征夷大将軍正長
龍之介の嫡男、征夷大将軍正長は密かに鹿島城に入城しガリレオが作った望遠鏡で見ていた。
流石に、宇宙船は見えなかったが正忠が放つ偽装の花火の明かりはぼんやりと見えた。
花火が止み、夜空を見ていると流星らしき物が眼前を突っ切って行った。
流星は何度か見ていたが今回の流星は地上に降ってくると言うより完全に逆方向、正長はそれが龍之介を迎えに来て飛び立つ宇宙船であることを直感で感じ、その光に向かって手を合わせた。
朝日で空が淡い朝焼けになるまで、正長は空をいつまでも見つめていた。
すると、沖から蒸気機関戦艦建御雷の出す蒸気が見えたので正長は寝所に戻り横になった。
眠いが寝つけないもやもやした時間だけが過ぎていく、それは龍之介に頼れくなった不安から来るものであった。
龍之介が大日本合衆国にいないことなど日常茶飯事ではあったがモールス信号で通信は出来ていた為、何かあれば頼る事が出きると言う安心感はあった。
しかし、今は生きてはいるが会うことも連絡することも困難な情況、
大日本合衆国をまとめていくのには重圧がのし掛かる。
しばらく横になったものの寝付けず、正長は起きあがり港に向かった。
ちょうど、建御雷が接岸され歩美が下りてきた。
「母上様、父上様は?」
短い端的な言葉で聞いた。
それは周りに聞かれても問題ないように。
「関白殿下は修行に入られましたよ。」
歩美もまた、二人だけがわかる言い回しで答えた。
「そうですか、入られましたか。」
「正長、関白殿下はあなたを誰よりも信頼しておられます、その信頼に恥じぬよう治世に励みなさい。必要なら正光、正忠の力も借りなさい。」
「はい、母上様。」
歩美は正長の不安な心を感じていた。
「茨城城に戻りますが、母上様は如何にいたしますか?」
「正長、これからは、あなたが私に指示を出さなければなりません。」
「では、母上様には平和維持連合本部・平潟城に入っていただき、世界各国大使の対応をお願いいたします。」
「わかりました、そうしましょう。正長は幕府評定議会運営に力を入れなさい、正長、これは関白殿下がこっそり私に渡したあなた宛の書物です。城に戻り読みなさい。」
龍之介が宇宙船に乗る間際、歩美を抱き寄せたときに渡していた。
手紙と言うより、部厚い書、一冊の本と呼べる厚さがあった。
正長はその本を手に茨城城に帰った。
自室に戻り一息付くと、本を確認する
「これの書通りなら時はさほどないではないか、父上様の予言は必ず起きること準備をしなければ。」
龍之介が歩美に託し正長に渡された本は以前、龍之介が転生者であることを打ち明けた時に話していた、これから起きるであろう地震と火山活動が詳細に書かれた本であった。
正長は、その本で近々地震が起きることを知ると行動を開始した。