魔術師/BATTLE OF NIGHT(8/163)PDFで表示縦書き表示RDF


魔術師/BATTLE OF NIGHT
作:なかたく



MAGIC3-1〜翼の先輩、登場〜


 清々しい朝。日の光が優しく、実に気持ちが良い。
 そんな朝の下、翼は現在登校中だ。時刻は七時半。翼が学校に着くまでにかかる時間は三十分。八時十五分には学校についていればいいので結構余裕な時間帯だ。
 翼がこんなに早く学校に行く理由は家に居るのが暇だからではない。―――原因は何より緋睡である。
 兄より……いや、もしかしたら家族一真面目でしっかり者の緋睡は「早く学校に行きましょう。そして普段怠けている分、兄上は自分が使う教室を掃除しなさい。」とか言われたからである。
 当然のこと翼はそれを一度は断ったが、緋睡が『洗脳』と大きく筆で達筆に書かれた札を巫女服の懐から取り出したのでおとなしく登校することにしたのだ。
 翼は当然のこと、教室の掃除をする気ははっきり言ってない。
 普段の軽装ではなく、ちゃんと制服を着ている翼はともかく、緋睡は学校に行くときもなぜか巫女服。
 そんな格好で学校に行ったら学校の人たちにとやかく言われるのではないかと思われるが、緋睡は学校に居る人全員(翼を除く)にちょっとした暗示をかけているのでその心配はない。
 ちなみにその暗示とは『巫女服=制服』である。
 翼自身害は特にないため止めるような真似はしないのだが、暗示が効きすぎて一度男子学生が巫女服を着て登校して来たので、翼は心底笑いを耐えるのに必死になった経験がある。まわりは暗示が効いていたため気づいていなかったようだが。
 そんな妹と二人で学校登校中の翼。緋睡が全くしゃべらないため沈黙を保ち続けている。
 それなら翼が話せばいいじゃないかと思われるが、はっきり言うと会話が通らない。
 翼はけっこう友達と一緒に遊びに行くため、それなりの話題はあるが、緋睡が全く家族以外の人間とほとんど交わろうとしないため世間には疎いからというのが最大の理由だろう。
 緋睡を嫌う人間は学校内でいるなんてうわさは翼自身聞いたことがなかった。むしろ、好かれているという話のほうをよく耳にしていた。緋睡は友達もいるほうで、そして男子たちの憧れの的でもあった。
 どこか神秘的で和風な感じ、そして大和撫子のような容姿端麗っぷりがその原因だろう。
 しかし、緋睡は先ほども言ったとおりあまり他人と交わらない。友達とは別として。
 そのせいで何人の男が玉砕したことか……。仕方ないとはいえ、翼は少しその人たちに申し訳なく思っていたりする。
 やがて翼たちは昨日『ソ―サリ―・クリスタル』を手に入れた公園の前を通る。
 公園は案の定というか警察たちが陣取っていた。陣取っている理由は決して警官たちが公園で遊ぶためではなく、昨日のあの惨状の調査である。
 少しひんやりした気温のせいか、翼の魔術の名残として一部が氷付けになっており、また桜の木がものの見事に一本折れていた。
 申し訳なく思いながら翼と緋睡はその場を後にした。

                    *     *     *

「翼、やっと来たな」

 そんな言葉が聞こえるや否や翼はゲッと口で語らずとも顔で語った。

「どうした?いつも思うのだが、おれと出会うのはそんなに不服か?」
「いえ、別に……」

 視線をそらして話しかけてくる人物に言う翼。
 その人物の性別はれっきとした女である。一人称が『おれ』なのでわからなかった人もいるかもしれないが。そして、翼の先輩でもある。
 彼女の名前は『神藤 天真しんどう てんま』。高校三年十八歳である。
 受験戦争のはずなのだが、なぜかこの先輩は勉強をしない。他の人たちが休み時間も必死で勉強をしているのにこの人だけはわざわざ翼の教室まで遊びに来る。
 実はこの天真、どこかの大企業の社長のお嬢様で卒業したらその会社で働くらしい。そのため、卒業後の進路はすでに決まっており、ほぼ確定的なものだった。
 口調がなぜか男口調。そのため一人称も『おれ』。黒髪のショ―トカットヘア―をしており、身長はいたって平均的。男口調をやめれば明らかに何をとっても良い美人になるのだが……それは無理そうである。

「……またおまえですか」

 先輩に向かって『おまえ』と言う緋睡。いつも以上に目が据わっている。

「おや。巫女もいたのか」
「その言い方はやめろといったはずです」
「ならその服装をやめればいいのではないか?」

 天真の言い分はもっともだ。
 ……あれ?一つおかしなところがあったが。

「先輩。緋睡の巫女服は他の人にはわからないようにしていますからあまり口に出さないで下さい。暗示が解けてしまいます」
「おお。そうだったか。それはすまなかった」
「……わざとじゃないですか?」
「何を言う、翼。おれはいたって自然にかつナチュラルに言ったはずだ」
「天真。これ以上言いますとおまえが魔術師であることを学校の放送で公言してもいいのですよ」
「うむ……。巫女……もとい翼シスタ―は少し機嫌が悪いようだな。わかった。これからは慎もうではないか」

 やや棒読み気味に、しかも矢継ぎ早気味にそう言った天真。
 実はこの天真は、れっきとした魔術師である。だが、家族全員が魔術師なのではなく天真だけである。
 本来、魔術師の血が家族にないと魔術師の子は生まれないのだが天真の場合は特別である。
 本人曰く「おれは生まれ変わって現世に来たのだ。」らしいのだが、誰から生まれ変わったのかは忘れてしまっているらしく、そもそもその情報が本物かどうかも怪しいところだ。
 そんな少し変わった先輩が途中で加わって、やがて翼たちは学校に着くことになるのだった。







ランキング参加中です。ご投票頂けると励みになります。
現在、ドリームブッククラブより、『魔術師/BONDS OF STEEL』公開中です
掲示板です。感想、意見等をよろしくお願いします





ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう