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  時と偽り 作者:鈴音
黒き渦
夜、完全に外の喧騒から切り離されたような高層ビルの最上階に男はいた。
「そうか。売上は目標を突破したか。増産計画に無理はないか市場を判断しつつやってくれ。」
「はい解りました。会長。努力させて頂きます。」そして受話器からは発信音が聞こえた。
先程『会長』とよばれた男はふと立ち上がって大きなカーテンを開ける。
宝石をちりばめたような夜景が眼下に広がっていた。
男は一人つぶやく。
「私は今多くの物を持っている。しかしどの物にも価値はない。」
時計の針がカチリと動く音が聞こえる。
男しかいない部屋。この三十年変わる事のないこと。




ふいに机上のパソコンが音を立てた。画面に手紙のマークが表示されている。
男はパソコンへ向かう。
『進行は順調で予定通りに完了いたします。ただ、不穏な動きが確認されています。』
男は笑みを浮かべた。
『そうか。よくやっている。禍の種はこちらの精鋭に片付けさせるよ。プロジェクトの方に専念してくれ。』
そしてもう一通メールを書き始める。
『お前達が報告していたFBIの件だ。お前達に全て任せる。場所は米花埠頭といったな。
どんな方法を使ってもいい。始末しろ。』
『OK。ボス。』そのメールが入ってきた。
そして、テレビを点ける。
1時間後臨時ニュースが放送された。
「米花埠頭で午前3時ごろ爆発がありました。周辺は人通りの少ない倉庫街で警察と消防が調査を行っています。
今中継がつながっています。」
「みてください。ここが爆発した14番倉庫です。何一つ残っていません。爆発の衝撃により全て粉々です。
その影響もあってか調査は難航しています。また今回の爆発は爆薬を使用したもので警察では入手ルートの解明に全力を注ぐ事になりそうです。」
様子を見に来た野次馬はおびえた顔をしていた。
レポーターのインタビューが所有者に移ったとき男はテレビを消した。
「ルートの解明?オリジナルの爆薬で出来るわけがないだろう。あともう少し。あと少しで手に入る邪魔はさせない。」
そして男はビルを出た。
礼をする警備員に声を掛けそして車に乗った。


黒い車は夜の闇に吸い込まれるかの如く走り去った・・。


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