に近くにいたのは梧、貴女で良いのね?」

 梧は一度だけ頷いた。

「その時にアイシスに何か変なところはなかった?」

「見受けられませんでした」

 淡々とそれだけを言う。まあ、梧はこれがいつもだからそれで良いのだけど。

「あ、朱水様! アイシス様が……」

 振り返るとアイシスの目が開かれていた。普段の半分ほどしか開かれていない目で現状を理解しようと周りを目だけで確認する。

「アイシス、私が分かる?」

 その瞳はちゃんと私の姿を捕らえようと動いていた。

「はい……これはどういう事です?」

 自分がどういう経緯でこのような状況にあるのか分からない様だ。

「どうって、貴女が急に廊下で倒れたのよ。気分はどう?」

 アイシスは虚ろな目で私達を見渡した後、数回首を縦に振った。平気だという意思表示であった。

「そう、安心したわ。で、貴女、何か急な話が私にあったみたいだけど?」

「……何の話ですか?」

 てんで分からない、その不可思議を目にした様な表情はそう訴えていた。

「何って……貴女が倒れる直前私の名前を呼んだそうよ? だから何か急用があったんじゃないのかしら?」

 しかしアイシスは首を傾げるだけである。

「そう。なら思い出したときで良いわ。今は休んでいて頂戴な」

 私達はアイシスの体に布団をかけてから部屋を出た。

「有と椒は何所かしら? それに由音ちゃんも」

「さぁ? でも屋敷内にいることは間違いないです」

「そう。ならいいわ。槿はこの後もアイシスの面倒見てあげてくれる?」

 どうにも扉の向こうのアイシスが心配な様で、私の言葉に適当な返事しかできない槿には世話係として残ってもらおう。妹達の世話が好きな彼女にとってアイシスのあの様子は気がかりなのだろう。

「はい。畏まりました」

 槿は嬉しそうに扉の中へと再び入っていった。

 私が手を鳴らすと彼女達はそれぞれの持ち場へと帰っていく。

「では、朱水様もお疲れでしょうからゆっくり寝てくださいね」

「ええ、有り難うね」

 槿に手を振って私も自分の部屋へと戻る。

「何か嫌ね……」


 普段から見慣れているはずの景色が急に不気味に思えてきたため私の足は何かから逃げようとせんばかりに速かった。


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