第二回目は秋月罪歌です。
前作は亡國覚醒カタルシスという曲を聞きながら書いてました。
DaysではFLOWの贈る言葉を聴きながら書きました。
Days2:秋月罪歌
Days 2
私は呆然と日々を過ごしていた。
毎日朝から晩まで呆けるか、何かを考えて過ごすだけの日々。
全てが終わってしまい、私は燃え尽きていたのだ。
(・・・私は、どうすればいいのだろう?)
戸籍等、その他の経歴は正宗が全て、改竄、隠蔽をしてくれている。
だから普通に何でも出来るはずなのに、何も出来ない。
いや───怖いのだ、今まで裏の世界で十数年間復讐に生きてきた自分が今更・・・と言った思考に悩まされている。
夢とか希望とかは考えた事が無い、ただ復讐を───それだけで私は生きてきた。
(もう、年も23か24だっけ? ・・・数えてないからよくわからないや)
まだギリギリ人生を取り戻せる年齢。
だが、いざ何かをやろうとするにも、何も浮かばない。
「あ、姉ちゃん」
そんな思考の渦に私が陥っていると声がかかった。
顔を上げて、声のした方を見ると双子の弟の狂が立っている。
「なに?」
「これから、どうしたいか決まった?」
「ん・・・決まってない」
狂は決まったのだろうか?
昔から、この子はあまり考えずに行動する事があるからなぁ・・・
「俺は、一応秋月の長男だ・・・秋月の血を絶やさない義務があると思うんだよ」
「そう・・・やっぱそうだよね」
そう、この世に居る秋月はもう私達だけだと思う。
だから狂は長男として、妻子を持ち新たなる世代へと秋月の血を受け継がせなければならない。
すると、狂は私に言う。
「だからさ、姉ちゃんは好きな事してもいいんだぜ」
「・・・え?」
「俺が5、6人子供作りゃ、跡継ぎには困らない、次の世代がまた5、6人作れば一族はどんどん増えていくからな」
「狂・・・」
「俺は妻や子を俺達見たいな目にはあわせたくない、呪いの子とかそんなんで人を括りたくねえ。
だから・・・俺はそんな因習に囚われない秋月を作って生きたいと思うんだ」
純粋に、狂は凄いと思った。
私達の全てとも言えた復讐を果たし、私は抜け殻状態になっている。
だけど、狂はもう・・・新しい道を見つけて歩き始めようとしている。
だけど私は・・・
「姉ちゃんは、ずっと誰よりも頑張ってきたんだ・・・目標が見つからないのも無理も無いと思うよ」
「でも・・・」
「蒼二や命も新しい道に進んでいるけど、自分のペースでいいと思うぜ」
「・・・うん」
「まぁ、そういう事で・・・ああ、それと正宗が呼んでたんだった」
「ん、わかった」
私と狂は八神の屋敷の中を移動し、正宗の執務室へと入った。
ノックをして、部屋に入ると正宗が笑顔で私達を迎える。ああ、今日も変わらぬ日常だなぁ、何て思う。
隅の方の椅子には息子の時雨も座っていた、何か緊張しているのだろうか、冷や汗をかいていた。
「やぁ、すまないね。そこに座ってくれ」
「わかった」
私と狂は、正宗の対面に座る。すると、早速話を切り出された。
「単刀直入に言おう、二人ともアルバイトをしてきなさい」
「・・・ハ?」
「・・・あ?」
「狂の進みたい道は大いに僕も賛成だ、罪歌はまだなんだよね?」
「まぁ・・・ね」
ずっと貴方の傍に居て、貴方の手伝いをしたいとは口が裂けても言えない。
だけど・・・・・・これだけは本当にやってみたい事かもしれない、等と思ってしまう。
八神の仕事で忙殺される正宗、それを手伝う私・・・・・・・・・・フフッ。
・・・いやいや、思考が乱れた、今は正宗の話に集中しよう。
「それで、何でアルバイト?」
「君達に足りない物が、そこにある。まぁ、数日だけじゃ感じられないかもしれないけどね」
・・・正宗の言いたい事がよくわからない。
私達は一応勉学は緋澄に命じられて多少は嗜んだと思う、交渉だって何度もしたし、修羅場もいくつも潜り抜けてきた。
それに、緋眼や式神と教え込まれた体術もある。力も申し分はないと思う。
「じゃあ三日後にこの場所へ行くように」
一枚の紙を渡された、それを読むとそこにはこう書いてある。
株式会社ヤガミ
給与時給900円以上
資格
18〜30歳位迄の方 未経験者大歓迎!!
勤務時間
10:00〜19:00
勤務開始日
即日勤務OK!!
仕事内容 子供用イベントの監視
子供達の安全を見守って頂くことがお仕事です。簡単な研修がありますので、あなたもすぐに慣れますよ。
・・・久しぶりに果てしない不安という物を味わった。
三日後、私と狂はとあるイベントの面接会場へと赴いていた。
そこは何かのアウトレットパークのような場所で、大変な賑わいを見せている。
私と狂はそんな空気に殆ど馴染むことなく、生きてきたので驚きの連続・・・というよりも驚愕に近い。
改めて自分がどれだけ世界からどれだけ外れていたのかを再認識しながら私と狂は歩く。
それにしても、この人ごみ・・・凄くウザったい。
(緋澄もそう思わない・・・?)
そう無意識のうちに声をかけてしまった。
しかし、緋澄はもう居ない・・・十数年間一緒だった大切な同胞は世界を、私を守るために散ってしまった。
だけど、いつしか人は慣れてしまう、自分の心にフタをして、自分を保つために。
だけどそれだけは嫌だった──この心の痛みですら、私と緋澄が一緒に居たという何よりの証拠だから・・・
「姉ちゃん、あそこみたいだぜ」
狂が指を指した先には一軒の建物がある、いかにも事務所っぽい建物だ。
確か剣菱と始めて会ったのもあんな建物だった気がする。私と狂はノックをし、返事を聞くと中に入る。
扉を開けた先に居たのは初老の御婦人。どうやら彼女が私達の雇い主なようだ。
「えっと・・・秋月さんですよね?」
私達二人を見ながら初老の女性は言う。
そして私は、前に一歩踏み出し、一礼をすると応える。
「秋月罪歌です」
狂もそれに続く。
「秋月狂です、本日はよろしくお願いします」
意外な事に狂は被っていた帽子を取り、きちんと挨拶をした。
金髪も辞めて、元の黒髪に戻った狂は、やや顔つきが険しい物の普通の少年に見える。
それに比べて私はどうだろう・・・・・・一応女性としての嗜みはしているつもりだが、それは主観であって客観ではない。
そんな事を私が考えていると、初老の女性は続ける。
「では、こちらの洋服を着てください、早速研修に入りますよ」
服の上からその会社のロゴが入ったシャツみたいな物を羽織る。
これが産まれて始めたのバイト着・・・中々可愛いじゃない。
そして私達は着替え終えると、その女性についていった。
研修は主に器具の操作の仕方や心構えについてであった。
私と狂は別々のフロアに分けられて、それぞれの持ち場のやり方、作法、その他について教わる。
私のフロアは巨大な風船の中と、外にある遊具で遊ぶ子供達の管理である。
ぶっちゃけ、私には子供を育てる才能が無いと思う、愛情を全く受けないで育ってきた子供に親が務まるとは思えない。
そこまで考えて、正宗は私にここで働かせる事を決めたのだろうか?
「あのぅ・・・?」
いやいや、あの正宗の事だ、何かきっと裏があるに違いない。
今でこそ正宗は温和だけど、昔は凄い策略家だった気がする。息子の時雨はさらに腹黒いし。
ああ、今思えば死罪六神時代にも八神の策略に何度か嵌められたな・・・全く、何て腹黒い。
「あ、あの!」
そういえば浅葱陸人が言っていた正宗ロリコン疑惑はどうのだろう。
・・・もし事実だとしたらかなりよくな───
「もしもーし!!」
「は、はい?」
どうやら思考の深みにはまってしまったようだ。
私の目の前には、同じシャツを着た一人の女の子が立っていた、多分年下であろうその少女。
中々にオシャレだった、明るく染めた髪、耳にはピアス。服装だって中々女性らしい。
純粋に───羨ましいと思った。そしてその少女は言う。
「あ、私・・・岩瀬奈央って言います。えっと・・・今日から入る方ですよね?」
「あ・・・秋月罪歌って言います。よろしくお願いします」
「あきつきざいかさんですか、変わっててかっこいい名前ですねー」
そりゃもう、呪いの子につけられた名前ですから・・・とは言えない。
それにしても秋月罪歌って名前を褒められたのは始めてである、まあお世辞だろうけど。
「えっと、まず子供達に話しかけられたらスマイルで、そして危ない子は優しく諭してあげてください」
「あ、はい」
「怒るのは厳禁です、なるべく諭すように言ってあげてくださいね」
・・・この仕事、絶対に狂に向いていないと思う。そして私の頭の中には嫌なビジョンが浮かぶ。
子供にキれ、神舞を発動させ狂喜乱舞している狂の姿・・・いや、流石にそこまではないだろう。
精々殴りかかるぐらい・・・・・・・ってかそれもマズイわね。
「あ、あの秋月さん?」
「は、はい!」
「あの・・・そろそろ子供達の方お願いしますね」
「わ、わかりました!」
私は緊張しながらアスレチック広場の子供のほうへ向かう。
同僚の岩瀬さんは風船型ドームの中へ入ってしまっているので実質私一人。
落ち着け・・・落ち着け私・・・成せばなる、やれば出来る・・・頑張れ!
「おねーちゃーん、あそぼ」
可愛らしい子供が近づいてくる、私はしゃがんで視線を合わせると男に笑いかける。
自分でも会心の笑顔だと思うほどの笑顔だ、これなら子供も懐いてくれるだろう。
「うん、何して遊ぶ?」
「皆で氷鬼しよー」
氷鬼・・・確か北のほうにでる悪鬼・・・じゃない、確か鬼に触られると凍ってしまって動けなくなるゲームだ。
すると、周囲の子供達が一斉に集まってきた、その数ざっと見た感じ十。
どの子もニコニコと笑い、私を見ている・・・・・・もしかして私が鬼?
「おねーちゃんが鬼だぞー」
子供がワーっと散っていく。フン・・・・・・面白い、緋眼使いの私から逃げようとするとは。
私は大地を踏みしめ、走り出す・・・だがやってみると中々にこれが難しい。
アスレチックの地形を上手く利用している子供達はいろいろな場所をスルスルと抜けて、私をかく乱する。
「おにさんこーちらー」
「おねえちゃーん、タッチしたよー」
周囲から子供達の声が響く、これじゃあキリがないわね。
私は一瞬目を瞑り、緋眼を発動させ、目標の子供達を一瞬で視認すると駆け出す。
アスレチックを物凄い速さで登り、子供達にタッチしていく、時には宙返りや、壁蹴りも披露し私は一気に七人タッチした。
そして地面に着地すると緋眼を解く。
「おおー! おねえちゃんすげえ」
聴覚等が通常の状態に戻ると万来の拍手が聞こえた、周囲を見ると沢山の人が私を見ている。
しまった・・・!! どうやら私は本気を出しすぎたらしい、すると遠くから岩瀬さんが駆けて来て私に言う。
「あ、秋月さん・・・?」
「ご、ごめんなさい・・・ちょっと熱くなってしまって」
「まぁいいんですけど・・・安全には気をつけてくださいね?」
「わかりました・・・」
岩瀬さんが再び風船の中へと戻っていく、私はため息をつくと子供達の方へと戻った。
子供達は目を輝かせ、私を見ている・・・これはこれで気分がいいかな。
「すっげー!」
「あれどうやってやるのー?」
子供達が私に纏わりついてくる、不思議と悪い気分はしない。
というよりもこういうのは始めての経験だ、私と狂は秋月にも学校にも友達は居なかった。
正宗と訓練している時が唯一の安らぎだった生活、多分・・・こっちが本当の子供が遊ぶべき事だったんだ・・・
そして、私は更に見た。
「はい、マー君良い子にしてたかな?」
「うん!」
子供を愛おしそうに抱く母親の姿、私達には決して見る事の出来なかった姿。
誰に愛されるわけでもなく、呪いの子として生きてきた私達。私はそれに多少なりの感動を覚えた。
親の愛って、力よりも、式神なんかよりもずっと大事なのかな・・・
「おねえちゃんどうしたのー?」
「はやく遊ぼうよー」
私もこの子達を愛してみよう、いっぱい遊んで、いっぱい笑って。
私達みたいな不幸な子なんかにはしたくない、この子たちには笑っていて欲しい、心からそう思った。
そう決意し、私は元気良く返事をした。
「うん! いっぱい遊ぼう!」
そろそろ夕方になった、子供達は私に手を振って帰っていく、中には泣きながら別れを惜しむ子まで居てくれた。
かなり疲れたが、心地良い疲労感が漂っている。私にも人が愛せると知ったから心がとても清清しい。
すると、岩瀬さんがジュースを持って現れる。
「あ、今日はお疲れ様です。これどうぞ」
「ありがとうございます・・・」
岩瀬さんからジュースを受け取り私はいっぱい口に含む。
ああ、五臓六腑に染み渡るってのはこういう事なんだなぁ・・・
「秋月さん、凄く楽しそうにしてましたね」
「ええ、こうやって遊んだりするのは、多分産まれて初めてだから」
「ハハッ、そんなオーバーな。でも、やっぱ子供っていいですよね」
「そうですね・・・子供は良いです」
「私、お父さんが教師やってて、その影響でこんなアルバイトやってるんですよ」
「へぇ・・・」
「秋月さんはどんな理由なんですか?」
「お前に足りない物があるから、ここで働いてみろって言われたんですよ」
「へぇ、お父さんにですか?」
「いや・・・父親とは会話した事ないです。それにもうとっくに死んでますし」
「あ・・・ごめんなさい」
「いえ、事実ですから」
私が軽くそう笑うと、しばらく会話が途切れた、しかし、意外に気まずくなってない。
そして私達はしばらく座りながら、黙ってジュースを飲む。
「親代わりだった人に言われたの」
「え?」
「父も母も親戚も、私達を疎んだ・・・でもその人だけは私達を唯一かまってくれた」
「へぇ・・・素敵な人ですね」
「うん、ちょっと狡賢くて、腹黒くて、それでいて強い人」
「ハハハ、なんですかそれは〜」
私と岩瀬さんは笑いあった、歩んできた人生は多分対照的、だけどこうやって笑える。
過程なんて関係ない、今が良い状態ならばこうやって私は全く違う世界の人とも関われた。
今日はかなりの大収穫だ、これから私の人生はこうやって新しく始まっていく。
好きだの愛だのは後回しにしよう、色々な事を見て、色々な事を体験しよう。
───心から、そう思った。
緋色の眼シリーズキャラ投票
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