凪の時
翌日の朝。毛利探偵事務所の前ではいつもの朝の光景が繰り返されていた。
「おはよう!コナンくん!!」「おい。コナン遅せぇぞ。」
「おはようございます!」「おはよう。江戸川くん。」
「おはよう。歩美、元太、光彦、灰原。」
明るく振る舞う。辛さを微塵も感じさせない見事な演技だ。
「今日仮面ヤイバーが2時間スペシャルだぜ。」
「ダーク・リンを倒せるでしょうかね?」
「倒せるよ!ヤイバー強いもん!!」
楽しそうに話す3人、(いつ切り出したら良いんだろう・・)
ずっと下を向いて歩いた。
キーンコーンカーンコーン
チャイムの音に走り出す5人。
滑り込みセーフだった。
一時間目は遠足の計画だった。
2週間後の金曜日に山へ行く事になっている。
小学一年生にはきついルートだが前に一度博士と探偵団で星を見に行った山だ。
(オレには関係ない話だよな。それよりいつ伝えよう)
「・・・くん?コナンくん?」
歩美ちゃんの声にふと現実に戻る。
「どうしたの。ぼーっとしてるよ?」
「いやなんでも無いんだ。頂上で何するかだよね。」
いつも通りに装って計画に加わった。
次の休み時間。哀は歩美に呼び出された。元太や光彦も来ていた。
「哀ちゃん、哀ちゃんなら知ってるよね?」泣きそうな顔をしながら聞かれた。
「何の事?」とぼけた声は少し掠れて自分でも無理があると解っていた。
「コナンくんが今日ずっと朝から変でしょ。哀ちゃんならコナンくんと良くしゃべってるし知ってるよね?」
真剣な目でまっすぐ哀の瞳を見ていた。元太も光彦もまっすぐ哀を見ている。
少年探偵団としていろいろ遊んだり、事件に巻き込まれたり彼はもう親友でなくてはならないものなのだ。
さらに歩美には別な気持ちがある事も哀は知っている。
「ごめんなさいね。知らないわ。もし何かあるなら彼が話すと思うわ。」
コナンは窓の外を見ながら溜息をついた。
(どうやったらアイツらを傷つけずに去る事が出来るだろう・・)
この時代の友達がいかに今でも大事か。自分自身が一番良く知っている。
「あなたはいつも優しいのね。」ふいに声をかけられた。あわてて振り向いた。
哀は続けた。「でも、一番の優しさを落ち着いて考えるのね・・」
夕闇の米花公園。いつものようにサッカーをして、そろそろ帰ろうという頃だった。
「じゃあそろそろ門限があるので。」光彦が言った時だった。
「待ってくれ、光彦。話がある。」
みんな振り向いた。
「オレ、転校するんだ。」
全員振り向いた。みんな笑顔だった。
「コナンくんならすぐ友達できるよ。」
「手紙くださいね。」
「江戸川くん。頑張ってね。」
「引っ越してもオレの子分だからな!」
思いのほか静かなみんなの反応にコナンは救われた気持ちで「じゃあな!」と声をかけて立ち去った。
コナンが見えなくなった時。
歩美、光彦、元太の三人はコナンとは逆方向に走り出した。
砂の上の水滴の跡が全てを物語っていた。
(工藤君。あなたには仲間がいるわ。その優しさに随分助けられているのよ。)
心の中でそっとつぶやいて哀は研究所に向かって歩き始めた。
作者の鈴音です。
受験も落ち着いて来たので久々の投稿です。
久々なので感覚が鈍ってる様な気がしますがまた宜しくお願いします。
評価
ポイントを選んで「評価する」ボタンを押してください。
ついったーで読了宣言!
― お薦めレビューを書く ―
※は必須項目です。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。