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魔術師/BATTLE OF NIGHT
作:なかたく



MAGIC14〜使い魔組織〜


「…うぅ……」

 唸り声を開けて翼は目を覚ます。
 目を覚ました場所はベッドの上。そして、ベランダのガラスからは太陽の日の光が翼が寝ている部屋に差し込んでくる。
 目を覚ましたばかりの翼には、その光が少し眩しく思えているのか、目を覚ましたその直後の一瞬だけ目を細める。
 翼は上半身だけ身体を起こす。
 その上半身は裸になっており、包帯が胸部や腹部に巻かれていた。
 胸部や腹部だけではない。他には後頭部にも大きなガ―ゼが付いていた。

「……そうか。僕、あの人に負けたんだった……」

 翼は昨日の記憶を目覚めたばかりの頭で振り返る。
 翼が気を失う直後に見た五人の人影――自分たちのことを聖五守護騎士と名乗る人物たち。
 その内のおさ、アクセルと翼は戦って、そして負けたのだ。
 圧倒的な実力の差。翼は一撃たりとも、かすり傷すら負わせられなかった。
 魔術の打ち合いで負け、自分が得意とする接近戦でも負けた。
 はっきり言ってしまえば、完敗だ。

「……くそ」

 苦虫を噛み潰したような表情になる翼。
 そんなとき、翼の部屋のドアがノックして、「失礼します」の一言とともに誰かが部屋に入ってきた。

「おはようございます。翼君」
「あ、あなたは……たしか……」
「シャルロットです」

 翼の部屋に入ってきたのはクィ―ンズの国王、ガルディオスの側近である青年シャルロットだった。

「気分は……まぁ、聞かないでおきましょう」
「うん。悪いけどそうしてくれないかな」

 シャルロットは翼の現在の表情を見て、気分を尋ねるのをやめる。
 あいかわらず何かを堪えているような辛そうな表情だったからだ。
 理由はいうまでもない。
 そんなとき、シャルロットはこほんと小さな咳払いを一つ。おそらくワザとだ。
 おそらく別の話題へと移ろうとしているのであろうということが、シャルロットのそんな行動で翼は悟った。

「……それで、シャルロットさん。何か用があって僕のところへ来たんじゃないですか?」
「はい。実は……王様が翼君たちに話したいことがあるとおっしゃっていたので、こうして翼君を呼びに来たのです」

 話……。おそらく昨日のことについてだろう。
 鈍感な翼でもそれはすぐにわかった。

「わかりました。それじゃあ、身支度をしてから王様のところにいきますので、王様にそう伝えておいてください。場所は……応接間、ですよね?」
「はい、そうです。それでは、伝えておきますので用が済みましたら応接間まで」

 シャルロットは翼に一礼すると、部屋から退室する。

「……さてと、早く身支度しないと」


                    *     *     *


「失礼します」
「遅いですね、兄上」

 応接間に入るなり、緋睡の皮肉の一つが飛んでくる。
 ある程度翼はそれをしていたものの、やはり堪えるものがある。
 ちなみに緋睡のほかには、天真とプリムラ、それにミントとトマホ−クがいる。

「まったく、兄上。少しは自分の自堕落ぶりをなおしてみたらどうですか?」
「妹。いつも思うんだが少しは言葉を加減してくれ。今何時だと思ってるんだ?これでも僕的に結構頑張ってるんだぞ」
「朝八時ですね。遅すぎます。単刀直入に申し上げますと」

 容赦がなさ過ぎる緋睡の言葉の数々。
 学校が休みの日(といっても今は翼たちだけなのだが)で朝八時はそこそこ早く起きたほうだと思うのだが、緋睡はそれでも遅いらしい。
 次の瞬間、翼と緋睡が睨み合い、二人の間で見えない火花が散る。バチバチと。

「まぁまぁ二人とも。喧嘩はよくないぞ」

 イスにどっかりと座ったガルディオスにそう言われ、翼と緋睡は睨み合いをやめる。
 後に緋睡が「王様の御前なのに、兄上のせいでとんだ失態をしてしまいました」とぼそっと呟いたので、「緋睡、それは実の兄に対する言葉遣いか?」と翼がボソッと言い返していたのだが、それはそれ。
 無視する方向性でガルディオスの話が始まる。

「さて、おまえたちを呼んだのは……予想はつくと思うが、昨日のことについてだ」
「王様ッ!一つお聞きしたいことがあるんですけど」
「ん、なんだ?翼」
「僕が気を失う直前、結界にひびが入っていたんですけど、あれは王様たちが?」
「ああ、そうだ。ただ、やったのはオレじゃくてシャルがやったんだ。シャルは結界破壊が得意中の得意でな。ただ、今回のはさすがのシャルも骨が折れたようだがな」

 シャル……つまりシャルロットがあの空間結界を破壊したらしい。

「さて、本題に入るか。―――やつらのことなんだが、ミント。あいつらは確か自分たちのことを聖五守護騎士といっていたんだよな?」

 ガルディオスにそう尋ねられ、ミントは短く簡潔に「はい」と答える。

「聖五守護騎士はな、全員が実は使い魔なんだよ。要するに、使い魔だけで成り立っている組織みたいなものか…」
「使い魔だけで、ですか?だとすると、そのマスタ―は……」
「ああ、おまえの考えているとおりかもしれんな、翼。やつらを使役しているマスタ―はかなりの実力の持ち主である可能性が高い。使い魔を一度に五体も使役できるんだから、そのくらいは予測がつくな」
「…………」
「次に、やつらがいる場所なんだが……」

 ガルディオスはそのとき、翼たちを見る。
 それで天真は察したのか、へぇ〜と頷く。

「つまり、おれたちが住んでいる魔来町にいる可能性が高いってわけか」
「ご名答」

 天真のそんな言葉に、翼は驚きを隠せない。当然だった。

「でしたら王様。わたくしたちは魔来町に戻ったほうがよろしいのですか?」
「いや。その必要はねぇさ。やつらはクィ―ンズにあるソ―サリ―・クリスタルを狙っている。おまえらは基本的にこのままクィ―ンズに待機しておいてくれ」

 どうやら、今のところ攻めるのではなく、防衛することをガルディオスは重点においているようだ。
 攻めているうちに守りが薄くなり、それを突破されてソ―サリ―・クリスタルを奪われたら、今度こそクィ―ンズの存在が危うくなるのだからであろう。

「それじゃあ、またわかったことがあったら集合させるから、それまで自由にしておいてくれ。――以上、解散」







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