MAGIC9-3〜旅の理由〜
翼たちは現在、翼の自室にいる。
そして、座布団を翼、緋睡、プリムラ、天真の分全部で四つ床に敷き、翼と天真が向かい合うように座布団を敷き、そしてその翼から見て左側にプリムラが、そして右側に緋睡が座っている。
そして真ん中に、お茶や菓子類をのせたお盆を一つ置けるようなスペ―スが用意されており、そこにはすでにそんな先ほど述べたものがのせられているお盆がある。
そもそもなぜ翼たちが翼の部屋にいるのかと言うものも、突然に帰ってきた先輩が、「喉渇いた。後輩なら先輩様を崇めるものであろう」と言ってきたからである。
なので、とりあえず緑茶を天真に差し出したが、「紅茶にして欲しいぞ」とか天真は言ってきたのだが、翼は完全無視する。
「はっはっはっはっは……ッ!久しいな、我が親愛なる後輩よ」
天真が緑茶でのどを潤した後、天真の高笑いが部屋内に響く。
ああ、この人のナマの高笑いはあいかわらずなんとなく腹が立つ。――と、翼は心底思うのだが、そんなことより聞きたいことがあった。
「――先輩、戻ってくるんでしたら連絡の一つしてくださいよ」
「……?何を言っている、翼。おれはすでに連絡はあらかじめしておいたぞ」
そんなことを言われても翼には心当たりがなかった。
なにせこの先輩から送られてくるメ―ルは、すべていたずらメ―ルだからだ。
「……身に覚えありませんけど」
「何を言っている。ちゃんとメ―ルで送ったぞ」
そう言うと、どこからともなく携帯電話を天真は取り出す。
どういうわけか、その携帯電話は翼のものであり、「あ!僕の携帯ッ!!」と翼が叫んだときには遅すぎた。
「ほうほう……、なるほど。おまえは常に携帯に画像をたくさん保存しているのだな。しかもそれは全部18――」
「何勝手にねつ造してるんですかッ!!画像なんてほとんど入ってませんよッ!!僕の携帯にはッ!!!――はッ!!!」
翼はふと緋睡を見る。
いつも以上に冷めた視線、何かを言いたげに口をわずかに動かしている。
おまけにその冷めきっている目は、「兄上、後でお話しでもしますか?お題は『健全な十六歳を生きるために』で」と語っていた。
翼はその目は口ほどにものを言っている目に、「いいえ。ご遠慮しておきます。緋睡様」と丁重にお断りする。
「――ていうか先輩ッ!どれが先輩の連絡のメ―ルなんですか?」
「うむ。――これだ」
天真は翼に天真曰く「帰りの連絡」のメ―ルを見ると、それは――
《あぴょってるかい?》
…………。
「…………どう考えてもたずらメ―ルじゃないですか」
「何を言っているのだッ!これはおれが『今日帰る』という重要な暗号メッセ―ジなのだぞッ!!翼ッ、おまえはこの暗号を解読できなかったのかッ!!?」
解読できません。
そもそもそんな暗号があったのは翼自身初耳だったし、もしあらかじめ教えられていたとしても、翼は覚える気なんて毛頭ない。
「実に残念だ。おれとおまえは鋼のように頑丈な赤い糸で結ばれた仲だというのに……」
「いや。結ばれてませんから」
首を激しく横に振り、完全否定を全面的に押し出す翼。
それを見て天真は、「ノリが悪いぞ、翼よ」とか翼に言う。そういう問題なのだろうか……。
「――しかし、おれがいない間に新顔が一人増えたな」
急に話題をそちらに変更する天真。
まぁ、いない間に面子が増えているのだから聞きたくなるのはわからなくもない。
なので、翼はとりあえず紹介することにする。
「プリムラですよ。先輩がいない間に僕の使い魔になったんです」
「ほぅ。使い魔か……。――ふむ。なるほど」
一人納得したように天真が満足げに頷く。
そしてなぜか、翼に向かって意地悪げな笑みを口元に浮かべる天真。
なんだかとっても嫌な感じがしたので、翼は天真に聞くことにする。
「――先輩、なに一人で満足げになってるんですか?」
「うむ。翼の好みのタイプがわかったと思ってな」
おおっとぉッ!早くも嫌な予感ですよッ!!?
思わず心の中でそうそんなことを叫ぶ翼。
「翼の好みのタイプはずばりッ!!ロリ――」
「違いますってぇッ!!」
超高速快速電車級のツッコミを瞬時に天真にする翼。
「いやいや。隠すでない隠すでない」
「隠してませんってッ!!――はッ!」
翼は再び緋睡のほうを見る。
なぜか緋睡は前髪をダランと顔を隠すようにしている。――のだが、その奥からは絶えず紅い光点がキラァ―ンと、睨みを利かせていた。
「――そ、そんなことより先輩ッ!!先輩は一度この娘と会ったことあるでしょ?」
「なんだか強引な話の逸らし方だな、翼。そんなことより……あったっけか?」
「ありましたってッ!」
翼にそう言われて、天真は一人過去の記憶を片っ端から引っ張り出し、必死に思い出そうとする。
そして一分経過したころ……。
「おおッ!!そうだったッ。すっかり忘れていたぞ。いやぁ、旅がなにせ忙しくてな」
「――ていうか一分も思い出すのにかからないで下さいよ。――ていうか、そんな三日ほど前のことをすぐに旅をしたせいで忘れないでくださいよ」
「仕方ないだろう。おれだって伊達や酔狂で旅に出ていたのではないのだからな」
天真にそう言われて、翼は肝心な質問をするのを忘れていた。
本当は真っ先に聞こうとしていたのだが、このアホ先輩が色々と話をずらしまくるので言えなかったのだが、今こそ言うチャンスというものだった。
これを逃したら、また先輩のバカかつアホなノリで話が進行してしまい、本筋に一歩も近づけない。
「先輩。一番聞きたかったことがあるんですが――なんで先輩は旅してたんですか?」
そう。これこそが翼たちがもっとも聞きたかったもの。
その質問に天真はさっきよりどことなく真剣な表情になる。
「ああ、そのことか」
「教えてくれませんか?先輩」
なんだかんだいってこの翼の先輩こと神藤天真。バカでアホなノリが大好きで、実際天真自身そんな人物なのだが、真剣になるところは真剣になるというメリハリの利いた人でもある。 おまけに、天真は意味のないことは……やりまくるのだが翼自身、きっとなんらかの意味があってのことだろうと、思っていた。
そして、天真はこう言うのだった。
「実はおれは、クィ―ンズに少し調べたいことがあっていっていたんだ」
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