MAGIC8-4〜Battle of night/2nd Battle in the wasteland〜
次の……第二ラウンドの開始を知らせるゴングの音を、翼とミントは互いに待つ。
翼の左脇腹からは血が服に染みこみ、そしてポタポタと滴り落ちる。
もっとも翼はすでに傷みになれたせいか、苦痛の表情はすでに無くなっていた。
一方ミントは、口からの出血。それは口の中が切れたからではない。
なにせミントは、体の外側こそ傷という傷がないのだが、中身が翼の剣術を受けたせいでボロボロだった。
ミントが味わっている痛みは尋常のものではないのは確か。だがミントは、感情を押し殺してわざと平然とした表情と態度をとる。
…………そんなときだろうか。
「Developmentッ!」
イチかバチか、ミントは勝負に出ようとする。始動キ―を言う際に口から出てくる血が一時的に多くなるが、おかまいなしだ。
その始動キ―がまるでゴングだったかのように、翼は一気にミントに駆け寄る。
魔術を発動させる前に決着をつけるつもりだ。
翼はミントの背後にまわり、そして大きくナイトソ―ドを振り上げ、無防備なミントの背中目がけて、一気に振り下ろそうとするが――
《Proteger!》
翼の攻撃が、ミントに当たろうとするその紙一重のところで、突然翼は不可視の壁によって攻撃を遮られる。
とっさのトマホ―クによる障壁――シ―ルドによるせいだ。
あまりにいきなりシ―ルドが発生したので、翼は一時的に動きが停止し、そこをすかさずトマホ―クは――
《Repelimentoッ!》
一気に弾き飛ばした。
翼は大きくのけぞり、そして空を飛び、そのまま背中から地面に叩きつけられる……ところを翼は受け身を取り、なんとかしのぐ。
「――It makes the spider's web of the thunder, arrests the enemy.――」
翼が再び起き上がるころには時すでに遅く、ミントは魔術詠唱をし終えていた。
「Invocationッ!――A shield of an immediate effectッッ!!」
とっさに簡易障壁を張リミントからの魔術攻撃を防ごうとするが、トマホ―クがそれを許さなかった。
一度目の「Photospheres of thunder』のときは目をつぶってやったが、二度は通用させない――そうトマホ―クが考えているからだ。
《Destruio da barreiraッ!!》
トマホ―クがそう言うと突然武器変化しているトマホ―クから衝撃波が一発翼目掛けて飛んでいき、翼の障壁に直撃するとガラスの割れるような音と共に翼が張っていた障壁が破壊される。
「なッ!!?」
「――Spider thread thunderッ!!」
翼が驚いた瞬間、ミントは魔術を発動させる。障壁を破壊された翼に対処法はない。
翼を中心点にした雷の球体が発生し、翼はその球体に閉じ込められる。――と、その瞬間、球体の内部を電撃が駆け巡り、翼はそれをまともに受ける。
「うああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」
絶叫。苦痛のあまりに翼は思わず絶叫を上げる。
全身を針で貫かれるような痛み。斬撃で攻撃されるよりずっとつらい攻撃だ。
やがて、魔術攻撃から解放されると翼は地面に伏した。髪の毛はちりちりと少し焦げ、それは翼が着ている衣服にも言えることだった。
全身に力が入らない……。――そう翼が思うのは仕方のないこと。
なぜなら、身体の筋肉という筋肉が先ほどの電撃のせいで硬直してしまったからだ。
意識があるのに身体が動かない……動けない。
それは生ける人形とでも言えばいいのだろうか。
ミントは少しずつ、一歩一歩翼に近づいてくる。ゆっくり……ゆっくり……ゆっくり……。
一歩ミントが近づく度に、翼は自らの命が尽きるまでのカウントダウンを、無意識にしてしまっていた。
一歩が一秒と考えて、せいぜい三十歩。年末のカウントダウン……いや、永眠へのカウントダウンは、無情にも刻々と、そして淡々と進んでくる。
翼は駄目元で指を動かそうとする。
すると、ピクリ――と動いたが、所詮その程度だった。
とても攻撃、反撃できるほどではない。
翼はゆっくりと目をつぶる。自分が傷つけられる姿を、下手に見たくない。
ましてや、それが惨殺されるシ―ンならなおさらだ。
「Existence.――」
ああ、とうとう幻聴まで聞こえてきた………。死は確定かなぁ………。
目をつぶって、翼はそう思った。
だが、次の瞬間――
《――ッ!ミントッ!!下がってッ!!》
不意に、トマホ―クの荒げている声が翼に聞こえた。
そしてその後、地面が唸り始めると地面が爆発し、何かが噴出するような音が聞こえた。
翼はゆっくりと目を開ける。そして、翼が見た光景は、良い意味で裏切られたような光景だった。
まず翼が見たものは鋭く尖った岩が、地面から隆起しているもの。これと同じものを昔、翼は見たことがあった。間違いなかった。
それは、地系初級西洋魔術である『Rock spear』によるものだ。
そして、紙一重でかわしたのか、岩の近くにはクレイモアを構えたミントが翼……ではなく、その逆方向、つまり翼に背を向けた状態になっている。
翼はミントが見ている方向を見据える。まだ身体は十分に動かないが、首を動かすくらいまでには回復していた。
そこには漆黒の髪の少女が一人、ミントをじっと睨みつけていた。
その漆黒の髪の少女は、翼の使い魔であるプリムラその人だ。
「……私の邪魔をするんだね」
ミントの問いに、プリムラはこくりと首を縦に振る。
そして、こう言う。
「……わたしに名前をつけてくれた恩人を……マスタ―を、これ以上傷つけさせない」
それはまるで、「自分は引く気はありません」とばかりだった。 |