MAGIC34-1〜翼と緋睡の災難〜
ル―クとの戦いから3日が過ぎたその夜中のことだった。
今日も今日とてソ―サリ―・クリスタル探しに精を出す翼と緋睡と紗代とプリムラは、現在翼と緋睡の通っている高校の裏山でソ―サリ―・クリスタルと格闘していた。
直径70センチほどの球体が蒼白く光ってそれが空中を漂いながら逃げているのを翼たちは追いかけている最中だ。
木と木の間をくぐり抜けながら巧みに逃げ続けるソ―サリ―・クリスタル。この翼たちとソ―サリ―・クリスタルの追いかけっこが始まってすでに1時間経過。いい加減しびれを切らし始めている。
「あ、兄上…。いつまで…追いかける…おつもりですか……」
「しかた、ないだろ……。あのソ―サリ―・クリスタルが……止まってくれればいいんだけどね……。もしくは……実際に手でとっ捕まえるか……」
息を切らしながら会話する兄妹。ちなみにその2人に続いて追いかけていた紗代とプリムラの姿はいつの間にかいなくなっていた。どうやら翼と緋睡の走りについて来れず完全に離されたようだ。
よって2人で捕まえることになる。
「兄上……。やつが頂上までたどり着いたら……はさみうちで2人で捕らえますよ」
「ああ……わかった……」
頂上までソーサリ―・クリスタルを逃がさないようにしっかりとついていくことにする翼と緋睡。もともとこの木々が鬱蒼と茂っている中、捕まえること事態が非常に難しいことだ。
だったら木が生い茂っていない、ただの大樹1本が聳え立っているだけの頂上付近で捕まえたほうが一番いいというものだ。なにせ木がない分動きやすいのがその理由だった。
おまけにこのソ―サリ―・クリスタル、どうやらまったく攻撃手段などは持ち合わせていないようで、近づいて実際に触れて捕まえても害はないといっていいだろう。
やがて頂上付近までたどり着こうとするその前に、翼と緋睡は二手に分かれることにする。
ひとりは引き続いてソ―サリ―・クリスタルを頂上へ誘導し、もうひとりは大回りして反対側に回って、そして一気にはさみうちで確保しようという作戦を実行するためだ。
そしてその大回りして反対側に回る役目を緋睡が担当することになり、緋睡は即座に行動に移す。翼は無論、ソ―サリ―・クリスタルを頂上まで移動させる誘導役だ。
そしてその計画は成功の兆しを見せ始める。ソ―サリ―・クリスタルは作戦通りに頂上へと逃げて行っているからだ。
やがてソ―サリ―・クリスタルは林となっている部分を通り抜け、一本の大樹のみが聳え立っている頂上付近に顔を出した。
そのとき、翼は今持てる全力の足の速さを見せる。そして緋睡もそれに合わせて反対側からソ―サリ―・クリスタルを捕まえにかかる。
「もらったぁッ!」
「いただきましたッ!」
翼と緋睡の声が見事にユニゾンする。そして2人は同時に蒼白く光るソ―サリ―・クリスタルに触る。――瞬間、2人の身体がソ―サリ―・クリスタルと同じように蒼白く光ったかと思うとすぐにその光は止む。
そしてそんな現象が止むと共に、ソ―サリ―・クリスタルも活動を止め、蒼白く光るのが止まった。
ソ―サリ―・クリスタルの大きさは、光っているときは直径70センチほどだったのだが、実際は直径10センチほどの水晶玉の形だった。
「……ふぅ、なんとか終わったね、緋す……」
「そうですね、兄う……」
安堵の言葉を互いにかけようとした瞬間、2人は互いの姿を見て言葉が止まる。
沈黙がしばらく続く……。そして緋睡は眉間辺りをポリポリと人差し指でかいて、こう言った。
「……気のせいかな?僕の目の前に僕がいるような気がするんだけど」
その緋睡の声を聞いて翼も、
「わたくしもです、兄上。気のせいか、わたくしの目の前にわたくしがいます」
互いの言葉に2人は沈黙する。そして今の自分たちの服装を見てみる。
翼は男であるにもかかわらず、神社の女性が着ている…いわば巫女服を着ており、そして両袖部分には長い幾何学模様の入ったリボンを巻いていて、自分の髪は紅身がかった黒色で、しかも腰の部分までとどくほどに長い。その長い髪を赤いリボンでひとつに束ねている。
一方緋睡の服装は、身体にピッタリの紺色の服に身を包み、色は服同様で二の腕ほどある手袋の上から重ねるように銀色に輝くガントレットをはめ込み、燕尾の形をした蒼いマントを肩からしており、腰には黒色のベルトをして、そこに剣をさげている。自分の得物ではない剣を。
互いに自分の服装を確認して、そしてもう一度互いの顔を見てみる。
翼たちの目が節穴でなければ、間違いなくそこにいるのは自分自身だった。つまり、翼の目の前には翼がいて、緋睡の目の前には緋睡がいる。
やがて現状を把握したのか、翼は顔を片手で覆い隠すようにいてしまったとばかりのしぐさをした。
翼は口を開く。
「兄上。現状を把握できましたか?」
翼の身体の口から発せられた緋睡が普段話しているような口調。
信じたくはない……。
そう思いながらも緋睡の首は横に振る。一種の現実逃避というやつだろうか。
そしてそんな緋睡に、翼はこう告げる。
「どうやらわたくしたち、精神が入れ替わってしまったようです」
緋睡の……否、翼の嫌な予感は的中した。
そしてこの場面はこういうべきなのだろうと思ったのか、中身は翼で外見は緋睡の翼は高校の裏庭の頂上で、叫んだ。
「なんだってえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!」 |