第1章 希望の船
「カクヨム」は「小説家になろう」や「Arcadia」などで這い上がれない作者にとって、「希望」であった。
この「希望」が船出したのは、2月29日。
もう冬も終わろうとする季節であった。
「カクヨム」。
ここは「なろう」でも「理想郷」でも勝てない底辺ワナビが一週間、ランキングを目指して地獄を這いずり回る修羅の船。
大賞と書籍化を求める、希望の船。
カドカワ
「底辺ワナビに総額700万円のコンテストを企画する我々が悪党なわけがない。ユーザー様には未曾有のチャンスを与えているのです。著作者人格権の放棄など、それを考えれば非常にハートフル、良心的契約でございます」
カクヨム公式ブログ
「どうぞどうぞ、10年20年かけて小説賞の公募を狙うのもこれもまた一つの選択。止めはしません」
賢いワナビ
(一週間後にランキングと聞いてすぐある予感が走った。この勝負、話の面白さではない。おそらく勝つのは、知略に長け、他人を出し抜けるもの……!)
カクヨム公式ブログ
「ファック ユー! BANするぞワナビめら。甘えを捨てろ。その甘えはお前らの質問、要望だ。要望すれば対応してくれるのが当たり前か? とんでもない誤解だ。カドカワ-はてなというものは、とどのつまり肝心なユーザー対応は何一つしたりしない」
カドカワ
「ランキングで勝たねばダメだ…。おまえらは「なろう」「理想郷」での闘いに負けに負けて今ここにいる。折り紙付きのワナビだ。今日はそのクズを集めた最終戦。ここで負ける奴の小説などオレはもう知らん」
カクヨム公式ブログ
「読みもせず評価★を入れることがそもそも論外なのだ……」
相互ワナビ
「その★評価三つちゅうとこ。四つはできんとこがミソ。つまり、誰でもええ、ここにいる誰かと組んで評価を入れ合えばええんちゃう…?」
前準備万端ワナビ
(公開開始後わずか1分、あっさり殺された…。前もって準備していたら新着に載らない。ただ統計にあるPV 0という絶望的状況に押し潰されていた。光明はなかった)
カドカワ
「このユーザーは今、複垢を作って★評価を入れた。最初に言ったはずだ、そういう行為は一切認めていない」
★評価ランキング上位ワナビ
(おれたちが★評価とレビューを1000回ばらまいたように、このサイトの誰かが10000人のユーザーをフォローした)
絶望ワナビ
「まだわからねぇのかよ。そういう話の面白さ、更新頻度、文章量が通用するのは「なろう」なんかのことで、こと「カクヨム」に限りそういうのは通用しねぇ。考えてもみろ、相手は運否天賦のランダムピックアップ。そんなものがこっちの努力でどうにかなるとでもいうのかよ」
フォロー爆撃ワナビ
「関係ねえ、他人なんか関係ねえんだよ。俺なんだ、俺なんだ…!」
ランキング前★10以下ワナビ
「フォロー爆撃…、新着連打…こうなったら毒食らえば皿までも…!」
俺Tueee.Net! Ψ(`∀´)Ψ
「無理もねえさ…お前らのフォロー爆撃には信頼関係なんてない。100%利害だけでくっついた仲だ。非公式検索ができれば晒し上げられるさ。機会さえあれば通報されて当然さ。その機会を…俺が与えてやったんだ」
BANされたワナビ
「この★も、PVもオレのもの。手放さない…」
ランキング前★評価回収ワナビ
「相互フォローや相互評価でもらえるのは、いつ消えるかわからない★評価やランキングに関係ないフォローのみ。そんな程度のものだ。本当に肝心なランキング前の★は保証されない。その当たり前の認識が甘かったな」
ランキング確定ワナビ
「見苦しいわっ…! ランキングに載れんのはおまえの甘さ…迂闊だったからだ…!」
こうしてワナビたちの長い3月のうち、狂気と策略の交差する1週間余が終わった。
作品数約1万5千のうち1万以上が初回ランキング及びその後の1ヶ月でも浮上できず、★3つにも至らず「カクヨム」に呑み込まれて消えた。
彼らのワナビとしての人生は始まったばかりだ。
ここから先は悲惨の一語。