異母兄弟、正忠と正長
正長は茨城城城主・従一位征夷大将軍幕府評定議会代表兼平和維持連合代表代行。
正忠は勿来城城主・従三位権中納言大日本合衆国統治責任者全権大使大将軍補佐兼飛行船艦艦隊隊長。
正室、織田信長の娘、歩美の子は正長と正光、正忠は摂関家近衛家の美乃利の子であった。
龍之介と言うか、三上家では母親がいかなる身分であろうと分け隔てなく育てられた。
そんな、異母兄弟なのだからこれといって確執やわだかまりもなかったのだが、正長は征夷大将軍、正忠は龍之介から飛行船艦艦隊を預けられていた艦隊隊長。
オ-バ-テクノロジ-で作られた飛行船艦艦隊は茨城最高戦力であった。
その艦隊隊長が、反旗を翻したら大日本合衆国の存続そのものに関わる戦力。
その為、疑いたくない兄弟でも注視し疑っておかなければならない。
この時代としては当然の事であった。
戦乱が終わって間もなかったためである。
しかも、正忠の正室は眠れる独眼竜、伊達政宗の娘、牟宇であり伊達政宗と共闘する可能性があった。
その為、幕府から目付け役として正忠と互角の剣の腕がある荒木又右衛門を就かせていた。
平潟城から勿来城に移動した正長を正忠は城の大手門で迎え城にいれた。
正長は、心では正忠が裏切るはずがないと信じていたので入城した。
正忠の脇には荒木又右衛門が付き動きを注視していた。
「兄上様、御用がおありでしたら呼び出していただければこちらから出向きましたのに」
「いや、今回は正忠にも用があったが、飛行船艦艦隊も確認したかったので来たのだ」
「さようでしたか。兄上様、私には二心など御座いません、どうぞご存分に検視してください」
「目付け役、荒木又右衛門から報告は来ている、包み隠さず見せてくれているとな、しかし、自分の目で確認しないとな」
「疑いなきようにしております。兄上様は私が謀反を起こすと思いですか?」
「正忠、お主の嫁は伊達政宗殿の娘、それが気がかりなのだ」
「義父殿は特別なにも申してきてはおりません、兄上様が御気にしすぎなのではないのですか?父上様の留守を守らねばならぬと言う強い気持ちはわかりますが、あまり気を張りすぎていては良くありません」
「わかっておる、わかっておるのだが」
「母は違えど父上様の子、けして兄上様、そして、幕府に弓引く真似はいたしません。どうか何なりとお申し付けください」
「ん、では、眠れる竜が目覚めたらすぐに知らせよ」
「はっ、心得ました」
「それと、北の帝国の同行が気になる、注意して飛行船艦艦隊がいつでも出撃できるようにしといてくれ」
「わかりました。父上様の予言では茨城国への地震はないのですね?」
「しばらくはないとの予言であったが、準備は怠るな、私は茨城城に戻る、疑って悪かったな、正忠」
「疑わねばならぬ兄上様の心中お察し申し上げます。お体をお大事にしてください」
正長は、少し疲れた様子で茨城城にとんぼ返りした。