龍之介の不在の露見
ロシア帝国から送られた二人の側室は、夜は正長をくずんほぐれずで誘惑し昼間は側室の地位を利用して茨城都内で龍之介の所在を詮索していた。
ロシア帝国からは、側室に付き人が付き添っていた。
その付き人は、ロシア帝国の軍所属、鍛えられた兵士ロシア版くノ一、諜報活動などたやすいことであった。
その動きを柳生宗矩は裏柳生を使い把握、正長に報告するが「自由にさせろ」と、命じられてしまった。
夜の営みにより正長は、ロシア美女に骨抜きにされたように感じた。
正長は元来、生真面目な性格、のめりこんでしまうとそれしか見えなくなる気質を持っていた。
木乃伊取りが木乃伊になる・・・・・・
幼いころから使えている柳生宗矩は、若干の疑いを正長に持っていたが、念のために茨城城に預かっていた龍之介の子や側室を密かに龍之介の兄である上皇が住む東御所水戸城に送った。
その方が万が一の為になると考えた。
上皇は快くよく預かり、門を固く閉じた。
正長の手の出せない人物が近くにいたのは好都合となっていた。
その足で、宗矩は平潟城に登城、事の次第を歩美に報告、すると、歩美は正長の真意の確認と叱責すべく茨城城に登城したが、正長は、昼まっから酒を浴び大いびきで寝ていた。
我が子の情けない姿に、歩美は言葉を口に出せずに意気消沈し平潟城に戻った。
しかし、このままでは幕府の存亡に関わる許し気問題、歩美は勿来城に登城し正忠に事の次第を話す。
正忠は、動き出せずにいた。
謀叛の嫌疑をかけられるのを恐れ動くのを控えた。
そんな不穏な空気の中、月日が過ぎるごとに龍之介の情報を二人のロシア人側室は手にいれていた。
龍之介が昨年の十月より、見かけられていないことを付き止めた。
十月五日深夜の軍事訓練、海上で打ち上げられた花火、うつろ船の姿を隠す目的だったのが裏目に出た、その日から見かけられていない龍之介。
考え方によっては、弔いの花火と考える事が出来る。
軍事訓練が実際その日に行われていとしたら、その日から見かけられない龍之介、軍事訓練中に何らかの事故にあったとも考えられる。
どちらにしても、この深夜の花火の日に何かがあったのが明確であった。
そして、龍之介がいるとされる鹿島神宮を調べ上げる側室の付き人に扮したロシア版くノ一、鹿島神宮に龍之介が籠っている形跡が見られない。
特別監視、警護、立ち入り禁止区域があるわけではなかったことで龍之介が鹿島神宮で籠って修行をしていない、そこにはいないことが濃厚と調べ上げたのだった。