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怪談・痩せてゆく事
作:tensuke



その9


9.痩せてゆくという事
僕は東京で全ての撮影を終えた
やり遂げた達成感と高い評価を得た満足感で僕は一杯だった
もう 僕の体重が減ってゆく事はない
それは「役作りのため」という言い訳も終わりを告げ
周囲が期待する 元通りの僕 への帰還

もとから好き嫌いは多かったですし
食べられるモノを食べてます
ちゃんと食べてます 心配ないです
依然と変わらない返答をしながら ようやく自分でも食の細くなった事を自覚した
これは恋煩いのようなものだと そう思った
彼を思うと食事が喉を通らない
あれ程好きだった肉でさえ 食べたいと思えない

今はただ 彼に会いたいと そう思う
このまま元の自分に戻る事に抵抗さえ覚えていた
今のままの自分でいれば
彼がまた 迎えに来てくれるはず
僕は彼の為に生きているのだから
やせてゆく事 それは 彼と過ごした証のようなもの

月のない星空の夜に 迎えに行きます
そう彼は言った
だから
僕は今でも 毎晩夜空を見上げる
鏡の中の僕は陰りと嘆きを纏い 憂いに満ちた瞳が潤んでいる
疼く身体を持て余し 彼の指とあの熱を想う

そっと自分で触れてみる胸の突起は彼の指を思い出して桜色に染まる
つんと凝った先端が更なる刺激を待って震える
昂ぶりは薄い茂みをしっとりと濡らす程に蜜を流し
ふるふると彼の口腔に包まれたいと揺れる
己の手に慰められても それはただ虚しく白濁を吐くだけ
後孔の最奥に彼のものを迎えたいとその入り口はイヤらしく蠕動する
僕の指はそれを慰めようとゆるゆるとそこを探る

彼の昂ぶりの代わりを果たしてくれるものはない
彼以外の誰にも 代わりはできない
僕の身体は 彼だけを望み 恋い焦がれている
爛れた熱に焼かれるような淫らな快感に一人震えても
決して満たされる事はない

早く 早く
早く会いたい
彼に会って 彼の地で過ごした逢瀬の日々のように
強く 激しく彼の腕に抱かれたい
僕の身体は彼の口づけを求めてざわざわと粟立ち震える

いつの日か
月のない星空の夜に
僕は彼に抱き止められて そのまま夜露となって消えてなくなる
その日を恋い焦がれて待ち望んで 今 生きている

僕は やせてゆく事 すなわち 彼に僕の全ての蜜を与えることを選んだ
僕は いつかその全てを彼に捧げて消えてなくなる
それでいい
今 僕は毎日をただ彼を待ちながら生きている
月のない 星空の夜を待ち望んで












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