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魔術師/BATTLE OF NIGHT
作:なかたく



MAGIC10-2〜フランシアへ、そして首飾り…〜


《はぁ―――――はっはっはっはっはッッ!!!我が親愛なる後輩諸君ッ!!おれの美声が聞こえるか?》

 ああ、悪魔の声が聞こえる……。――そう、翼たちはつい思ってしまう。
 飛行機に取り付けられているスピ―カ―から天真の声が内部に響き渡る。
 そしてその美声(天真自称)はまだ続く……。

《これからついに我が飛行機が飛び立つので、諸君たちは楽しみにしておくように》

 それは天国に行くのを楽しみにしておけってことですか?――と、翼は心の中で天真に質問するが、当然のごとく返答はない。
 念のため、翼はシートベルトをすることにする。墜落したら無駄なものになるのだが……。
 そんな翼を見て、緋睡とプリムラも同じようにシ―トベルトを締める。
 そしてしばらくすると、急に飛行機が徐々に地面と直角になっていき、やがて完全に地面と飛行機が成している角度が90度になる。
 おせじにも、飛行機が出発する状態ではない。例えるならそれは、スペ―スシャトルが宇宙に向かってさぁ出発ッ!!……という感じである。
 飛び立つ前から、案の定と言うべきか嫌な予感がしまくりの翼たち乗客一行。
 やがて、ゴゴゴゴゴ…………と妙な地鳴りが聞こえ始める。少なくとも、地震ではないし、飛行機が揺れているためでもない。
 ここで地上の様子をいうと、先ほどの地鳴りは、天真が住んでいる屋敷が正中より真っ二つに分離する際に起きたものである。
 どういう原理かは全くの不明であるがとにかく、天真の屋敷は真っ二つに分離されて、その間から先ほどの地面と90度の角を成すほどまで傾けられた飛行機が地下七階から上がってくる。

「……兄上。飛行機とは、このような状態から飛行へ移るのですか?」
「僕は飛行機に乗ったことがないけど、絶対に違うと思う」

 まるで「宇宙の旅に、さぁしゅっぱぁ――つッ!!」とばかりの状態。

《それでは…………》

 天真の声がスピ―カ―を通じて聞こえると、飛行機のエンジン音なのか、なんだか大きなチャ―ジ音に似た音が聞こえ始める。

《――ああ、一つ言い忘れていた。この飛行機は特別製でな》

 特別製……。
 翼たちは、その言葉の響きがとても嫌なものに思えるのだが、それはあながちその通りのようだ。
 その証拠に、次の天真の言葉は――

《エンジンにロケットエンジンを取り付けてあるのだ。あっという間に宇宙までいけるぞ》
「――ってそれじゃあ飛行機じゃなくてロケットじゃないですかぁッ!!」
《つべこべ言うな、翼よ。それでは、宇宙の旅に、さぁしゅっぱぁ―――――つッ!!》

 どうやら天真には翼たちの声が聞こえているようで、適当に翼をあしらうと一気に飛び立つ。

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」

 断末魔にも似た悲鳴が、飛び立つ飛行機もどきの内部で響き渡るのだった。


                    *     *     *


「――てなわけで、フランシアに到着だ」

 はぁ―――――はっはっはっはっはッッ!!!と、その後に高笑いを付け足す天真。
 そんなご機嫌な天真とは対照的に、翼たちはげっそりとやつれたような表情をしていた。

「……先輩。フランシアについたようなのはいいですけど……」
「どうやって帰るつもりなのですか」

 翼と緋睡はそう言うと、飛行機もどきへと視線を移動させる。
 そこには、おそらく爆破炎上したのであろう天真自家用飛行機もどきスペ―スシャトルが文字通り火を吹いていた。
 翼たちは、持ち前の生命力と身体能力で辛くも脱出したわけだが。
 ちなみに、翼たちがいる場所は森の中。それというのも天真が着陸場所を間違えたせいである。
 翼たちの怒りの矛先は当然ながら天真に向けられるのだが、「そんな熱い視線でおれをみないでくれ。そんなにおれの操縦テクニックに惚れ惚れしたのか?」とか言ってくるので怒る気が完全にえてしまっていた。

「先輩。肝心の街はどこなんですか?フランシアならびにクィ―ンズの」
「まぁまて。その前にこれを身につけるがよい」

 天真は召喚法で、なにかきれいなダイヤのような輝きをした水晶か宝石みたいなものがついているネックレスを翼、緋睡、プリムラ、そして自分のと計四つ取り出し、各々に渡す。

「これは?」
「これは『翻訳首飾り(トランスレイトネックレス)』と呼ばれるものだ。―――――まぁ、例えるなら某ネコ型ロボットがときどき使用する『ほんや○○○にゃく』みたいなものか」
「へぇ」
「まぁ、これをとりあえずつけておけ。フランシア語なんて話せないだろ」

 確かにそうなので、翼たちは天真に言われるがままに『翻訳首飾り』をつける。

「……先輩。まさかとは思いますけど、このネックレスに呪いとかないですよねぇ」

 念のため、本当に念のために翼は天真に聞いてみる。
 これで呪いなんてあったら、一生この先輩を恨む気満々だ。

「呪いなんてないぞ」
「そ、そうですか」

 当たり前のことなのだが、翼は心の底からほっと一息つく。

「――おれのにはな」
「…………は?」
「いや。なんでもない」

 そう言うと、天真はスタスタと早歩きで歩き出す。
 今さっき嫌な言葉が付け加わったような……。

「き、……気のせいだ。気のせいだぞ、真道翼。先ほど聞こえたのは全部幻聴なんだ、うん」

 自分に強引にそう言い聞かし、翼は天真の後についていく。
 ちなみに、緋睡とプリムラはこの後、即首飾りを取ろうとしたのだが、どういうわけか取る事ができなかった。


【翻訳首飾り(トランスレイトネックレス)】
他国語を自分の母国語に聞こえるようにする首飾り。






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