MAGIC8-2〜三度目の対面〜
翼は外に出て殺気がした方角へと駆ける。
本来、人間と言う生き物はそんな『殺気』がしたほうこうには極力近寄りたくないのだが、翼はむしろそんなところに首を突っ込みやすい性格である。
正義感が強い……とでもいいのだろうか。自分に全く関係ない事でも何かまずいことが起きると少しでもわかるようならその現場まで翼は直行する。おせっかいかもしれないが、翼自身それでもかまわないと思ってる。
だが、今回のはそれとは少し違う。
確実に他人関係ではなく、自分関係であることが翼にはわかっていた。なので、真っ先に凛子の家から飛び出したのだ。
自分に関係のあることで、他人を捲き込むのを防ぐために。
* * *
その場所は工事現場だった。これから住宅地になろうとしているところ。
場所は凛子の家から学校まで行き、さらにそこから東に進んだところである。
住宅地から離れ、周りは殺伐とした荒野。戦うにしても一般人には被害がまず出ないと考えられるので、戦いやすいと言えば戦いやすい。
ただ、周りにはショベルカ―や大型トラック、さらに家を建てるために必要になるのであろう木材等があるので、やっぱりというべきか被害は出る。
「へぇ〜。アンタから出向いてくれるとはねぇ」
「……白々しいよ。僕のいる場所の近くまでわざわざ来て、殺気を飛ばして来させた人が、そんな言葉を言う資格はないよ」
朱色の髪、そしてその髪と同じ瞳の色をしている軽装の女性に皮肉の一つを言ってやる翼。
その女性は、翼の前に二度現れ、そして今回で三度目になる人物である、トマホ―クだ。
さらに、もう一人の少女も当たり前のようにいた。
白金色の髪をツインテ―ルにしている少女、ミントである。ミントはショベルカ―の背後から自分の得物を持って翼と対峙する位置までやってくる。
「……あなた、『ソ―サリ―・クリスタル』を持っているよね」
尋ねるのではなく、すでに断定しきったような言い方をするミント。
「たしかにもってるけど。ついさっき手に入れたばっかりのをね」
「……それなら、その『ソ―サリ―・クリスタル』をおとなしく渡して。そうしたら今日のところはあなたを無傷で帰してあげる」
そう言うとミントはトマホ―クに視線をやる。
するとトマホ―クは右手を額に当て、魔法陣を出現させる。西洋魔術の中でも古い部類である『古西洋魔術』を使うつもりのようである。
それに気づいて、翼はそれを止めようとするが、ミントが前にトマホ―クの盾になるように現れるのでそれを防ぐことができない翼。
「Limite juntando Spatial」
トマホ―クが魔法陣を発動させてからそう言うと、辺りの空気が一瞬変わったような錯覚に翼は陥る。
まるでこの場所だけ隔離されたような感覚を翼は感じる。――空間結界だ。
どうやらさっきミントがトマホ―クと目を合わせたのはこれをするためだったようだ。
アイコンタクト以上に厄介なものはないとばかり、翼はこのとき思ってしまう。
いや、翼自身もプリムラや緋睡やたまに天真とアイコンタクトで互いに指示するのだが、天真は謎の旅の最中、プリムラと緋睡は凛子の家においてきたままだ。
その中でも緋睡は、今ここにいても戦力にならないと考えるべきだろう。ル―クに操られ、ただでさえ疲労が溜まっている筈なのだから。
「さて、これで邪魔者は滅多に来なくなったわよ。ミント」
「――さぁ、渡してもらうよ。『ソ―サリ―・クリスタル』を」
渡せとばかりにミントは翼に手を差し伸べるようにする。その手のひらに『ソ―サリ―・クリスタル』を置けとばかりに、ミントは口では言わないが目で翼に言う。
「断る」
翼のその返答を聞き、ミントはやや眉をわずかに動かす。それは言うまでもないほどの、「不快だ」と語ったように。口ではミントは言わなかったが翼にはすぐにわかった。
「あっそぉ。――死にたいの?アンタ」
「死にたくないよ。まだね」
「なら渡しなさいよ、アンタ。今ならさっきの発言は聞かなかったことにしたげるからさ」
「断るよ」
今度は間をおかず、はっきりとトマホ―ク、ならびにミントに翼は言ってやる。
こう翼が言った以上、自分の意見をそうそう曲げることはしないだろう。
「あなたたちがどういう了見で『ソ―サリ―・クリスタル』を集めているかはわからないけど、あなたたちに目的があるように僕にも――」
ここでふと翼は言葉が詰まる。
そういえば、自分はどうして『ソ―サリー・クリスタル』を集めているのだろう、と。
今まで当たり前のように集めてきた。けど、それは何のために?両親が集めろと言ったから自分は集めている?ただそれだけのため?
「『僕にも……』なんだい?」
そんなことを考えているとき、トマホ―クが翼に問いかける。
「僕にも……目的があるんだ」
だが、その目的が翼自身わかってなかった。それでも、きっと自分が無意識のうちに目的を見出し、それで探しているのであろう、と翼はひとまずそれで納得させることにする。
「……トマホ―ク」
「ん、わかったわ」
するとミントは手に持っていた得物を手に握ったまま消す。おそらく召喚法で召喚されたものだったのだろう。召喚法で出された武器などはすべて自由に出現、消滅可能だからだ。
さらにその後トマホ―クはミントの傍まで近寄り、そして自分の身体を武器に変換させ、それを新たな得物としてミントが構える。
どうやら、今回ミントはトマホ―クを武器として扱うようだ。
トマホ―クという名前通り、武器の形状は斧だ。だが、とても『トマホ―ク』といえる斧ではない。
『トマホ―ク』というものは、小型の斧のことを言うのだが、ミントの持っている斧はおせじにも小型ではなかった。
『トマホ―ク』というよりは、むしろ『バトルアックス』と呼ばれるものに近い。
斧の柄の部分から刃になっている部分までの全長が150センチほどもあり、ミントの身長とほぼ同じくらいの大きさ。さらに詳しく言うと、柄の部分は鋼の類で出来ていると思わせるような金属特有の光沢があり、柄だけでも1メ―トルほどある。
そして、残る50センチはミスリル合金でできたような美しい光沢を放っている斧の刃部分である。
とても女性が扱う武器ではない。
「トマホ―クッ、やるよ」
《了解ッ――Mudana da armaッ!!》
斧から聞こえるトマホ―クの声。
すると、再びトマホ―クの形状が変化していき、やがて今度は巨大な剣になった。
剣の種類はクレイモアと呼ばれるものであろう。剣先方向に傾斜したつばについた3個ほどの輪飾りがついており、全長はさきほどのバトルアックスのときと大差変わっていない。
だが、剣の大きさは翼よりも大きくかなりの威圧感が翼を襲う。だけど、今更引けるわけでもない。そう悟って翼は己の剣を構える。
かくして翼とミント、三度目の戦いが始まる。 |