MAGIC33-7〜Battle of night/Tsubasa teamVS Luke〜
「準備はいいのかい?」
「ああ。……いくぞ、ル―クッ!」
それが翼たちとル―クの戦いの幕開けとなった。
翼は腰のベルトにさげている鞘から剣を抜き、自分の身体の正中線とぴったしになるように構える。
緋睡も召喚法で自分の得物である和弓を取り出し、いつでもル―クを射ることができるように構え、紗代も剣十字の杖を翼の剣の構えのようにしている。
そんな翼たちの様子を見て、ル―クも武器を何もない空間から召喚法で自分の得物を取り出す。
前回の翼との戦いでは自分の得物をまったく使わなく、結果敗北していたル―ク。
「翼君。わたしは前回、君たちの実力を過小評価していたみたいだよ。だから今回は久しぶりにわたしの得物を使わせてもらうよ」
何もない空間から召喚法で取り出したル―クの得物。それは投剣だった。
投剣を右手の指と指の間に計4本。まるで鉤爪だ。
「前は本気じゃなかったってことかい?」
「まあね。さっきも言っただろう?君たちを過小評価していたってね。だから今回は、少しだけ本気を出してあげるよ」
出してあげるよと来たか……。
まるで仕方ないから相手をしてやると言わんばかりの口ぶりだ。
だがこれもル―クの挑発なのだろう。これにのって突っ込めばどうなるか翼たちにはわからなかった。が、少なくともいい結果に結びつかないのは確実だろう。
ましてや相手は投剣。今までまったく相手をしたことのない武器の持ち主ゆえ、注意する必要がある。そのとき、ル―クの微笑は消えていた。
しばらくの互いの硬直、そして静寂が辺りを包み込んでいた。雪は静かに降っているため、さらにその静寂さが引き立っている。
「……どうしたんだい?かかってこないのかい?」
その静寂を先に破るのはル―クの声。
そのル―クの言葉に、翼たちは首を縦に振ることもなく、また横に振ることもなかった。もちろん、言葉を発したわけでもない。
「そうか。なら――」
ル―クはその瞬間、わずかに口元を緩ませる。本当に注意してみないとわからないくらいに。
そして投剣を振りかぶり、
「――こちらからいかせてもらおうか」
振り下ろした。
その瞬間、ル―クの投剣が翼たちに向かって一直線に飛んでいき、襲い掛かる。
翼たちはすぐさまその場から退避して、各々の戦闘位置に立つ。
緋睡は弓を構え、ル―ク目掛けて手始めに矢を一矢射た。
矢は変な弧を描くこともなく、ル―クの投剣がとんでいった先とは真逆の方向へと飛んでいき、ル―クを襲う。
「Rise.――A shield of an immediate effect」
だがその緋睡の攻撃はル―クに当たろうとしたとき、ル―クが自分の身体の回りに展開した不可視の障壁によって不発に終わる。
だが、これは緋睡にとってはまだまだ想定範囲内だ。初めから矢一本だけで倒せるとは思ってもいない。そこまで弱い相手ではないことはこの場にいる全員わかっていることだった。
ル―クが緋睡の矢を防御した矢先、次は翼がル―クに急接近する。
その間に後援担当の紗代は「Unfold」と始動キ―を唱えて魔術詠唱に取り掛かっている。
翼はその魔術を発動させるまで紗代の盾になるというわけだ。
「The shining and thunder light of the spark which removes the darkness converting, ――」
それに気づかないわけがないル―ク。紗代の詠唱を妨害しようと投剣を再び召喚するが、迫ってきた翼によって妨害される。
投剣としてではなく、鉤爪として使い翼の斬撃を受け止めるル―ク。そのまま力の押し合いとなる。
翼は両手持ち、ル―クは右手のみで力押しをしているため、力の押し合いの分には翼のほうが有利である。そのため徐々に翼はル―クを押していく。
「it gives judgment to thou――」
「…くッ!」
このままでは確実に魔術を発動させられると思ったル―クは、左手にも投剣を召喚し、鉤爪の要領で翼の腹部を裂いた。
「ぐ…あぁ……ッッ」
ル―クの攻撃が来ると思ったときには時はすでに遅かった。
飛び退こうとしたときにル―クの攻撃をまともに受けたため、結果的にぶっ飛ばされたように雪で積もっている地面を背から滑った。
さらにル―クは、その翼の血で染まった投剣を魔術詠唱中の紗代に目掛けて放つ。
「ッ!!」
危険を察知した紗代は瞬時に魔術詠唱を止め、その場から離れる。
あと少しで魔術を発動させることができたため、おしいとは思っていても命には代えられない。
それよりも今は、翼の治療をするのが最優先だった。
翼の腹部は物の怪の鋭い牙か爪でやられたかと思われるように大きく腹部が一文字に裂けており、そこからとめどなく血が流れている。
流れた血で翼の周りの雪はイチゴシロップをかけたかき氷以上に紅く染まっており、翼は痛さのあまりその場で肩膝をついて、傷口を手で押さえている。
「Unfoldッ!――In the companion who is hurt light of blessingッ!――」
ル―クは翼に治癒をかけようとしているのを止めようとはしない。どうやら死人を出す気は毛頭ないようで、攻撃魔術のみ対処してくるみたいだ。
「――Healing strengthッ!」
紗代が唱え終えると、翼の傷口部分に緑色の光が集まる。とても優しい光だった。
やがてその光が止むと、翼の傷口はみごとに塞がっており、痕もない。ただ、その部分だけ服が裂けているのだが、服は治癒術では直せないようだ。
一方ル―クは、もう戦う気もないのか投剣をしまい、
「今日はこの辺で終わりにしておこう。Rise.――」
足元に魔法陣を展開させる。戦う意思がなく、その上で魔法陣を展開させるその行動。魔術を使ってその場から逃げる気のようだ。
それを見て翼が叫ぶ。
「待てッ!」
「もう少し強くなれば、わたしも本気でお相手をしてあげよう。では、さようなら。――Spatial movement」
最期に頭を下げて一礼した瞬間、ル―クの姿が魔法陣内から電灯の明かりが消えるようにフッといなくなる。いなくなると同時に、公園を中心に張られていた空間結界も解ける。
公園に残ったのは翼たちだけ。
一度勝つことができた相手に負かされるほど辛いことはないようで、翼は小さく「くそ」と言いながら、拳を強く握り締め、ル―クが消えたその場所をただただ見つめるのだった。 |