MAGIC12-5〜対峙2〜
四方八方に散らばってからの緋睡はというと、緑色の弾を矢で射ることによって消滅させ、現在忍者風の青年と対峙していた。
忍者なのに虚空移動で空を浮いているのは、いささか似合っているのか似合っていないのか判断に困る。
水遁の術とかで水の上を浮くなら忍者らしいのだが…。
「……おまえは誰ですか?」
ずばり、聞きたいことを単刀直入に述べる緋睡。
「他人に名を尋ねるときは――」
「……自分からとでも言いたいのですか?」
緋睡にそう言われて、忍者の青年はコクリと頷く。
「……真道緋睡」
「……拙者はヒエイでござる。緋睡、出合い頭のようになって悪いとは思うが、御主にはここで一つ痛い目をみてもらうでござるよ」
なぜヒエイが自分を痛い目にあわせるのか、それは緋睡自身わかっていることだ。
それは、緋睡がクィ―ンズへと続くゲ―トの番兵役になっているからである。
緋睡は相手を、ヒエイを睨みつけながら召喚法で弓と矢を片付けると、再び新たな武器を取り出す。
「――小太刀でござるか」
召喚法で緋睡が取り出したものは、あらかじめ鞘から抜かれた抜き身のままの小太刀だった。
大きさは、刀と短刀のちょうど中間ほどの大きさ。
刀独特の刀身の反り返りは一般の刀と比べると少ないほうで、月明かりに照らされ刀身が銀色に鈍く照らされる。
それを召喚法で取り出した後、緋睡はそれを構える。
緋睡が構えるのを見てヒエイも、背中に背負っている刀を抜く。
ヒエイが使う刀は忍者刀だ。
大きさは緋睡の使用する小太刀と大差変わらないが、刀特有の反り返りがほとんどない。
それは緋睡の小太刀も同じなのだが、それ以上に反り返りがないのである。
そもそも、なぜ反り返りが必要なのかと言われると、反り返っていることにより斬りの威力が上がるからである。
その反面、突きとしての攻撃が非常にしにくいのだが、反り返っていない刀は、その突き攻撃が比較的他の刀に比べるとしやすくなっているのだ。
おそらく、相手の急所に一突き……と言った戦法を緋睡もヒエイもするのだろう。
「……いざ、尋常に――」
「――勝負ッ!!」
* * *
「ふぅ〜。なんとか攻撃を避けれたぁ〜」
本来いた場所からだいぶ離れた結界内で翼はほっと一息つきながら、翼は剣を鞘の中に収める。
ちなみに翼があの緑の弾を避けるために取った戦法とはずばり、逃げて逃げて逃げまくることだ。
複雑な街道をあちらこちらに移動することで緑の弾が他の場所なたって消滅させるといったものだったのだが、これがなんとかうまくいったのだ。
そして、弾を避けきった後は再び虚空移動で空高く上昇し、浮いている。
「翼ぁ―――ッ!!!」
ほっと一息ついている翼のところに、ミントと、武器化しているトマホ―クがやってくる。
ミントたちの後ろからあの例の弾が追跡していないところから考えると、どうやらミントたちもどうにかあの弾をやり過ごしたようだ。
「ミント……と、それはトマホ―ク……だよね?」
翼は念のために、ミントが持っている大剣を指差しながらそう言うと、大剣から《そうよ》と簡潔な回答が聞こえてきた。
「それより、他のみんなは?」
「どうやら敵たちと対峙しているようなんだ。数は今のところ二人だということがわかっているんだけど……」
ミントの言う二人とは、天真が対峙しているゲイルと、緋睡が対峙しているヒエイのことだろう。
《あと、あたしたちの勘だと、おそらくこの空間結界を張っているやつも別にいるはずさ》
「――てことは、計三人いると仮定していたほうがいいのか……」
「いや、五人だぞ」
不意に、男性と思われる低い声が翼たちの耳に聞こえると同時に、殺気も感じたのでひとまずその場から離れる翼とミントとトマホ―ク。
すると、そのもといた場所に打撃の衝撃波と思われるものが襲い掛かる。
翼たちはそのときにはその場にいなかったので、その衝撃波はそのまま街道にに直撃し、そこで砂煙が発生する。
「――ッ!!誰だッ!!!」
衝撃波が飛んできた方向を振り返りながら叫ぶ翼。
そこには、身長2メ―トル近いかと思われる巨漢が大槌を、ちょうど横一線に振るった体勢になって虚空移動で宙を浮いていた。
その人物を睨みつける翼たちだったが、不意に翼は、ほとんど無意識と言っていいほどの疾さで背後に殺気を感じ、その場を飛び退く。
すると、神速とも呼べるくらいの疾さで翼がもといた場所に、真紅の髪をポニ―テ―ルをした女性が剣で横一文字に振るう。
女性との距離が比較的ミントも近かったので、女性の存在を確認したミントは即座にその場から翼と同じように飛び退く。
「なかなかの反応速度だ」
剣を一度振るった後、女性はそのような感想を一つする。
そんな自分を襲った女性に、睨みつける標的を変更させる翼。
「……誰だ、あなたたちは」
翼はあの巨漢に一度言った台詞を、今度は目の前にいる女性に言う。
「相手の名前を聞く前に、まずは自分の名前を名乗ったらどうだ?」
「真道翼だ」
翼は自分の名前を即座に答える。
あいかわらず相手を睨みつけたままで、だ。
そして、その睨みつけている視線に「名乗ったのだからあなたも名乗ったらどうだ?」という念を込める。
それを感じ取ったのか、女性は翼に自分の名前を告げる。
「わたしは『聖五守護騎士(セイントガ―ディアンズ)』の一人にして長である、アクセルだ。そして、我が剣の名はフランヴェルジェ」
ポニ―テ―ルをしている女性――アクセルはそう言うと、己の剣を構える。
刀身は炎の揺らめきをそのまま模ったように湾曲しており、炎が結晶化したかのような紅く燃えるような色をしている。
「わたしとおまえにこれ以上の語らいは無用だろう。おまえがクィ―ンズのゲ―トを護っている以上、わたしはおまえを倒す」
* * *
一方こちらは、翼がアクセルと会話しているときのミントたちと大斧を持った巨漢。
「俺は『聖五守護騎士』の一人、ゴルヴォック。そして、俺の使う槌、ベク・ド・フォコン。おまえはだれだ?」
「私は王直属近衛隊隊長、ミント・フェルトラント」
《あたしはトマホ―クよ》
トマホ―クという名前のわりには全く斧(トマホ―ク)の形状をしておらず、今は大剣の形状である。
「あなたの目的は何?」
「無論、クィ―ンズに大量にあるだろうソ―サリ―・クリスタルだ。しかし、おまえたちが盾となっているとはな。今回は前のようにすんなりと通らせてはくれないというわけか」
巨漢――ゴルヴォックは自分の得物であるベク・ド・フォコンを構える。
ウォ―ハンマ―と呼ばれる武器の一つだろう。
柄と直角にハンマ―のように平たい鎚頭と、鈎爪のように尖った二つの頭を持っている。
なにより大きさが2メ―トル近い身長を持つゴルヴォックとほぼ同じくらいもある。
おそらく、それに見合うだけの重量と破壊力も持ち合わせているだろうということが素人目でもわかる。
「……力づくですか」
「そういうことだ」
そんなゴルヴォックの言葉を聞くと、ミントもクレイモアを構える。
そして――
「――いくぞッ!!」
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