龍之介帰国
龍之介はムンバイを佐々木小次郎・サガー島を宮本武蔵に任せ、柳生宗厳と共に帰国の途に着いたのである
マラッカ海峡から南シナ海に抜けるルートでの帰国は初めてであった
南シナ海付近の国々は早い段階で独立平和維持連合同盟加盟国であり、日本の友好国
貿易も盛んに行われていたため、各地に寄港すると歓迎を受けたのであった
国賓として歓迎をされ晩餐会などの申し出が多々あったが、龍之介は先を急ぐため補給が終われば直ぐに出港していた
龍之介は久しぶりに、堺の港に入った
出国から5年が経過していた
堺は相変わらず賑やかであった
龍之介は、もちろん京都を最初に目指したのである
柳生宗厳の戦艦は茨城国鹿島港に向かう
富益恵時尊と平賀源内もその戦艦で茨城国に向かった
新たな、船の建造を龍之介から任されていた
龍之介は次男の正三位大納言禁裏御守衛総督京都守護藤原朝臣三上鷹之介正光が治める嵐山城に入った
「父上様、お帰りなさい」
龍之介を迎えた正三位大納言禁裏御守衛総督京都守護藤原朝臣三上鷹之介正光は二十歳になり凛々しく育っていた
「ただいま、帰った変わりはないとモールス信号通信では受け取っていたがどうだった?」
「はい、最近では冷夏が増え作物に影響を及ぼしておりますが、多毛作と輸入で食料不足にまではなっておりません」
「それは良かった、積もる話しもあるが帝に挨拶が先じゃ身形を整えたい」
「はい、準備してあります」
龍之介は、二ノ丸御殿で旅の垢を落とし身形を整え御所城に向かった
「日本総代大将軍三上龍之介正圀ただいま帰国いたしました」
帝に挨拶する龍之介
「龍之介の働きしかと、聞いておるぞ次から次へと国を倒す働き、鬼神のごとしじゃな」
「これも、平和な世を作るために御座います」
「上皇様も、龍之介の働きに喜んでいたぞ…しかし、もう少し早い帰国であったならな…」
「上皇様は…?」
「今年の、春先に御隠れになった、静かな最後であったぞ」
「そうでしたか…」
「上皇様が、龍之介には心惑わすから伝えるな!と、遺言を残してな知らせなかった」
「お心遣いありがとうございます。」
「今回は、しばらくは日本にいるのか?」
「はい、特別連絡が入らない限り茨城国でいろいろ作りたく」
「また、変わったものを作るのか?馬を必要としない馬車が少しずつ京都に道を伸ばしていると聞いたぞ」
「蒸気機関車ですな、運用は長男正長に任せてありますので…しかし、蒸気機関車が国中を走れば便利になると思います」
「今でも、蒸気機関鉄甲船で国中の行き来が盛んで良いと言うのに更に便利にか、良いことだ」
「一度、茨城国で蒸気機関車を試されてみては?」
「そうだの、龍之介が治める茨城国は大層な発展をしていると聞く一度、見てみるか 日本国内は安定し帝の私が京都に留まる理由も薄くなってきたからの それに昨年嫁がせた和乃宮の顔を見に行くのも良いかもな 龍之介も二条城におる心美の顔を見ていったらどうだ?」
父・上皇が、亡くなり二条城には帝の嫡男・忠仁親王が入っていたのだ
そして、龍之介の娘・心美が嫁いでいた
「では、上皇様の墓所に参拝してから二条城に寄って行きます」
「それが良いな、今年は喪中につき年明けに茨城国へ下向したいと思うがどうか?」
「では、我が茨城の水戸の梅の季節に御越しください」
「噂には聞いておるぞ、なかなかの梅苑だと」
「はい、偕楽園と申します」
「その頃までいるのか?龍之介」
「はい、その予定であります」
「では、楽しみにしておるぞ」
こうして、龍之介は兄である帝に挨拶を済ませ上皇の墓所に参拝
二条城に寄り、心美と忠仁親王に挨拶をし安土城に向かうのであった
安土城にはもちろん織田信長の菩提を弔う総見寺があり、参拝したのである
龍之介はそのまま、安土城に一泊した
その夜、
龍之介は安土城の天守最上階で、ヨーロッパで買い求めた、ガラスのグラスは3つ用意され日本酒が注がれていた
龍之介は一人酒を飲む…一つはもちろん織田信長、そしてもう一つは父である上皇に捧げる杯であった
「信長様が作りたかった世はどのような物であったのかの~」
「上皇様も今の世をどう思っていたのか…」
一人呟きながらである
月明かりに照らされた琵琶湖を眺めていた
春・エリリ・トゥルル・エターニャは安土城に着いてきているが、龍之介の心境を思い遠慮していた
次の日、龍之介は近江八幡城を確認したあと、堺に戻り茨城国へ出港するのであった