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水色桔梗ノ末裔  作者:げきお

天下一統への道

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116話 学府開設計画

天正十年六月十五日
俺は近江坂本城に居た。父光秀が帰還していたこともあり、今後の内政計画の他、意見交換等をするためである。そこには転生者として、大蔵長安、鈴木孫三郎、そして源七も呼ばれていた。
計画では技術を進歩させ、それを普及させる事を目標に掲げている。

「父上……畿内制覇が成就いたし、内側にも目を向ける事が可能になりました。色々考えたのですが、領土内のより安全な場所に学校を作りたいと思うのですが……」
俺はずっと考えていた事を提案した。

「学校……とな?」
光秀は聞きなれない言葉に目を白黒させた。

「はい。これは未来での言葉なのですが、要は知識のない人間でも教えられることにより、それを身に着ける事が可能です。その知識を普及させればより国力が強化されます。日ノ本統一事業に邁進するうえで、技術革新は待ったなしの状況です。
長安殿に新たな研究をして頂き、孫三郎殿には一緒に新兵器の開発をして頂きたいのです。また、望月千代殿に医術の研究を進めてもらい、それを他の人間にも習得させ進歩させるのです。そのためには、ひとつの場所において学ぶのが効率的です。そこでは人材交流もあり、知識の交流もありまする」

「成程……考えましたな。某は時期尚早と思うておりましたが、畿内統一がなされた今なら可能やもしれませぬ。有望な若年者を領内から募り、知識を学ばせることが出来れば、将来への布石になりまする」
長安がそう賛意を表明した。

「しかし、その知識の流失に対する対策はどうなされる?
畿内を制したと申しても、まだまだ道半ばでござろう?」
孫三郎がそう懸念を表明した。

「其処が悩みどころです。誰にでもその知識や技術を教えると、軍事利用され兼ねませぬ。故に、当初は身元の明確な若者を召抱えたうえで、出奔などされぬよう監視しながらになりましょう」

「十五郎……其方等の考えはわかった。では、滋賀郡内にその土地を提供しよう。建物はそう大規模でなくても良かろう?早速準備するがよい」
光秀は予想通り即決した。

「父上、忝のうございます。必ずや成功させまする。
長安殿には、すべてをお任せ致しますのでお願いできまするか?」

「承知した。研究したいことが山ほどあるのです。
で、孫三郎?早速だが、銃火器の研究に力を貸してくれぬか?」
長安が目を輝かせながらそう提案した。

「一処におるのは性に合いませぬが……致し方ない。やってみましょう
実は火縄を使わない銃を作りたいと思うておりまする。
仕組みは簡単ですが、やはり加工技術が難しいのですが……
それも分業することにより、効率化はできましょう」
孫三郎も満更でもない様子である。

「それと父上……甲賀の件でございます。
徳川殿は伊賀甲賀衆の合力で三河まで逃げ果せました。
甲賀の地は、必ずしも我等の味方とは限りませぬ。
そこで、甲賀衆を完全に支配下に出来ぬものでしょうか?」

「甲賀の地は自存自衛の地であるからな。過去には六角殿に皆味方したこともあったようじゃが、この乱世で小領主が割拠して居る。源七……頭領に聞いても詳しくはわからぬかの?」
光秀が問いかけた。

「某も詳しくはわかりませぬ。何か良い案はないものでしょうか?」
源七も要領を得なかった。

「仮定の話でございますが、甲賀の地を治める者を配置し、その者を旗頭として与力させるという方法は取れぬものでしょうか?甲賀衆は情報を司る者達……彼らの忠誠心を得ることができれば、情報収集力が飛躍的に向上致しましょう。難しいかとは思いますが……」

「十五郎の言わんとすることはわかるつもりじゃ。
わしも考えてみるとしよう。伊賀や伊勢方面との勢力図が係ってくるかと思う。
まずはそれからであろうな……」

「それと父上……味方された方への論功行賞と堺の街をどうするかが肝要かと……」

「うむ……わしの考えじゃが、堺は直轄領とし、代官を派遣して治めさせる。また、和泉・紀伊は雑賀と根来で治めてもらおうかと思うておる。孫三郎殿は如何に思われるか?」
光秀は腹案があることを孫三郎に伝えた。

「日向守殿……某は政治的な事は不得手でござる。
ましてや父や土橋殿、津田殿も国を治めるという事は経験がない事でござる。
どう思われるかはわかりませぬ。
父、孫市は困った顔をしそうですが……
もう一つございます。雑賀には父以外にも頭領が何名も居りまする。
国を治める領主ともなれば、身分の上下ができましょう。
雑賀や根来の風土に合うかどうか……自信が持てませぬ」
孫三郎は正直な感想を包み隠さず語った。

「成程の……これはわしが卒爾であったかの……
では、孫三郎殿から上手く伝えてもらえぬか?
もし無理という事であれば、それに代わる恩賞を考えねばならぬ故な?」

「はい。某も一度雑賀に戻ります故、相談して参ります」

「頼み入るぞ……誰しも経験など初めからないのじゃ。
やってみれば、案外上手くできるやもしれぬ……
甲賀の事もあるが、わしはいずれ甲賀の地を源七に任そうかと思うておる。
今すぐにとは言わぬが、考えてみぬか?」
光秀はそう言いだした。

「いや……某などは卑しき身分の忍びにござる……
そのような途方もない話……」

「源七……よく聞くがよい。
これからは身分など、日ノ本から無くなっていくのじゃ。
前右府殿は、出自や身分に関係なく人物を取り立てた。
貧農の出自の羽柴殿や、浪人者であったわしもじゃ。
そのような能力主義を貫いたが故に、短期間で日ノ本を治めるところまで来られたのじゃ。わしもその考えは正しいと思う。よって、今後も前右府殿の方針を踏襲しようと思うておる。
元来、それが正しいやり方なのじゃ」
光秀は滔々と語った。

「今すぐにとは言わぬ。源七はそう心得て励んでくれ」

「ははっ……勿体なきお言葉……」
源七はほかに言葉が見つからず、俯いてしまったが……

「父上……もしそうお考えなら、源七を侍大将に取り立てて頂けませぬか?」
俺はそう提案した。

「滅相もない……某は大殿と若殿の御側でお仕え致したく……」

「源七……役目は其のままで良い。
お前が侍大将となり、明智忍軍を組織化し率いれば良いではないか?
まずお前がそうなれば、配下の者たちの励みにもなろう?
手柄を立てれば、自分も出世の道が望めるとなれば奮起しようぞ。
それにな……忍び衆が身分が低いままという時代は終わる。
わしは、そういう日ノ本を作るつもりじゃ」

「しかし……」
源七はなお、拒絶とも取れる表情のままだ。

「明智源七郎と名乗るがよい。諱はそうじゃな……
明智源七郎慶秀……で、どうじゃ?
わしと、十五郎から一字ずつ……安直であるが、よい響きじゃ」

「明智姓を名乗るのでござりますか?
そのような大それた事……お受けできませぬ」
源七は、しどろもどろになり体を硬直させている。

「源七殿……有難くお受けすべきと思うけどなぁ」
孫三郎がさり気なく追従してくれた。

「よし……決まりじゃ。これは主命と心得よ。
明智源七郎慶秀……侍大将を命じる。
今後は明智忍軍を配下とし、家臣団を組織せよ。
この役目は我等の根幹にある重要なものじゃ。
諜報の他に、転生者たちとの連絡、警護……
山ほど役目はある。今の人員では少なかろう?
信のおける者をもっと増やさねばならぬぞ……良いな?」

「ははっ……源七、このご恩を終生忘れませぬ」

「うむ。忘れておったが、旗印は桔梗紋を使ってもよいぞ?」

「もうこれ以上はご勘弁を……
桔梗紋を使った別の意匠を考えて旗印とさせて下さりせ」

「ワッハッハッハ……ではそうするがよい。
今後とも頼み入るぞ……」

こうして、有意義な時間を過ごしたのである。
その後、孫三郎は雑賀に向かい、源七は隠れ里に向かった。
まだまだ考えることが多すぎる。
俺は、日本地図を広げながら飽くことなく想像し続けていた……
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