正長の懸念
「若様は、どこぞ攻めてくると御懸念がおありなのですか?」
執務室に戻っていた正長に柳生宗矩は問うていた。
「宗矩、お主ほどのものがわからぬか?」
「関白殿下が、敵対国は攻め滅ぼしたと思うのですが。」
「帝国が一つ残っているではないか?」
「しかし、あの帝国は領土の三分の二を失い降伏し講和条約に調印しましたが。」
「その残った帝国に近いところに、『眠る竜』が潜んでいるではないか?もし手を結んだらどうなる?」
「ま、まさか、あのお方が関白殿下を裏切るはずはないとは思いますが。」
「父上様の御不在が長引けばそうでもあるまい?」
「しかし、正忠様に姫を嫁がせているではございませんか?」
「それがもし、謀反の布石であったらいかがする?宗矩。」
「裏柳生を放っておきますか?」
「やめておけ、その気がないのに起こしてしまう爆弾になってしまうかもしれぬからな。」
「・・・・・・わかりました。しばらくは静観いたしましょう。」
「父上様の偉大さはこの様な時にわかるものよの。」
「若様の力も大きい御座います。この大日本合衆国をまとめているのですから。」
「父上様の帰還まではどのようにしても国は守らねばならぬぞ。」
「はっ、この宗矩しかと心得ております。」
「父上様の御不在を知っている者は我が兄弟と言えど疑っておかねばならぬ。父上様が正忠に預けた飛行船艦艦隊が一番の脅威ではあるのだが。」
「現在、我が一門の兵庫助利厳が一番艦『雷神』の艦長に着いておりますが、門下の荒木又右エ門と言う腕のたつものがおります。目付け役として送りましょう。」
「そうであるな、飛行船艦艦隊目付役とし勿来城就きとしよう。」
「では、そのように手配いたします。」