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魔術師/BATTLE OF NIGHT
作:なかたく



MAGIC26〜決戦、迫る〜


あれから翼とミントはアクセルの後を追って、紗代の基本的な戦闘訓練を見物していた。
戦闘訓練をしている場所はつい先ほどまで翼とミントと人魚モドキがいた城の庭だ。
紗代はその庭の真ん中に立ち、そしてその紗代のかたわらにはリンダがいろいろと補助をし、さらに邪魔にならないように壁際に右から翼、ミント、アクセル、そしてさきほどまでよほど暇だったのか噴水付近で水浴びをしていた天真の順でそこにいる。

「紗代ちゃん。それじゃあもう一度やってみてください」
「はいな。―――Unfoldアンフォウルド

リンダの指示とともに、紗代は魔術書を片手に魔法陣を足元に展開させる。
そしてその魔術書を見ながら、詠唱文を唱える。

Lightライト, the earnestアーニスト arrowアロゥ convertingカンヴァート, penetratingペネトレイティング the enemyエネミー

そして紗代は、魔術書を持っていないほうの手の人差し指で上空を指す。

「―――Sparkスパーク dartダートッ!」

紗代がそう叫ぶと同時に、上空にを指した人差指(ひとさしゆびに光が凝縮され、そしてはるか上空に、放たれた。
放たれた光は、花火がうちあげられるようにまっすぐ一直線にはるか上空まで飛んで、やがてその姿は見えなくなる。
そんな光景に、翼たちは驚きを隠せない。普通ここまで初心者が魔術を使うことなんてほとんどありえないからだ。
紗代が魔術師の家系で、その血が関係しているにしろここまで使えるのは極めてまれであろう。おそらく、紗代自身が天性の素質を持っていたのだろう。
驚きを隠せない翼たちは、ほとんど無意識のうちに「おおッ!」という感嘆かんたんの声とともにパチパチと拍手をする。

「見事です。マスタ―」
「ありがと、アクセル」

照れながらアクセルに返事をする紗代。
だが、天真から厳しい一言を本人に聞かれないように、そばにいる人たちにボソリと呟く。

「紗代……といったか。確かにすごいことは認めるが、本当に実戦に連れて行く気か?」

天真のいうとおりだった。
確かに紗代の能力はすごい。先ほどのような基本的な魔術なら10のうち1でも知れば使うことができるほどだ。
だがそれは初心者としての話。実戦となれば話は別だった。
先ほどのような魔術では工夫しなければまず相手にあたることはないだろうし、ましてや今回の敵は天使なのでなおさらだ。
だが、

「それは大丈夫だ、天真」

そんな天真の厳しい疑問を先ほどから隠れて見物していたのか、ガルディオスがやってきて天真に言う。
そのガルディオスの傍らには当然のようにシャルロットが付き添いとしていた。
そんな国王の発言が気になり、翼が尋ねる。

「どういう意味ですか?」
「簡単なことだ。実戦は練習より数倍から数十倍の効果が期待できるからな」
「―――まさか、あえて戦場に送り込んで生死の戦いをさせることでの急成長を期待しているんですかッ?」
「そのとおり」

確かにいやおうでも戦場に出て実戦を繰り返せば実力は急激に成長するだろう。
だがそれは同時に危険な賭けでもあることは明白だった。

「……それでいいのか、国王」

怒りのせいなのか、敬語を忘れ天真はガルディオスにそう尋ねる。

「それでかまわないさ。オレは」

あっけないほどの返答。
翼と天真、そしてガウディオスの右腕でもあるミントまでもそんなガルディオスの発言に怒りを覚える。
だが、次に出た発言に3人はその怒りを一時おさめることになる。

「それに、あいつ自身の要望でもあるんだよ」
「え?」

ついそんな声をもらす翼。

「ほかならぬあいつ自身が、本人が望んでいることだからよ。オレはその後押しをしたってわけだ」

その後押しというものは、おそらく紗代が片手に持っている魔術書であろう。

「ちなみにあの魔術書以外にも杖でも持たせてやろうかと思っているんだ」
「でも王様ッ!紗代ちゃんに万が一のことでも起きたら……ッッ!」
「そのときのために、おまえたちがいるんだろ?」

ガルディオスに言われ、翼の言葉は途中で遮られる。
そしてガルディオスは翼に近寄り、その肩をぽんと軽く叩いて言う。

「紗代の護衛も、頼むぞ。おまえたちなら大丈夫だ」
「……………わかりました」

翼は最初、「それなら紗代ちゃんには悪いけど、連れて行かないほうがいいんじゃ…」と言おうとした。
だが、自分の目の前で頑張って魔術の稽古をしている紗代を見て、そしてなにより、天使を倒した後の聖五守護騎士の覚悟を見せるためにも、そんな発言をするのはやめた。
そしてガルディオスはそんな返事を聞くと満足そうに深くうんうんと頷くと、

「―――シャル、残りのやつら全員をここに集めてくれ。緋睡とプリムラと……残り聖五守護騎士のやつらをだ」
「はい。わかりました」

シャルロットは一礼すると、庭を離れた。
なぜ今から全員集合させる必要があるのか……今となってはその理由はひとつしかない。

「国王。いよいよ……ですか?」
「ああ。おまえの考えているとおりだ、天真」

そしてその後に続いたガルディオスの言葉は「ついにか」というべきものだった。

「これより、ヘルセンテス侵入および破壊、そして天使を打倒するッ!!」


Unfoldアンフォウルド
神谷紗代の始動キ―。意味は「展開する」。

Lightライト, the earnestアーニスト arrowアロゥ convertingカンヴァート, penetratingペネトレイティング the enemyエネミー.―――Sparkスパーク dartダート
光系中級西洋魔術。
「Light〜enemy」までが詠唱文。「Spark dart」が魔術名。
魔術発動者の人差指ひとさしゆびに光を凝縮させ、そして矢をして放つ。
中級魔術の中でも比較的簡単なもの。
訳は「光よ、矢と化して敵を撃て。―――閃光矢」。


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