MAGIC2-4〜ソ―サリ―・クリスタル〜
魔術師というのはなかなかにたいへんなものである。
なにせ表沙汰に魔術師の存在というものは公表してはいけなく、常に裏で仕事をしないといけない。『ソ―サリ―・クリスタル』集めも、当然ながら表沙汰にしてはいけない。
「……ねぇ、父さん」
「なんですか?」
「『ソ―サリ―・クリスタル』って、なに?」
現在翼は稽古中。その稽古として現在なぜか空気イス。体力や我慢強さを鍛えるためだろうか?
一方緋睡は精神統一をするべく座禅を組み、瞳を閉じ、ピクリとも動かない。
決して寝ているわけではなく、緋睡の集中力がすさまじいからである。
「『ソ―サリ―・クリスタル』ですか?どうして聞くんですか?」
「いやぁ〜。……集めている身としては、やっぱり気になってしまって」
翼の気持ちはわからなくもない。
「そうですねぇ〜。簡単に言ってしまえば、『未知の水晶』ですね」
「未知ってことは、わからないの?」
「はい。『ソ―サリ―・クリスタル』はどうして存在するのか、どこから生まれたのかということは全くわからないんですよ。――ですから、『未知の水晶』なんです。『ソ―サリ―・クリスタル』の能力は知っていますか?」
「まぁ、それはなんとなく」
と、翼はうろ覚えながら知っていた。
『ソ―サリ―・クリスタル』について説明すると、『ソ―サリ―・クリスタル』は言わば魔力増幅器(または気力増幅器)としての役目を持ち合わせている。
初心者魔術師でも、『ソ―サリ―・クリスタル』を使うことで、それこそ賢者レベルの相手とほぼ互角に戦えるとか戦えないとか。
なぜこんな言い方をするかというと、下手に軽い気持ちで使えば自我を崩壊させ、狂戦士と化してしまうからだ。ある程度の知識やそれなりの対処方法をあらかじめしておかないと使用者に害をなすだけである。
対処方法としては『知の紋様』と呼ばれるものを『ソ―サリ―・クリスタル』の使用者の身体に刻み込まないといけない。
『知の紋様』の大きさは、ちょうど人間の背中の大きさとほぼ同じであるため、『ソ―サリ―・クリスタル』の使用者の背中には痛々しいくらいの紋様が刻み込まれている。
それは翼や緋睡……いや、真道家の人間にも言えることだ。
なぜなら、真道家の人たちもまた『ソ―サリ―・クリスタル』の使用者だからだ。
次に、属性付加能力というものが『ソ―サリ―・クリスタル』にあるものがある。ないものもあるのだが。
多少水晶に色がついているものに、属性付加能力はある。
属性付加能力というものは読んで字の如し、属性を付加する能力である。
主なものとしては、赤色がかったものは炎属性、水色がかったものは水属性、黄色がかったものは地属性、緑がかったものは風属性……………と、他にもまだあるが例としてあげるならばこの辺りだろう。
ちなみに翼が剣の柄につけている『ソ―サリ―・クリスタル』は、この属性付加能力があり、属性は氷。つまり、青色は氷属性である。
しかも翼のつけている『ソ―サリ―・クリスタル』の能力はかなり高いほうで、白……または透明がかっているものほど属性付加能力は低く、魔力増幅器としての効果がほとんど。……なのだが、翼の『ソ―サリ―・クリスタル』は黒味がかっている青。実は『ソ―サリ―・クリスタル』というものは黒味がかっているものほど属性付加能力は高くなる。また、魔力増幅器としての能力も高いものが多い。
「でもさ、僕の『ソ―サリ―・クリスタル』って、魔力増幅器としての能力ってほとんどないよね」
「まぁ、翼くんの『ソ―サリ―・クリスタル』はどちらかというと属性付加能力のほうに秀ですぎているからでしょうね」
「属性付加能力が秀ですぎると、どうして魔力増幅器としての能力が弱くなるのさ」
「それはですねぇ……。例えば、『ソ―サリ―・クリスタル』の全体的な力が100だとしましょう」
コクリと翼は頷く。
「その100のうち80が翼くんの『ソ―サリ―・クリスタル』の場合、属性付加能力のほうに力がいってしまって、残りの20だけが魔力増幅器としての役目になっているからです」
「へぇ〜」
なんとなくわかった。……ふと緋睡を見てみると、なるほど、と言わんばかりにコクコクと頷いていた。
やがてこちらの視線に気づいたのか、
「兄上はその程度のことも知らぬのですか」
とか翼に言う。
「いや。おまえだってさっきわかっただろうがッ!!」
そろそろ膝が限界のせいか、ガクガクと膝を笑わせながら精一杯に吠えて見せる。
「でもさ。それだけじゃないでしょ?父さん」
「そうですねぇ。たしかに『ソ―サリ―・クリスタル』の能力はそれだけではないのですが、ひとまとめに言ってしまうと『ほとんどの願いが叶ってしまう水晶』っと言ってしまえばいいのでしょうか」
『ほとんど』というあたりがうやむや過ぎるがそう言うしかないだろう。
それを聞いて、再び翼と緋睡は稽古を続けるのだった。 |