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魔術師/BATTLE OF NIGHT
作:なかたく



MAGIC12-1〜翼の特訓〜


『僕たちでよろしければ、引き受けます』

 翼はトマホ―クと夜中に一度会った後一睡して、まず緋睡とプリムラと天真を呼んで、引き受けて良いかと言ったところ、満場一致だったので、翼たちは応接間まで行って国王であるガルディオスにそう伝えた。
 当然のことながらガルディオスとその傍らにいたシャルロットは大喜び。
 そして、「事態が片付くまで部屋を自由につかってもよい」とまで言われた翼たち。
 ついでにそのとき、自宅から持ってきておいた真道家のソ―サリ―・クリスタルもガルディオスに渡して、翼たちは応接間を後にしたのだが。

「ほらほらぁッ!!もっと集中集中ッ!!」

 場所は城の庭。
 庭には二羽ニワトリがいる……ようなことはなく、代わりに絨毯のように芝生が植えられていた。
 芝生のほかには噴水が一つと、クリスマスツリ―の木に使えるくらい大きな木が庭の隅っこに等間隔で植えられている。
 ちなみに城について説明しておくと、国王が住んでいる城は城壁で囲まれており、城壁も城の造りもレンガだ。
 そして街並は、単刀直入に言えばバウムク―ヘンのような円形をしている。そのバウムク―ヘンの中心に、城が建っているわけだ。
 その城の庭で、トマホ―クが拳を振り上げながらワ―ワ―と騒いでいる。
 そしてそのトマホ―クの傍らにはミントが目の前で動いているものを、心なしか冷めた目で見ている。
 さらに、そんなミントを冷めた目で見ているのはミントたちよりやや離れた位置にいる緋睡。
 そして緋睡の肩には黒いオコジョ―――プリムラが眠っており、緋睡の隣にいる天真は、目の前で動いているものを「ふふふ。他人の不幸は蜜の味」と言わんばかりの視線で見ている。

「集中って言われてもなぁ……」
「愚痴こぼさずにもう一度ぉッ!!」
「はいはい……はぁ〜」

 思わずため息を漏らしてしまうミントたちの目の前で動くもの、もとい翼。
 彼は現在、虚空移動の練習をしている。――というのも、翼は魔術がほとんど使えないので必然的に接近戦主流になる。
 そうなると、もし敵が虚空移動を使用することが可能だったら打つ手がなくなるからだ。
 おまけに、シャルロット曰く「敵は虚空移動を使用できます」らしいので翼は仕方なく虚空移動の練習をしている。――が、今のところ進歩なし。
 翼自身、やめたいとは思うものの虚空移動ができないともしかすると相手と戦っても戦闘にすらならない状態になるかもしれないのでとりあえずがんばってみる。

(集中集中……)

 翼は目を閉じ、己の身体が浮く姿を想像する。
 空を自由に駆けている自分の姿を、翼は考える……。
 考えて……考えて……考えた結果――

 ふわっ

 ――と、翼は自分の身体が浮いたような感覚になる。
 ゆっくりと翼は目を開ける。すると、確かに自分の身体は浮いている。
 浮いているのだが――

「翼。あんたそれ遊んでいるの?」
「…………いや、遊んではないよ。うん」

 トマホ―クや緋睡はやや呆れた表情。ミントは相変わらず冷めた視線で無表情なのだが、その冷めた視線の中には侮辱の念が込められているように思えなくもない。
 天真に至っては「はぁ―――――はっはっはっはっはッ!!」と、悪役笑いをする始末。
 そう、浮いたのには浮いた。
 だが、地面から15センチほどのところで……。
 虚空移動で地上から15センチの宙を移動し、戦闘に参加する人間……あまりにもかっこいいとは言い切れず、むしろバカ丸出しである。
 恥ずかしくなって虚空移動をやめる翼。

「……あんたって本当に魔術師なのか疑ってしまうわねぇ」
「魔術師として大成する素質があるのに……」
「というか兄上。恥を晒すのはお止めください」
「いいぞ、我が親愛なる後輩よ。先輩を楽しませてこそ後輩だ」

 寝ているプリムラ以外の外野にぼろくそに言われる翼。

「――ていうか緋睡ッ!!おまえも虚空移動できないくせに野次とばすなよッ!!」
「確かにわたくしは虚空移動は使えません。――が、似たようなものなら使えますので」

 緋睡はそう言うと、懐から「浮」と書かれた札を取り出す。
 あいかわらず字は達筆だ。
 その札に緋睡が魔力を込めると、いともたやすく緋睡の身体は宙に浮く。

「どうですか?兄上」
「……ず、ずるいってそれッ!!そんな某猫型ロボットが出してくれるような便利アイテムがあったら僕だって使いたいってッ!!――というわけで貸せ、緋睡ッ!!」

 そう言って翼は緋睡に詰め寄ろうとするが――

「炎よ、ものを包み込め――」
「え?いや、ちょっとタンマ緋睡ッ!!」

 突然、東洋魔術を発動させようとする緋睡に、翼はさすがに焦る。
 そして――

「――煉獄れんごくしょう

 緋睡が宙に浮いたまま手の平を翼に向けると、小さな火球が翼に襲い掛かる。

「うわあああああああああぁぁぁぁぁっっっっっっとおぉぉぉぉぉッッ!!!!!」

 間一髪避けることができた翼。

「おまえッ!!実の兄貴を殺す気かあぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!」

 腹の底から翼は緋睡に叫ぶが、緋睡は「知りませんよ、そのようなこと」とばかりの表情を翼を見下しながらしている。

「兄上、わたくしにかまっておられる暇が御有りなのでしたら虚空移動の修行にでも励んでいたらどうです?」
「こっっっのおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!こうなったら、意地でも今日中に虚空移動を覚えてやるからなあぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 そんな翼の心からの叫びが、城の庭から外へと響くのだった。


【炎よ、ものを包み込め。―――――煉獄れんごくしょう
炎系初級東洋魔術。
手の平から対象の敵目掛けて小さな火球を放つ。






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