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魔術師/BATTLE OF NIGHT
作:なかたく



MAGIC3-2〜天真との賭け〜


 ガラァと翼は自分の教室への扉を開ける。
 時刻は八時。教室にいる人はいなかった。

――さみし〜。

 一人そう思いながら自分の席である外の景色が窓から一望でき、しかも一番後ろの端っこで授業中居眠りしてても先生に見つかりにくいところに座った。

 ……………。

     ……………。

          ……………。

「暇すぎる……」

 仕方ないから登校したとはいえ、やることがなかった。かと言って緋睡に言われたとおり教室を掃除する気なんて翼には毛頭ない。
 ためしに窓の外を見る。見えるのは野球部の朝練で使用されているグラウンドと、学校の背後にある山……裏山があるだけだ。
 しばらくしてすぐ飽きる。
 仕方ないので、翼は自分のカバンから荷物を机の中にしまった後、とりあえず眠ろうとするが――

 ガッシャアアァァァァァン

「は―――はっはっはっはっはぁッ!!!翼よ、暇だろうから先輩様が相手をしに来てやったぞッ!!!」

――ああ、めんどい人が来た。

 はぁっと嘆息する翼。
 確かに翼は暇だった。……が、正直この人にだけは来て欲しくなかった。
 『暇だろうから相手をしに来た』と言うのもおそらく自分も暇だったから翼の元に来たのだろう。

「……なんだ?先輩様が来て下さったと言うのに、おまえはうれしくないのか?」
「ええ、全然。……というか」

 なんで自分に『様』を、しかも敬語を使うのだろうか、この翼の先輩こと神藤天真。
 たしかに昔の人は自分自身に敬語を使っていたらしいが、今の世は使わないだろう。

「まぁいい。あの巫女も今はいないから、おれは遠慮なくおまえと会話できると言うわけだ」
「そうですね」

 適当に眠りの体勢を保ちながら話を流す気満々の翼。
 そもそも、翼がこの先輩を苦手としているのにはわけがある。
 それは、なんだかんだ言ってもこの先輩は魔術師。そのため、天真も『ソ―サリ―・クリスタル』を集めているのだ。
 もっとも、翼たちほど真剣には集めていない。あくまで暇つぶし程度に『ソ―サリ―・クリスタル』を天真は集めていた。
 そのため、数えるほどではあるが何回か翼たちと天真は戦ったことがある。もっとも、互いに知り合いなので殺し合いまでにはならないのだが、それでも一般人視点から見れば異常なまでの戦いを繰り広げる。
 そんなことがあったため、翼は天真が苦手なのだ。とくに緋睡に至っては完全に天真のことを敵対視しているため仲が悪いのだ。

「……ところで翼。一つ言いたいことがあるのだが」
「なんですか?」

 すでに眠りかけの翼は、やや寝ぼけながらそう言う。

「賭けをしないか?」
「はい。……………はい?」

 あまりに唐突だったため、翼は耳を疑った。

「か、賭け……ですか?」
「うむ、そうだ」

 そもそも何の賭けなのか不明である。
 唐突なことだったため、翼はすっかり目を覚ます。

「賭けって、どんな?」
「……実はな、おれは発見したのだ」
「発見って?」
「『ソシアル・クリリントン』がある場所をッ!!」

 高らかに宣言するが、あきらかに名前が違っている。
 そんな馬鹿な先輩様に、翼はこう言う。

「……『ソ―サリ―・クリスタル』のことですか?」
「そうッ!!『ソシアル・クリリントン』のことだッ!!」
「だから『ソシアル・クリリントン』ではなくて、『ソ―サリ―・クリスタル』ですよ。一体どうすればそんなものになるんですか」
「まぁまぁ、皆まで言うな皆まで言うな」

 もうこの人のキャラがわからない。キャラどころか言っている意味すらわからなくなりそうだ。真剣にそう思うようになっている今日この頃の翼くん。

「それと、あまり『ソ―サリ―・クリスタル』のことを大声で公言しないで下さい。一般人の人たちにはわからないんですから。万が一わかってしまったら、僕たち魔術師どころか、裏の世界に住んでいる人たちにどんなことがおきることか……」
「うむ。それはすまなかった。――それで、賭けというのはな。その『ソ―サリ―・クリスタル』を使うんだ」
「ふ〜ん」
「ル―ルは簡単だ。おれがこれからおまえにその『ソ―サリ―・クリスタル』がある付近を教える。そこでいち早くその『ソ―サリ―・クリスタル』をゲッチュしたほうが勝ちだ」

 ゲッチュは古すぎるだろう、と心の中で思う翼。
 ともあれ、今回のこの先輩の情報はなかなかいいものだ。わざわざ探さなくとも場所を教えてくれるのだから……。

「それで、その場所は?」
「学校の裏山だ。そこで『ソ―サリ―・クリスタル』の気配を感じたのだ。まぁ、気配を感じただけで実際に見てはいないのだがな。……………どうだ?」
「賭けで勝ったらどうなるんですか?」
「その手に入れた『ソ―サリ―・クリスタル』と、昼食をおごるということでどうだ?」

 悪くはない。実のところ翼のサイフの中身は南極と北極よりも寒かった。
 そのため、昼食を腹いっぱい食べることができず、けっこう辛かったりしていた。
 実のところ、翼の親たちは弁当を作ってくれない。その代わり一ヶ月に一度昼食代としてまとめてお金を渡してくれるのだが、翼の場合そのお金の使用の計画性がない。例えるならば、つながり眉毛の警官のごとく、お金が手に入るや否や買いたいものを買いまくると言った感じだ。
 だけどこの賭け、負けると恐ろしいことになることも確かである。

「……」
「さぁ、どうする?翼よ」
「……よし、乗った」
「決まりだな。――それじゃあ、時間は今日の晩十時でどうだ?いつもそれくらいに家を出ているのだろう?」
「別にかまわないよ」
「それでは今日の晩、楽しみにしているぞ」

 ハハハハハハハハハハ……と高らかに笑いながら二年の教室を出て行く天真。
 いつからだろうか、もうすでにクラスメ―トたちが登校しており、その高らかに笑いながら出て行った先輩を呆然と見た後、次は翼に視線が集中する。
 その視線に気がつき、翼はわざとらしくあくびをすると授業が始まるまで眠ることにした。







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