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魔術師/BATTLE OF NIGHT
作:なかたく



MAGIC33-3〜雪合戦 前編〜


雪合戦を5人でやることにする翼たちだが、実のところ5人でも雪合戦には少ないほうであり、せめて10人ほどは欲しいと1人思っていた翼だが、いまさらどうにもならないことである。
残りの翼の主な友達といえば凛子りんねようだが、翼は誘わないでいた。
――というのも、雪合戦のル―ルのせいでもある。
これから翼たちがおこなう雪合戦においてのル―ルはというと、


1 個人戦。

2 雪玉が3回当たったら負け。

3 雪合戦は真道家の敷地内全体で行われる。敷地内から出れば強制的に負け。

4 時間制限は雪合戦開始から7時間。それ以内に決着がつけばその時点で終了。つかなかった場合は一度集合した後一騎打ちをする。


ここまでは普通といえば普通である。
問題はこの後からである。


5 初級・中級魔術なら攻撃系防御系補助系含めて全部で5回まで使うことができる。ただしあまり派手でないものに限る。

6 虚空移動は使用禁止。


どう考えても一般人が参加していいル―ルではない。だから翼は凛子や葉を呼ばなかったのである。
ちなみにいうと、このル―ルを提案したのは天真である。そしてそれに反対するものはいなかった。
実際反対したところで抗議の声は天真の鼓膜の内には届かないだろう。鼓膜の外ではじかれるのがオチだ。
そしてなにより、翼たちもこのル―ルは面白そうだと思っているからであった。
だが、少し気になるというか不安なことがひとつあった。

「先輩。別にこれでかまわないんですけど、念のために僕の家に空間結界でも張ったらどうです?」
「うむ、それもそうだな…」

翼のそんな意見にもっともだと思った天真は顎に握りこぶしをつかせて考える像みたいになる。
が、ものの3秒後。

「――よし、翼よ。おまえが張れ」
「いやですって。だいたい僕も雪合戦に参加するんですから無駄に疲れる作業はしたくないですよ」
「ならおまえの母親が確かいただろう。頼んで結界を張ってもらおうではないか」
「……」
「頼んだぞ、我が親愛なる後輩よ」
「……はいはい」

天真の言い方にやや脅しがかかってきたので、翼はしぶしぶながら雅に結界を張ってくれるように頼むことにした。


                    *     *     *


「母さん。雪合戦するから家の敷地内に結界を張ってほしいんだけど」
「ええ。いいわよ〜」

実に簡単に交渉することができた翼。
翼が雅に頼んで雅がそれに答えるのにかかった時間はほぼゼロ。躊躇なしにOKサインを出したのだ。
そのため今、真道家の敷地内全体には「人が生理的に近づけなくする」程度の空間結果が展開されている。そのため、よほど大暴れしなければ周りの人間が気づくこともないようになっていた。
ちなみに結界を張っている雅は家の中で趣味の1つである裁縫でティディベアをつくっていた。翼は結界を張るように頼むときに雅がつくろうとしているティディベアを見たのだが、なんだかとてつもなく大きくなりそうな予感だった。
なにせ身長1メ―トル以下の子供がきぐるみとしてでも使えそうなほどの大きさになりそうなことが、用意されている材料の量を見てでも容易に想像がつくことができるくらいだったのだ。
翼はいったいどのくらい大きくなるのだろうと、少し期待しながら中庭に集合していた。
人数は翼、緋睡、紗代、プリムラ、天真の5人。少しその場を離れただけではやっぱり減るものでもないし増えるものでもないようだ。
今の時刻は午前10時。雪合戦開始とは別にみんなが四方八方に散らばるのにかかる時間がもうけられている。その時間は10分間。それから1秒でも過ぎれば雪合戦開始となる。
よって雪合戦終了は午後5時過ぎとなる。はっきりいって長期戦だ。

「よしッ!皆のもの、散らばれッ!!」

そんな天真の一声と共に翼たちは林と化している木々の中へ入っていく。…プリムラ以外は。
プリムラは試合開始の合図と同時にオコジョ形態となり自分の近くに立っていた林の枝の上にのっかかり、そのまま丸くなって居眠りを始めた。見つかれば確実に的にされるだろうが、プリムラは別段どうでもいいことだった。
最初からプリムラ自身、雪合戦の勝敗などどうでもいいことだと思っていたからである。
そして10分後、プリムラはぐっすりと木の枝の上でク―ク―と寝息を立て始めたのだった。


                      *     *     *


「そろそろ10分経ったころやな」

紗代はそう呟くと、隠れていた茂みの中からそっと首から上だけを出す。
周りを見てみる。……誰もいなかった。
足音も聞こえないので、どうやら紗代の周りには少なくとも人が近づいているということはないようだ。
だが、いつまでも終始隠れきれるとは思えない。実際、初級魔術程度なら使用してもいいのだ。だったら魔術を使って長距離から雪玉を投げてくる可能性も、なくはない。
だったらウチも……。

Unfoldアンフォウルド.――Accumulation(アクゥミュレイション)

紗代は一瞬魔法陣を足元に展開させると、すぐに消滅させる。――いや、違った。正しくは溜めているのだ。
始動キ―をいうのを省くことで少しでも早く先手を撃てるように…。
だが、それがあだとなったようだった。紗代は背後に気配を感じたので、すぐに振り返るとそこには、

「……へ?」

紗代の数メ―トル先には「敵発見後攻撃」と書かれた札3枚が、雪玉をのせて紗代の目線の高さ付近を浮遊していた。
どうやら、さきほどの魔法陣から発せられていた微弱な魔力を察知してきたようである。
そしてこの札。間違いなく緋睡のものだった。

「しまッ――!!」

ぼこぼこぼこ……。
見事に顔面に3発命中し、紗代は雪合戦初の敗者となった。


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